
つづきです。
相手が猫だということがはっきりして、ひとまず落ち着いた。
あの白っぽい大きいのはナベゾーだと思う。
目撃時は暗かったし、片側ちらっと見ただけだから、100%そうだとはいえないけれど、この春以降、ナベゾーはたびたび近くまで来ているし、外でクレと何度もケンカをしている。
人間にとって、正体のわからないモノがいちばん怖いので、姿を見て名がわかれば、それだけでもずいぶんほっとするものだ。
しかし、まだまだ一件落着、とはいかないのです。
猫ドアから入ってくるよそ猫がこの界隈をうろついているということは、家の中が「平和で安全な空間」ではなくなるということ。
いつまたうちの子を襲うかわからないし、留守に台所を荒らされるかもしれないし、室内にマーキングしていかれるのも大いに困る。
ジャッキー・タンは、敷居ぎりぎりまで来ていたが、決して中には入らなかった。前に半年だけうちの子だったウラシマも、教えてやるまでは入れなかった。ナベゾーは、スリちゃんと同じく、猫ドアを学習するなんらかの機会があったのだろうか。
だいぶ年とったジャッキーは、どうやらこの春で現役引退したとみえ、跡目を争っていたのがナベとオズワルド。
わたしは、うちの子たちに寛容な(チョイ悪おじさん風の)オズをひそかに推していたのだけど、そうはいかず、現在わが家はナベの勢力下にあるらしい。
次の晩も、真夜中過ぎてやってきた。
階下で寝ていたのはコマ吉で、ふだんあまり声の出ないコマが「きゃーーっ!」というような悲鳴を上げて2階に逃げてきた。
この日はMも帰ってきていたので、どんどんと足音を立てて階段を駆け下り、家の外の庭のむこうまで(とっくにいなかったけど)追っかけてくれた。
猫は男の人の低い声や大きな足音が嫌いなので、このほうが効果が上がる。おばさんではどうしても甘く見られ、つけこまれてしまうらしい。
このとき、わたしは階段の一番上の段を踏み外し、とっさに手すりにしがみついて転落はまぬがれたものの、そっち側の肩から腕にかけてひどい筋肉痛になる…というオマケつきだった。
夜目がきくことといい、運動能力といい、すべてにおいて猫のほうがうわてなのである。
こういうことが毎晩続いては寝不足でかなわないので、猫ドアを封鎖することにした。
しかしですね、前にも何度か書いたと思うけど、これはうまくいかないのです。
猫ドアにはロック機能がついているが、つまみが小さくて操作しにくい上、床にはいつくばって目を近づけないとロックしてあるかどうかもわからないので非常に不便である。
とりあえずドアの内側に重いものを置いてふさいだ。これで外からは入れなくなる。しかし、いつも好きなときに出入りしている子たち(きななを除く4匹)がぜんぜん納得しない。内側に集まって「なんで? なんで?」と言っている。
木の床は摩擦係数が低いため、けっこう重いもの(頑丈な木箱に入った古い東芝の鉄製アイロンです)でも、隙間に頭をつっこんでぐいぐいとやるとすべって動いてしまう、ということがわかった。そこから無理やり出ることは出ても、帰りはフラップがつっかえて入れない。よけいにややこしい。
いろいろ試している最中に、さんちゃんがどうにかして外に出てしまい、まさか出たとは思わなかったので、うちじゅうぐるぐる探し回ったあげく、帰ってくるまで寝ないで待っていなければならなかった。
2時間後、さんちゃんはしっとり雨に濡れて2階にあらわれ、「やー」とひとこと言った。
「やー」は「いま帰ったぞ」の挨拶だが、その目つきには「変なモノ置くから出入りしにくいじゃないか」という不満がありありとこめられていた。
わざわざ上まで言いに来るところが、さんちゃんの偉いところだ。
やっぱり物理的ブロックでは根本解決にならない。「この家に入ってもいいことは何もないよ」と、ナベ本ニャンに理解してもらうしかない。
…ということで、深夜に警報が出る→「こらぁ~っ!」と追いかける、をしつこく繰り返す、単純で地道な戦術に落ち着いた。
昨夜もまた来ました。午前3時半。昨夜じゃなくて今朝か。
寝不足が解消するのはいつのことやら。
つまらん話を長々とひっぱって申し訳ありません。ひとまずこれで終わります。(ひとまず…?)
本日のスペシャルゲスト

庭にあらわれたナベゾー。
朝に見かけるのはとても珍しい。

上から見たところ。
頭はサバトラ、ボディは白の多いサバぶち、尻尾は黒っぽい。
白い片手ホーロー鍋で、ふたのつまみと柄が木製のがあるけれど、なんとなくそんな感じなので「鍋蔵」。
クレやコマをいじめたにっくき敵も、こうして見れば、ただのカワイイ猫なんですけどね。
(おなかすいて来るのではないので、お接待はいたしません)