作雨作晴


日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

蝉の声

2007年07月24日 | 日記・紀行

早々と訪れた台風4号は去り、祇園祭も天神祭も終わって、今日は久しぶりに青空が広く見える。今朝はじめて蝉の声を聴く。三十分ほどにも満たない鳴き声で終わってしまったけれど、日差しにも夏の到来を実感する。今日明日にも梅雨明け宣言があるのだろう。

新潟沖地震などの現象は、ふだんには隠れていて私たちには見えていない本質を明るみに出す。その一つに日本の原子力発電の脆弱性の問題があった。改善されてきているとはいえ、その隠蔽的体質もまだ完全には克服できてはいないようである。もちろん、企業秘密や軍事科学の必要から、すべてを公開にはできないとしても、やはり公共的に必要とされる情報はもっと迅速に伝達されてよいと思う。自力消防についても弱点が明らかになった。「失敗は成功のもと」でもある。安全審査を国外の国際原子力機関(IAEA)頼みというのも情けない。経済産業省原子力安全・保安院がしっかり機能を果たすように行政のトップ(安部晋三首相および甘利 明経産大臣)はきちんと指示を出し、東京電力の経営者も自浄能力を本当に確立してほしい。 

また、私たちも「風評」に流され惑わされることなく、情報の正確な取捨選択よる一人ひとりの主体的な判断能力を培いたいものである。今回のように柏崎地方の温泉旅館に、何千件ものキャンセルがいっせいに発生するのは、パニックに近い過剰反応ではないだろうか。日本人のブランド志向などの裏返しでもあり、学校教育の欠陥、失敗事例の一つとして記録しておいてもよいかも知れない。

また、この地震のためにトヨタやホンダなどの日本のほとんどの自動車会社が、車を製造できず生産ラインを止めざるをえなくなったという。新潟、柏崎にあるリケンの自動車部品工場が地震被害にあったためである。もし地震がなければ、「地方」の一工場が、これほど自動車製造に影響力を持っていることにほとんどの人が気づかなかったのではないだろうか。

恥ずかしながら私も、このリケンというピストンリング製造会社が、理化学研究所と浅からぬ因縁のあることも、日経新聞のコラム「春秋」ではじめて知った。理化学研究所が、がん研究や遺伝子解析などの先端的研究で日本の産業に少なからぬ貢献をしていることは知っていたが、今回のリケンの柏崎工場の設立の由来を知って、あらためて先人の功績の大きさとその恩恵を思い知らされた。

今、「格差」「格差」と日本全国大合唱の感がある。しかし、この叫びの裏にある、国民の「ルサンチマン」については自戒を要する問題だと思う。

    いわゆる格差問題

そして、日本の「地方の疲弊」や「シャッター商店街」などが、小沢民主党や社民党の「格差是正」の選挙用スローガンとして叫ばれることも多い。

この「地域格差」や「所得格差」「雇用格差」などはもちろん放置されていてよい問題ではないけれそも、その対策法については熟慮を要する。いわゆる族議員や「官僚」の利権温存のための国民借金の莫大な赤字国債に頼る「格差是正」策がなんらの効果を生まないことは、自民党の旧経世会、小渕・橋本前首相などの自民党政治の地方交付金や農村整備事業補助金による失政で明らかになっている。小沢民主党が同じ轍を踏まないことを願いたいものである。

それよりも、地方の本当の自力復興の方策については、このリケンという先端的自動車部品メーカーが、その最適典型事例を示しているのではないだろうか。このリケンのように半導体や医療や遺伝子やその他に限らず、最先端を行く高度科学技術を活用できる工場や研究所が、新潟の柏崎のような全国の「地方」に無数に建設されてゆくことによって、自主自力による本当の「地方再生」が実現されてゆくのではないだろうか。

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