TPP賛成派の『TPP参加という決断』を読んだので、反対派『TPP亡国論』の意見に対してどのような反論をしているのか見てみる。
(TPP亡国論)TPPは、原則関税をゼロにすることだが、それ以前に日本の関税は世界的に見てもずっと低い。アメリカや韓国より低い。このため、TPP参加を平成の開国とするのはおかしい。
(TPP参加という決断)TPPへの参加について、メディアで言っているような平成の開国というような言い方は本書ではしていない。その点については、歴史を過度に意識している『TPP亡国論』より現実的だと思う。ただし、農業以外の日本の関税率が世界的に見ても低いレベルであることについてはほとんど触れていない。
(TPP亡国論)TPPの参加国は、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、そしてアメリカ。このうち、日本とアメリカを除く国々のGDPは、TPP参加国全体のGDPの10%にも満たない。また、日本とアメリカ以外の国々は皆、外需依存度が日本より高く、これらへの国への日本からの輸出増は見込めない。このため、TPPによって日本の輸出が増えるとすれば、それはほとんど対アメリカである。
(TPP参加という決断)本書は、アメリカ以外の国への輸出も伸びるはずなので日本の企業にとってTPPは欠かせないという意見。『TPP亡国論』の方が外需依存度など説明が具体的で説得力がある。
(TPP亡国論)アメリカは、失業率の悪化と深刻な不況から、輸出を二倍にする計画を発表し、また輸入を抑える事を公言している。この計画の一環として、円高ドル安への流れや、TPPへの日本誘致がある。
(TPP参加という決断)アメリカが輸出を二倍にする計画や、TPPがその計画の一環であることを認識しながらも、日本のアメリカへの輸出も同時に伸びるはずなので大丈夫という楽観的な見方。円高にはあまり触れず、バイ・アメリカ政策については交渉でなんとかするという意見。これも、楽観的に思える。
(TPP亡国論)アメリカからの輸入品は、小麦や牛肉、とうもろこし(飼料)などで、アメリカ国内での生産余剰分が日本へ輸入される。このため、過去に何度かあった食料危機の場合では、アメリカ国内の需要を優先させ、日本への禁輸や高額な輸出となり、日本の戦略的立場は弱い。
(TPP参加という決断)TPP交渉の中で、日本は禁輸の禁止を訴えていくべきとの意見。ただし、それはかなり難しいと認めている。個人的にも、食糧危機になった場合に自国を優先して輸出を制限するのは国として当然なことだと思う。やはり、一定の食料自給率(特に穀物類)は日本にとっても必要だと思う。
(TPP亡国論)日本からアメリカへの輸出品は、車などの贅沢品が多く、またアメリカ国内でも生産できるものが多い。このため、日本とアメリカとの間に戦略的互恵関係が成り立っていない。
(TPP参加という決断)TPPにより日本もアメリカも輸出入が増えてハッピーだという意見。日本とアメリカの輸入しているものの違いについての言及はなし。当然、戦略的互恵関係についても言及なし。食糧危機による禁輸の禁止を交渉すべきとの意見も、このあたりの議論の欠落にあるように思う。
(TPP亡国論)日本は長期のデフレ状態にあり、不況を脱するためにはこれを緩やかなインフレにする事が最優先である。そのためには、公共事業などで内需を増やすことが必要だが、関税を撤廃する自由貿易はデフレをさらに加速させる力を持つため、さらに不況となる。
(TPP参加という決断)TPPにより、安価な輸入製品が大量に入ってきても、安いものを買った分だけ消費者の財布に余裕ができ、その分他のものを買えるのでデフレにはならないという意見。真っ向から『TPP亡国論』と対立するが、ちょっとこの意見は無理があるように思う。『TPP亡国論』の言うように、安い製品や農産物が大量に出回る → 国内の企業や農家もそれに対抗するために安くせざるを得ない → その分人件費が削られる → 所得が減る → 消費者はより安いものを志向する → さらなるデフレ&景気悪化。
