猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

バルタザールどこへ行く

2021-04-20 22:18:56 | 日記
1964年のフランス・スウェーデン合作映画「バルタザールどこへ行く」を観に
行った。

小村の教師の娘マリーは農園主の息子ジャックと共に、生まれたばかりのロバに
バルタザールと名前をつけかわいがる。ある日ジャックが引っ越すことになり、
バルタザールもどこかへ行ってしまう。それから10年、鍛冶屋の労役に使われ
ていたバルタザールは苦しさに耐えかねて逃げ出し、成長したマリー(アンヌ・
ヴィアゼムスキー)の元へ向かう。マリーは再会を喜び、またバルタザールに愛
情を注ぐようになるが、マリーに想いを寄せる不良のジェラール(フランソワ・
ラファルジュ)は嫉妬してバルタザールを痛めつける。

昔の映画のリバイバル上映。ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した
ロベール・ブレッソン監督作品。ロベール・ブレッソンという人を私は知らなか
ったが、とても好みの映画だった。ロバの視点から人間の愚かさや悲しさを描い
ている。大人になったマリー(10代後半くらい)は再びバルタザールをかわいが
り、いつも連れ歩くようになるが、マリーを好きな不良のジェラールはマリーと
バルタザールが一心同体であると感じ、嫉妬する。そして実家のパン屋でバルタ
ザールをこき使ったり仲間と共に痛めつけたりする。
ロバがとてもかわいい。優しい目をしている。そしていい演技をするのだ(演技
をしているつもりはないのだろうが)。マリーになついたり、酷使されて逃げた
り、反抗したりと感情がよく伝わってくる。やがてジャック(ヴァルテル・グレ
ェン)が戻ってきて、「子供の頃から好きだった」とマリーに求婚するが、マリ
ーは自分に頻繫に接触してくるジェラールを好きになっており、断ってしまう。
そしてマリーはジェラールに夢中になりバルタザールの世話をしなくなる。こう
してマリーは堕ちていくのだ。真面目なジャックの求婚を受け入れていればいい
のに、チンピラみたいなジェラールに惹かれるなんて。
バルタザールが運命に翻弄されていく様子が悲しい。彼はマリーの側にいる時だ
けが幸せだった。愚かさゆえ不幸になっていくマリーをどういう気持ちで見てい
たのだろう。映画は説明が少ないので少しわかりにくいところもあり、マリーの
父親の訴訟沙汰についてはよく理解できなかった。でもこういう淡々としたモノ
クロームの映画は好きだ。結局誰も幸せになれないし、それはバルタザールも同
じである。そして物語はあっけなく幕を閉じるが、悲しい余韻が心に残る映画だ
った。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする