用事を済ませて帰宅すると、玄関の軒下に足元で何かばたばたしているのに気がついた。よく見ると、すずめの雛だった、仰向きになってひっくり返ったまま、脚と羽をばたばたさせているばかりで、自分で身返りすることさえできないでいる。一昨日以来の梅雨明けらしい天気で、強い西陽が直接、雛の身体に照りつけている。このままでは熱にやられるなと思った。
静かに掴んで、体をひっくり返してやると、ばたばた羽を動かして逃げようとするのだけれど、大して飛ぶこともできず、家の壁の隅にうずくまったままになっている。
そういえば、この間も帰宅すると、子猫がバイクのシートの上にちょこんと座っていた。痩せさらばえて、灰色がかった毛も抜け落ちかねないみすぼらしさだった。そのときは、とりあえず油揚げを一欠けら与えてやると、貪るように食っていたが、家の中に入ってからふたたび覗いて見ると、その子猫は姿を消していた。それ以来見ていない。
先日の梅雨の長雨もようやく明けたようで、暑い真夏の太陽が空に昇るようになった。すずめの雛や子猫が独りで生きてゆくには、こんな季節は過酷な季節だ。とりあえず、小さな皿に水を入れて、その雛を掴んでその中に放り込んでやったが、ばたばたしてすぐに飛び出してしまう。とにかく、植え込みの影に皿と雛を並べて家の中に入ったが、生き延びられるかどうか。まだ自力でも飛べないような雛は、親の餌やりがなければ生きるのも難しいのではないかと思う。
このもっとも生命力に満ち満ちた真夏を迎えようとするとき、今日もまた、この地球上ではいたるところで、あたかも巨大な浪費でもするように生命が失われてゆくのだろう。しかし、生命は循環である。個々のスズメは死んで行くが、類としてのスズメは永遠の命のように繋がってゆく。