(TPP亡国論)TPPへの参加で、例え一部の輸出企業の収益が上がっても、グローバル企業の利益は国民の利益に結びつかないため、日本の景気回復の手助けにならない。
(TPP参加という決断)輸出が伸びれば景気がよくなるという意見。グローバル企業の仕組みや、どう国の利益につながるかの言及はない。
(TPP亡国論)日本のGDPに占める輸出の割合は30%程度と低く、世界的に見ても内需立国である。日本の景気を回復させるには、とにかく内需を拡大させる政策が必要で、TPP参加はその逆を行く政策である。
(TPP参加という決断)日本が世界的に見ても内需立国であることへの言及はなし。とにかくTPPにより輸入が増えるはずなので、それが景気を押し上げるとの意見。内需の拡大が景気回復につながることへの議論も殆どない。
<まとめ>
『TPP参加という決断』は、概して楽観的であるという印象が強い。
構成としては、TPPの(かなり詳細な)各項目について説明をしたのち、もし日本がTPPに参加しなければこれら交渉に参加することもできず、日本にとって不利な枠組みができてしまう可能性がある、との結論で終わる。この繰り返し。
ただ、気を付けたいのは、その項目自身がTPPの交渉のテーブルに載せられるかどうかはまだわからず、載せられたとしてもアメリカや他の国との交渉で日本に有利な結論へ持っていけるかはわからないのである。
そもそも『TPP亡国論』でも指摘されているように、TPPはあくまでも経済の自由化について議論する場であり、『TPP参加という決断』が期待しているような経済自由化を超えた内容や政治的な事柄を議論すべき場ではない。
それを後から交渉に参加した日本が提案したとしても、どれだけの主導権をもって進められるか疑問だ。
さらに、『TPP参加という決断』では日本が交渉に成功した場合の日本の利益ばかりを説いているが、交渉に失敗した場合の日本の不利益については殆ど触れていない。逆に『TPP亡国論』では、日本に不利な交渉結果になった場合を強調しているので、この点はそれぞれ賛成、反対の立場上仕方のないことかもしれないが。しかし、単純に成功した場合を語られるより、失敗した場合にどうなるかをきちんと想定しておくのは大切なことだと思う。「想定外」はできる限り防がなくては。
どうも、最初に読んだ『TPP亡国論』への支持が多くなってしまうのだが、その一因は別の記事でも書いたように、まっさらな状態からTPPというものを反対派の視点から学んだために、TPPの基礎それ自体が反対をベースに作られ、賛成派の意見の一つ一つに反論できてしまうことにある。
しかし、それにしても、『TPP参加という決断』の意見はあまりに楽観的に思える。
例えば、「安い農産物が輸入されても、日本の高品質な作物は世界的に評価が高く輸出できる。だから日本の農業は生き残れる。」という『TPP参加という決断』の意見。
それに対して、『TPP亡国論』の意見はこうだ。
確かに、一部の高品質な農作物は輸出できるだろう。でも、それは日本の農産物のほんのごく一部で、そんな贅沢品をアメリカや中国が今の日本人が消費しているぐらいの量を輸入してくれるとは思えない。どう考えても、安価な農産物の流入で日本の農業は危機に立たされるのは避けられない。その結果食料自給率は低下し、これから必ず訪れるだろう食糧危機に対して日本の立場は非常に弱いものになる。
なんだか、こちらの意見の方が至極まっとうな意見に思える。
これまでのところから、現段階では僕はTPPへの日本の参加は反対、もしくは慎重にすべき、と思う。
ただ、この意見に至ったのは単に『TPP参加という決断』が悪かったせいだけなのかもしれない。
もしくは、僕の理解力が不足していて、『TPP参加という決断』を読み解ききれなかったのかもしれない。
