猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

浅草キッド

2022-01-03 22:05:49 | 日記
2021年の日本映画「浅草キッド」。

昭和40年代の浅草。大学を中退し、ストリップ劇場「フランス座」のエレベー
ターボーイをしていたタケシ(柳楽優弥)は、芸人・深見千三郎(大泉洋)のコント
に惚れ込んで弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から芸ご
との真髄を叩き込まれていく。歌手を目指す踊り子・千春(門脇麦)や深見の妻・
麻里(鈴木保奈美)に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及
と共にフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。そんなある日タケシはフ
ランス座の元先輩キヨシ(土屋伸之)に一緒に漫才をやらないかと誘われる。

ビートたけしの自伝を基に劇団ひとりが監督・脚本を手掛けたNetflixオリジナル
映画。たけしの下積み時代から漫才で成功するまでが描かれている。ストリップ
劇場・フランス座でショーの合間にコントをやっている深見千三郎は、多くの人
気芸人を育てながらも自身はテレビにほとんど出演しなかったことから「幻の浅
草芸人」と呼ばれていた(萩本欽一も弟子の1人である)。エレベーターボーイの
タケシは深見のコントに惚れ込んで弟子入りし、コントやタップダンスなどを習
う。
とてもおもしろかった。テレビで人気の芸人の人たちも、下積み時代はあんなに
苦労していたんだなあ、と思う。本当にお笑いが好きじゃないとやれないな。柳
楽優弥と大泉洋のダブル主演だが、この2人の演技がすごい。特に柳楽優弥はビ
ートたけしに顔も体型も全く似ていないので、最初「柳楽くんがたけし役?」と
思ったのだが、たけしの歩き方や特徴ある表情や独特の首の動きなど、完全にコ
ピーしていて、たけしに見えてくるからすごい。圧巻の演技である。柳楽優弥を
たけし役に起用した劇団ひとりの目の付け所も秀逸だと思う。ここまでやれると
思っていたのだろうか。
私はツービートなどの漫才ブームの世代で、「俺たちひょうきん族」などを観て
いたが(若い人は知らないだろうなー)、ツービートの登場は鮮烈だった。それま
での漫才とはまるで違う、「テレビでこんなこと言っちゃっていいの」と思うよ
うな下品で毒舌の漫才だったのだが、とにかく斬新でおもしろかった。あれはビ
ートたけしとビートきよしのキャラクターによるものだったんだろうな、と思う。
彼らの個性だから放送ギリギリのような漫才がウケたのだろう。当時は個性の強
いコンビがテレビ界を席巻していた。
たけしの師匠である深見千三郎は私も顔を知らないのだが、テレビ出演を嫌って
劇場の芸人にこだわった人だったようだ。だから大泉洋の演技が本人に似ている
かどうかはわからないが、その存在感はすごかった。深見は「何だバカ野郎」と
か「この野郎」が口癖で、ついでみたいに語尾に付ける。たけしがよく「バカ野
郎」と言うのは師匠の影響なんだなと思った。そして人気芸人を何人も育てた師
匠なのに、貧しいアパート暮らしをしているのは驚いた。これもテレビを嫌って
劇場に固執したせいなのだろう。深見はフランス座の経営に参画していたが、ツ
ービートの人気ぶりとは対照的に次第に追い込まれていく。
いいシーンがいくつもあった。たけしが深見に「フランス座をやめて漫才をやり
ます」と言うシーンは特に印象的だった。深見に猛反対され、同僚に「世話にな
った師匠にそんな言い方はないだろう」と言われ、それでも深見の元を去ってい
ったたけし。後に成功したたけしが深見に会いに行くシーンもとてもいい。ビー
トきよし役のナイツ土屋さんもそのまんまみたいで良かった。この映画どうして
Netflixで作ったのだろう。普通に劇場公開されている映画だったら、柳楽優弥は
日本アカデミー賞の主演男優賞ものである。ラストのタップダンスのシーンもと
ても感動的だった。




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コメント (10)
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