江戸時代に京都で活躍した絵師、伊藤若冲の晩年の作品で、おととし(2023年)新たに見つかった絵巻にどのような顔料が使われていたかを調べようと、奈良市で最新の装置を使った科学調査が行われました。
調査が行われたのは江戸時代中期に京都で活躍した絵師、伊藤若冲の晩年の作品で、おととし新たに見つかった「果蔬図巻(かそずかん)」と呼ばれる長さおよそ3メートルの絵巻で、幅およそ30センチの絹の布地に、50種類余りの野菜や果物が色鮮やかに描かれています。
この絵にどのような顔料が使われたのかを調べようと、4日、奈良市の奈良文化財研究所で、作品に触れずに顔料の成分を調べることができる「蛍光エックス線分析」という手法による調査が行われました。
装置の台の上に置いた絵巻をスキャンするようにエックス線を照射し、成分ごとに異なる反応の違いをパソコンの画面で可視化し、それぞれの図柄のどの部分に▼「緑青」や▼「水銀朱」といった顔料が使われているかなどを調べました。
若冲が使った顔料の科学調査は、他の作品ですでに行われていますが、いずれも主要なポイントでの分析にとどまっていて、今回、最新の装置を使うことで作品全体をまんべんなく調べることができるということです。
調査を行った奈良文化財研究所の村上隆 客員研究員は「同じ色に見えるようなものでも図柄によって絵の具を使い分けていることなど、絵巻そのものを総合的にふかん的に見ることで、これまでとは違う情報が得られるのではないか」と話しています。
絵巻を所有していて今回の調査を依頼した京都の福田美術館では、今年中をめどに調査結果を公表したいとしています。