世の人々は、とかく先に先にとものごとを知りたがります。
知ったところで何がどうなるものでもないことを、先に知りたがるようです。
「早く」よりも「先に」に価値を求めるものらしいのです。
「先に」は誰よりも「早く」ということで同じことのようではありますが、ほかの誰よりも、というところがだいじらしいのです。
周知のことを知らずにいると、羞恥心がはたらきますが、逆に周知以前に知っていると得意恬然を装いながら鼻の穴が広がります。
選挙の当落、内閣の顔ぶれなど、先に知っても仕方のなさそうなことがニュースのメインテーマになるのも、「先に」党が多数を占めているからでしょう。
いま、公開される映画には、ほぼ100%ウェブページができているといわれます。
ほとんどが Flash Player などの動画技術を使って、楽しくアピールされるようになっているそうです。
そうして、映画の中身を先に知ってしまうことが、映画館に出かけて行くきっかけになるものなのでしょうか。
どうもよくわかりません。
一足お先に | |
夢野 久作 | |