冴えないコンビニ店員と飲んだくれの巨乳女とグータラ警官が織りなす“ダメ人間のタペストリー”みたいなシャシンだが、観賞後の気分は決して悪くない。それどころかサワヤカな感動さえ覚えてしまった(笑)。
何より、主人公達が自らのダメぶりを完全に自覚し、それから逃げるどころか敢然と対峙して受け入れている点が素晴らしい。先日読んだ「八月の路上に捨てる」(芥川賞受賞作)とかいうくだらない小説の登場人物が自分のダメさ加減に対してウダウダと言い訳ばかりしているのとは好対照だ。
古泉智浩の同名コミックを映画化したのは熊切和嘉監督だが、以前撮った「空の穴」と同じく、真にダメな奴にとって小賢しい言い訳とかカッコつけとか、そんなのはまるで縁のない話だと見切っているのが天晴れである。同時に、ダメな連中に対しての御為ごかしの同情やら共感やらはクソの役にも立たないことも見抜いている。それでも作者が執拗にダメ人間を描き続けるのは、ダメな奴にもそれなりの愛嬌があるから・・・・では断じてなく(爆)、作者自身が自らのダメぶりをしっかり見据えることを映画人生の出発点としているからではないかと思う。こういう開き直ったスタンスを持つカツドウ屋は打たれ強い。熊切監督の今後にも期待したい。
元甲子園出場高校の野球部に在籍していたことを唯一の拠り所として日々を送る能なしコンビニ店員に扮する竹原ピストルの、痛々しいほどのリアル演技は哀れを通り越して笑ってしまうし、元甲子園出場高校のエースになった時点で“人生が終わって”しまった不良警官を演ずる安藤政信もヤケクソの熱演。さらにすごいのは酒乱の巨乳女役の坂井真紀で、常軌を逸した無茶苦茶なキャラクターに完全に成り切っており、しかも下品にならないというのがポイント高い。役柄を広げる怪演だ。
個人的には“ベーブ・ルースの息子”役で登場する若松孝二に爆笑。そういえば彼もダメ人間の扱い方が上手い監督だった。