元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ワンダーランド あなたに逢いたくて」

2024-11-25 06:30:22 | 映画の感想(わ行)
 (英題:WONDERLAND)2024年7月よりNetflixから配信された、近未来を舞台にした韓国作品。どうやら巷の評判はあまりよろしくないようだが、私は気に入った。キャラクター設定と世界観はよく考えられており、少々トリッキィな作劇もエンドマークを迎えてしまえば違和感はあまり無い。存在価値はあるシャシンかと思う。

 映画で描かれた世界は、すでにこの世にいない人たちを仮想空間上で“再生”させ、生前関係の深かった者たちと“交流”することを可能にするサービスが流通していた。そのベンダーの一つである“ワンダーランド”と契約したのは、幼い孫娘に母親の死を隠すために利用する高齢女性、すでに病死した一家の主を仮想世界で生きているように設定する遺族たち、そして昏睡状態になってしまった恋人と電脳空間で話す若いCAなどだ。ところが、この男性が昏睡から生還したことから、当システムの存在価値が問い直されてくる。



 映画は冒頭から“ワンダーランド”の複数の顧客の状況を平行して描くことから、一見まとまりに欠けるように思われる。しかしながら、微妙なところでこれらのエピソードは互いの関連性が確保されている。さらに“ワンダーランド”を提供する若い男女の立ち振る舞いも加わり、物語は重層的な興趣を醸し出してくる。

 また面白いのは、電脳空間内のキャラクターもそれぞれ独自の“意志”を持つようになることだ。それらは自身のアイデンティティーを確立すべく、思い切った行動に出る。そんな仮想キャラクターたちが到達する“現実世界(らしきもの)”と、本当の現実とのギャップの見せ方は、かなり巧みだ。つまりは“この世”も“あの世”も、通底しているのは人間の心情なのだという、分かりやすいモチーフが強調されるのは納得出来る処置である。

 脚本も手掛けたキム・テヨンの演出は、奇を衒っているようでけっこう正攻法だ。中国出身の女優タン・ウェイをはじめ、ペ・スジ、パク・ボゴム、チョン・ユミ、チェ・ウシク,パウ・ヘイチンなど、キャストも全員健闘している。そしてパク・ホンヨルのカメラによる映像が実に清涼だ。

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