いずれにせよ、一冊や二冊で意見を固めてしまうのは危険なので、これからもTPPに関する本や記事にはアンテナを張っていこうと思う。
(TPP亡国論)TPPは、原則関税をゼロにすることだが、それ以前に日本の関税は世界的に見てもずっと低い。アメリカや韓国より低い。このため、TPP参加を平成の開国とするのはおかしい。
(TPP参加という決断)TPPへの参加について、メディアで言っているような平成の開国というような言い方は本書ではしていない。その点については、歴史を過度に意識している『TPP亡国論』より現実的だと思う。ただし、農業以外の日本の関税率が世界的に見ても低いレベルであることについてはほとんど触れていない。
(TPP亡国論)TPPの参加国は、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、そしてアメリカ。このうち、日本とアメリカを除く国々のGDPは、TPP参加国全体のGDPの10%にも満たない。また、日本とアメリカ以外の国々は皆、外需依存度が日本より高く、これらへの国への日本からの輸出増は見込めない。このため、TPPによって日本の輸出が増えるとすれば、それはほとんど対アメリカである。
(TPP参加という決断)本書は、アメリカ以外の国への輸出も伸びるはずなので日本の企業にとってTPPは欠かせないという意見。『TPP亡国論』の方が外需依存度など説明が具体的で説得力がある。
(TPP亡国論)アメリカは、失業率の悪化と深刻な不況から、輸出を二倍にする計画を発表し、また輸入を抑える事を公言している。この計画の一環として、円高ドル安への流れや、TPPへの日本誘致がある。
(TPP参加という決断)アメリカが輸出を二倍にする計画や、TPPがその計画の一環であることを認識しながらも、日本のアメリカへの輸出も同時に伸びるはずなので大丈夫という楽観的な見方。円高にはあまり触れず、バイ・アメリカ政策については交渉でなんとかするという意見。これも、楽観的に思える。
(TPP亡国論)アメリカからの輸入品は、小麦や牛肉、とうもろこし(飼料)などで、アメリカ国内での生産余剰分が日本へ輸入される。このため、過去に何度かあった食料危機の場合では、アメリカ国内の需要を優先させ、日本への禁輸や高額な輸出となり、日本の戦略的立場は弱い。
(TPP参加という決断)TPP交渉の中で、日本は禁輸の禁止を訴えていくべきとの意見。ただし、それはかなり難しいと認めている。個人的にも、食糧危機になった場合に自国を優先して輸出を制限するのは国として当然なことだと思う。やはり、一定の食料自給率(特に穀物類)は日本にとっても必要だと思う。
(TPP亡国論)日本からアメリカへの輸出品は、車などの贅沢品が多く、またアメリカ国内でも生産できるものが多い。このため、日本とアメリカとの間に戦略的互恵関係が成り立っていない。
(TPP参加という決断)TPPにより日本もアメリカも輸出入が増えてハッピーだという意見。日本とアメリカの輸入しているものの違いについての言及はなし。当然、戦略的互恵関係についても言及なし。食糧危機による禁輸の禁止を交渉すべきとの意見も、このあたりの議論の欠落にあるように思う。
(TPP亡国論)日本は長期のデフレ状態にあり、不況を脱するためにはこれを緩やかなインフレにする事が最優先である。そのためには、公共事業などで内需を増やすことが必要だが、関税を撤廃する自由貿易はデフレをさらに加速させる力を持つため、さらに不況となる。
(TPP参加という決断)TPPにより、安価な輸入製品が大量に入ってきても、安いものを買った分だけ消費者の財布に余裕ができ、その分他のものを買えるのでデフレにはならないという意見。真っ向から『TPP亡国論』と対立するが、ちょっとこの意見は無理があるように思う。『TPP亡国論』の言うように、安い製品や農産物が大量に出回る → 国内の企業や農家もそれに対抗するために安くせざるを得ない → その分人件費が削られる → 所得が減る → 消費者はより安いものを志向する → さらなるデフレ&景気悪化。
