猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

セメント・ガーデン

2022-04-08 22:25:00 | 日記
1992年のイギリス・フランス・ドイツ合作映画「セメント・ガーデン」。

郊外の一軒家に住む家族の父は変わり者で、庭に1本の雑草が生えるのも我慢
ならない。威圧的な父は息子のジャック(アンドリュー・ロバートソン)に手伝
わせ、庭の土をセメントで塗り固めてしまう。ある日父は突然の心臓発作で死
に、以来、神経を病んでしまった母を長女のジュリー(シャルロット・ゲンズ
ブール)たち4人の子供が面倒を見るが、家は荒れ放題に。やがて寝たきりの
母も衰弱死し、子供たちは彼女を地下室のロッカーにセメントで埋める。

イアン・マキューアンの小説をアンドリュー・バーキンが映画化した異色作。
1993年ベルリン国際映画祭監督賞受賞。アンドリュー・バーキンはジェーン
・バーキンの兄で、シャルロット・ゲンズブールの伯父にあたる。周囲に何も
ない一軒家に住む家族6人。子供は上から女の子、男の子、女の子、男の子。
上2人は高校生、3番目は中学生、末弟は小学1~2年くらいの感じ。この家の
父はとにかく高圧的で、子供たちは彼を好きではない様子。食事をしていても
皆笑顔もない。ある日父は心臓発作で急死し、母はショックで寝込んでしまう。
子供たちで母の面倒を見るが、学校へ通いながらなので家事もうまく回らない。
そのうち母も衰弱死し、子供たちは母を地下室の空きロッカーにセメントで埋
めてしまう。
子供たちが母をセメントで埋めたのは、自分たちがバラバラにならないためだ。
最初は「パパの時みたいにお葬式を出そう」と話していたのだが、ジャックが
「そうしたら僕たちは施設に入れられて、皆バラバラになるよ」と言った。そ
のため母の死を隠すことにしたのだ。あんなに感じの悪い父が死んで、母は神
経を病んでしまうほど父を愛していたのだろうか。死んでホッとするようなタ
イプの父である。そして父が死んで、この家族はどうやって生活していたのだ
ろうか。その前に父の職業は何だったのだろうか。長女のジュリーには33歳
の実業家の恋人がいるのだが、女子高生と30代の実業家がどうやって知り合
ったのだろう。この映画は説明が少ない。原作を読めばわかるのかもしれない
が。
やがてジュリーの恋人は地下室からの異臭に気づくが、犬の死体を埋めたのだ
と言ってごまかす。そしてジュリーとジャックは無邪気に戯れ出し、末弟は学
校でいじめられていて、その気分を晴らすために女装をし、次第に女装にはま
っていく。言ってみればアブノーマルな方向へ物語は流れていく。登場人物の
誰にも共感はできないが、ジュリー役のシャルロット・ゲンズブールとジャッ
ク役のアンドリュー・ロバートソンの演技がいいので惹き込まれてしまう。シ
ャルロットは繊細な雰囲気が役にぴったりだし、アンドリューはきれいで少し
中性的なところがいい。シャルロットは高校の制服がよく似合うが、イギリス
の高校はあんなにスカートが短いのだろうか。ちょっと短すぎるんじゃないの、
と思った。
この映画、邦題では<ルナティック・ラブ/禁断の姉弟>というサブタイトル
がついているのだが、このタイトルはひどいと思った。これではまるでエロ映
画のようだ。そういうシーンがない訳ではないのだが、それを全面に出した映
画ではない。だから私はタイトルにあえてサブタイトルを書かなかった。確か
にインモラルな方向へ堕ちていくきょうだいたちを描いているが、その過程に
おもしろさや興味深さがある。ラストシーンの後を観てみたいと思った。それ
にしてもアンドリュー・バーキンってまだ若い姪っ子をあっさりと脱がせてし
まうんだなあ。




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アネット

2022-04-04 22:20:22 | 日記
2021年のフランス・ドイツ・ベルギー・日本合作映画「アネット」を観に
行った。

ロサンゼルス。攻撃的なユーモアセンスを持ったスタンダップコメディアン
のヘンリー・マクヘンリー(アダム・ドライバー)と、国際的に有名なソプラ
ノ歌手アン・ドゥフラヌー(マリオン・コティヤール)。"美女と野人"とはや
されるほどにかけ離れた2人が恋に落ち、結婚が発表されると世間の注目の
的となる。やがてアンは娘のアネットを出産するが、アネットはミステリア
スな赤ん坊だった。アンのオペラ歌手としてのキャリアは成功を極め、彼女
が舞台に出ている間、ヘンリーがアネットの世話をするが、結婚生活は少し
ずつ不安定になっていく。

レオス・カラックス監督の最新作。初のミュージカルで初の英語映画である。
よくわからないような、いやそんなことはなくわかりやすいような、不思議
な映画だった。人気コメディアンのヘンリーと世界的に有名なソプラノ歌手
のアンは結婚し、世間の注目の的になる。アンはアネットという娘を出産す
るが、そのアネットは人形だった。観客にとって人形に見えているだけで、
夫婦や世間の人々からは普通の女の子の赤ん坊に見えているのか、それとも
誰の目にも人形に見えているのかわからないのだが、このアネットは気持ち
悪い。でもヘンリーとアンはアネットをかわいがった。
ヘンリーは舞台での悪態や不快なジョークが不評を買い、急激に転落し始め、
アンの成功に嫉妬するようになる。夫婦は関係修復のためアネットを連れて
自家用ヨットで旅に出る。だが、嵐の夜にヘンリーの行き過ぎた行動のため
アンは船外に投げ出され、死んでしまう。警察では事故と処理される。やが
てアンの亡霊はヘンリーに付きまとい、復讐するために幼児のアネットに自
分の声を与えるのだった。アネットが歌うのを聞いたヘンリーは「赤ん坊が
歌うなんて」と驚くが、収入がなくなった今、アネットを人前で歌わせるこ
とにする。
アネットが人形なのは、結局アネットは夫婦のおもちゃだったからなのだろ
う。最初は彼らはアネットを愛してかわいがったが、アンが死んでからはヘ
ンリーはアネットを金儲けの道具にしている。アンにはそんなつもりはなか
ったのかもしれないが、アネットに自分の声を与えたことで結果的にアネッ
トを見世物にしてしまった。アネットは自分というものを持たずに生まれて
きた子供なのだろう。ベイビー・アネットは大人気を得るが、ヘンリーには
更なるトラブルが待っていた。
私はミュージカルが好きではないのだが、この映画は普通のセリフも多いの
でまだ良かった。でもやっぱりカラックスの映画はフランス語で観たかった
と思う。主役のアダム・ドライバーがアメリカ人なのでそうなったのだろう
けど。アダム・ドライバーってちっともハンサムではないけど人気俳優のよ
うである。全体の感想としてはカラックスの昔の作品の方が良かった、と思
う。色を変えてみてあまり成功していないような…昔の難解な映画の方が好
きである。でもこれは好みなのだろうな。映画の冒頭でカラックス本人が登
場してタバコを吸うシーンがあるのだが、その時タバコの匂いがしたのは映
画にのめり込みすぎなのだろうか。


良かったらこちらもどうぞ。レオス・カラックス監督作品です。
ポンヌフの恋人
ポーラX
ホーリー・モーターズ



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