猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

題名のない子守唄

2022-01-07 22:13:44 | 日記
2006年のイタリア映画「題名のない子守唄」。

ウクライナから北イタリアのトリエステにやって来たイレーナ(クセニア・
ラパポルト)は、ある目的のために貴金属商のアダケル夫妻に近づいていく。
彼女はアダケル家の家政婦になることに成功し、家事を完璧にこなす彼女は
夫人に気に入られ、1人娘のテア(クララ・ドッセーナ)からもなつかれるよ
うになる。その裏でイレーナは、隠れて室内を物色するなど不可解な行動を
取り始める。

ジュゼッペ・トルナトーレ監督によるミステリーであり人間ドラマでもある。
とても重たい映画だった。ウクライナからイタリアにやって来たイレーナは、
偶然を装いアダケル家の家政婦になることに成功するが、その固執ぶりがす
ごい。アダケル家の家政婦と親しくなり、彼女を階段から突き落として意識
不明にし、新しい家政婦になる。何が何でもアダケル家に近づこうというそ
の行動力は異常である。前家政婦は廃人のようになり、施設に入れられる。
イレーナはアダケル夫人に信頼され、幼い娘・テアとも仲良くなる。
冒頭で、下着姿で仮面を着けた数人の女性たちが登場し、その中から1人が
選ばれるのだが、何に選ばれたのかはわからない。その女性はイレーナだっ
た。イレーナの昔の出来事がフラッシュバックのように所々に挟まれ、次第
に彼女が何者だったのかがわかってくる。イレーナは人身売買の組織で売春
をさせられていたのだ。それもかなり長い間。そしてイレーナが何故アダケ
ル家に近づいたのかも少しずつわかってくる。それはあまりにも悲しい事情
だった。
アダケル家の娘・テアは防衛本能に障害があり、転ぶ時などにとっさに手が
出ないのでケガをしやすい。幼稚園でも男児たちからいじめられている。そ
ういう障害って本当にあるのだろうか。イレーナはテアを縛って倒し、自分
で起き上がる訓練をさせる。虐待のようにも見える訓練だが、テアは泣きな
がらもイレーナに従うようになる。もちろん訓練のことは両親には言わない
約束をさせている。そして時は経ち、イレーナの前にある男が現れる。
イレーナの昔のことはとてもかわいそうである。けれども彼女が何故そうい
う組織に入っているのか(あるいは売られたのか)わからないし、彼女にも落
ち度がありそうな感じなので、全面的に同情する気にはなれない。SMシー
ンなど物語に必要だったのか、と思う。イレーナの不幸を強調するためなの
だろうが、不快に感じた。イレーナは女性として人間としてとてもみじめで
屈辱的な暮らしをしてきたのだが、本人にもその世界に堕ちていった責任は
あると思う。この映画、評価が高いのだが私はあまり感動できなかった。結
局イレーナのせいでアダケル夫妻は気の毒なことになっているし。ラストシ
ーンで救いがあったのは良かったと思うが、あまり好きになれない映画だっ
た。




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コメント (4)
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