元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダスト」

2006-11-28 06:49:16 | 映画の感想(た行)
 (原題:DUST TO DUST, ASH TO ASH)2001年作品。ヴェネツィア映画祭で大賞を受賞したミルチョン・マンチェフスキー監督のデビュー作「ビフォア・ザ・レイン」はその清涼な映像美と幻惑的なストーリー構成に圧倒されたが、7年ぶりの監督第2作目であるこの映画は、比較的メジャーなキャスト(ジョセフ・ファインズ、アンヌ・ブロシェ等)と時空を越えたドラマという点でスケールアップはしているものの、どこか釈然としない出来だ。

 理由はたぶん、主にマケドニアに舞台が限定され、それだけ“民族の悲劇”というテーマにアプローチしやすかった前作に対し、物語の起点と帰着点をヨソの土地(アメリカ)に置いたためだろう。おかげでドラマの焦点が拡散してしまった。西部劇仕立てであることにも違和感を覚え、単に活劇のネタとしてマケドニアを取り上げただけと言われても仕方がない。小手先の映像ギミックに頼っている点も前作からの“後退”を感じさせる。

 しかし、アクション場面は迫力がある。リアルで激しい銃撃戦はサム・ペキンパーというよりマカロニ・ウエスタンに近く、あざといまでに陰惨な描写に久々に血が騒ぐ思い(笑)。この監督がもしハリウッドに進出するとしたら、“詩的な映像作家”ではなく“アクション派の旗手”みたいな取り上げ方をされるのではないだろうか。
コメント
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