しんぐうシネマサミット2006出品作品。このイベントは福岡県新宮町で行われる“地方発の映画”だけを集めた映画祭で、今年で3回目になる。この映画は劇場公開済みだが、私は見逃していたのでちょうどいいと思って観た次第だ。
漫才師の島田洋七の自伝的原作の映画化で、佐賀の母方の実家に預けられた主人公と祖母との触れ合いを描く。個人的には不満な出来だ。
実を言えば私は小学生の頃に佐賀に住んだことがある。一番印象に残っているのはどこまでも広がる田んぼだ。そして田園地帯に縦横に張り巡らせたクリークでフナ等を獲って遊んだものだ(注:郡部ではない、佐賀市内である ^^;)。だが、この映画にはそんなイメージは全くない。妙に小綺麗なのだ。
ラストのクレジットを見ると、撮影場所のひとつに赤松校区があげられているが、そのあたりは市内でも“山の手”の部類に入る。これでは主人公が前に住んでいた広島とあまり変わらず、見ようによっては“なんとかレトロ地区”といった観光名所みたいだ。あと、武雄や柳川でもロケされているらしいが、何か違う気がする。広い田園地帯を引きのショットで捉えれば、佐賀の佐賀たる特徴が強調され、広島との対比が作劇にメリハリを付けたと思うのだが、作者はそこまで考えが及ばなかったらしい。単に“田舎だったらどこでもいい”という安易な姿勢で臨んだと思われる。
倉内均の演出は平板だが、吉行和子や工藤夕貴、山本太郎や緒方拳といった芸達者を揃えたキャスティング、そしてセリフの面白さで退屈はさせない。特に“悲しい話は夜するな。どんなにつらい話も昼したら、大したことない”というばあちゃんの言葉は思わず“なるほど!”と膝を叩いてしまった。
映画の質としては凡庸だが、イヤミはなく、普段あまり映画を観ない多くの層にはピッタリのシャシンだと思われる。事実、広いホールは近所の人たち(たぶん)で満杯だった。