「一つの声を持ちながら朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か」というスフィンクスの謎があり、これが解けない者を食い殺していたという。
十年ほど前から朝通勤の途上で、時々婆さん達の散歩とすれ違う。「おはようございます」と挨拶を交わすのだが、五年ほど前から三人になり、この数ヶ月前から二人になってしまった。寝たきりになったか亡くなくなったかだろうと思う。勿論、仲違いもありうるが、いつも楽しそうにおしゃべりをしながら歩いておられたので、まあそういうことはないだろう。
この謎は難しくなさそうだが、残る二人も、最近は杖を使うようになっている。二人だけど七本足で歩いている。四重奏が三重奏に成り遂には二重奏になったのだが、足の数は十本から八本、そして七本になっているわけで、スフィンクスにも容易に解けないだろう。