(TPP亡国論)TPPへの参加で、例え一部の輸出企業の収益が上がっても、グローバル企業の利益は国民の利益に結びつかないため、日本の景気回復の手助けにならない。
(TPP参加という決断)輸出が伸びれば景気がよくなるという意見。グローバル企業の仕組みや、どう国の利益につながるかの言及はない。
(TPP亡国論)日本のGDPに占める輸出の割合は30%程度と低く、世界的に見ても内需立国である。日本の景気を回復させるには、とにかく内需を拡大させる政策が必要で、TPP参加はその逆を行く政策である。
(TPP参加という決断)日本が世界的に見ても内需立国であることへの言及はなし。とにかくTPPにより輸入が増えるはずなので、それが景気を押し上げるとの意見。内需の拡大が景気回復につながることへの議論も殆どない。
<まとめ>
『TPP参加という決断』は、概して楽観的であるという印象が強い。
構成としては、TPPの(かなり詳細な)各項目について説明をしたのち、もし日本がTPPに参加しなければこれら交渉に参加することもできず、日本にとって不利な枠組みができてしまう可能性がある、との結論で終わる。この繰り返し。
ただ、気を付けたいのは、その項目自身がTPPの交渉のテーブルに載せられるかどうかはまだわからず、載せられたとしてもアメリカや他の国との交渉で日本に有利な結論へ持っていけるかはわからないのである。
そもそも『TPP亡国論』でも指摘されているように、TPPはあくまでも経済の自由化について議論する場であり、『TPP参加という決断』が期待しているような経済自由化を超えた内容や政治的な事柄を議論すべき場ではない。
それを後から交渉に参加した日本が提案したとしても、どれだけの主導権をもって進められるか疑問だ。
さらに、『TPP参加という決断』では日本が交渉に成功した場合の日本の利益ばかりを説いているが、交渉に失敗した場合の日本の不利益については殆ど触れていない。逆に『TPP亡国論』では、日本に不利な交渉結果になった場合を強調しているので、この点はそれぞれ賛成、反対の立場上仕方のないことかもしれないが。しかし、単純に成功した場合を語られるより、失敗した場合にどうなるかをきちんと想定しておくのは大切なことだと思う。「想定外」はできる限り防がなくては。
どうも、最初に読んだ『TPP亡国論』への支持が多くなってしまうのだが、その一因は別の記事でも書いたように、まっさらな状態からTPPというものを反対派の視点から学んだために、TPPの基礎それ自体が反対をベースに作られ、賛成派の意見の一つ一つに反論できてしまうことにある。
しかし、それにしても、『TPP参加という決断』の意見はあまりに楽観的に思える。
例えば、「安い農産物が輸入されても、日本の高品質な作物は世界的に評価が高く輸出できる。だから日本の農業は生き残れる。」という『TPP参加という決断』の意見。
それに対して、『TPP亡国論』の意見はこうだ。
確かに、一部の高品質な農作物は輸出できるだろう。でも、それは日本の農産物のほんのごく一部で、そんな贅沢品をアメリカや中国が今の日本人が消費しているぐらいの量を輸入してくれるとは思えない。どう考えても、安価な農産物の流入で日本の農業は危機に立たされるのは避けられない。その結果食料自給率は低下し、これから必ず訪れるだろう食糧危機に対して日本の立場は非常に弱いものになる。
なんだか、こちらの意見の方が至極まっとうな意見に思える。
これまでのところから、現段階では僕はTPPへの日本の参加は反対、もしくは慎重にすべき、と思う。
ただ、この意見に至ったのは単に『TPP参加という決断』が悪かったせいだけなのかもしれない。
もしくは、僕の理解力が不足していて、『TPP参加という決断』を読み解ききれなかったのかもしれない。
いずれにせよ、一冊や二冊で意見を固めてしまうのは危険なので、これからもTPPに関する本や記事にはアンテナを張っていこうと思う。