猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

再会の夏

2021-04-06 22:23:34 | 日記
2018年のフランス・ベルギー合作映画「再会の夏」。

1919年、第1次世界大戦が終わり、平和が訪れたばかりのフランスの田舎町。
猛暑が続く留置所の外で、黒い1匹の犬が昼夜を問わず吠え続けている。その
中では戦争の英雄ジャック・モルラック(二コラ・デュヴォシェル)が国家侮辱
罪で収監され、頑なに黙秘を続けていた。彼を軍法会議にかけるか否かを決め
るため、パリからやって来た軍判事のランティエ少佐(フランソワ・クリュゼ)
は、ジャックの体験した戦争の現実を調べていくうちに、農婦にしてはあまり
に学識豊かなジャックの恋人・ヴァランティーヌ(ソフィー・ヴェルベーク)と
幼い息子の存在が浮かび上がる。

ジャン・ベッケル監督による戦争をテーマにした人間ドラマ。戦争の英雄で武
勲をあげたはずのジャックは留置所に収監され、頑なに黙秘を続けている。真
相を調べるためにやって来た軍判事のランティエ少佐は、留置所の外で吠え続
ける1匹の犬に関心を寄せる。犬はジャックの愛犬だった。何故犬は留置所か
ら離れようとしないのか。忠誠心からなのか。何故ジャックは黙秘を続けるの
か。ランティエ少佐は真実を探り始める。
戦後を舞台にした物語で、もっとミステリーっぽい映画かと思ったら違ってい
た。特に悪人は登場しないし、どちらかと言えば感動系。ジャックは第1次世
界大戦の英雄としてレジオン・ドヌール勲章を授けられたが、その後国家侮辱
罪で収監されてしまう。ジャックが何をしたのかは後半でわかるのだが、そん
なことで国家侮辱罪になるなんて戦争があった時代なのだなあと思った。今だ
ったらそんなに大変なことかな、という感じなのだが。黙秘を続けるジャック
を取り調べるために派遣されてきたランティエ少佐は、ジャックの恋人である
ヴァランティーヌの存在を知る。
戦争で犠牲になるのはいつの時代も若者や女性たちだ。ジャックも英雄扱いさ
れているが少しも誇りに思っていない。「結局上層部は俺たちを犬のように服
従させようとしているだけだ」というジャックのセリフは胸に迫るものがある。
生還できた兵士たちも戦争という体験で深く傷ついているのだ。そんな彼らに
とって勲章はどれほどの価値があるのだろう。脱走兵が銃殺刑になるシーンは
観ていて辛かったが、兵士たちが酒を飲みながら歌を歌うシーンは良かったし、
少しだけ登場してランティエ少佐と会話する若い兵士も純粋さの象徴として描
かれていて、良かった。
ただ、ジャックが黙秘していた理由が結局それ?という拍子抜け感は否めなか
った。彼の誤解というか早とちりが原因だったのに、彼は死刑さえ望んでいた
のだ。ランティエ少佐は振り回されて、お疲れ様という感じ。それにヴァラン
ティーヌが何故学識豊かなのかもよくわからなかった。そこがポイントになっ
ているのかと思ったのだが。彼女は読書家で、それが理由?それだけ?という
感じはする。映画の原題は「Le collier rouge」で「赤い首輪」という意味だ
そうだ。レジオン・ドヌール勲章のリボンは赤いのでそれを指している。原題
を考えると感慨深いものはあるし、ランティエ少佐役のフランソワ・クリュゼ
の演技も良かった。




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