かれこれ1週間以上、雨が降っている。台風がゆっくりゆっくりやってくるからだ。
ときおりかっと晴れたかと思えば、またバラバラと降ってくる。
どちらを向いても数百メートル先は霧の中で、まったく見通しがきかない。わたしは天気予報士でも占い師でもないので、何も見通さなくたっていいんだけれど、その包囲網がぐっと狭まり、画像処理で背景を消去したみたいな変な景色になってくると、その向こう側は本当に何もないんじゃないかという漠然としたSF的不安にとらわれる。
雨が小やみになると、すかさず蝉が鳴き始める。命短し恋せよ男子。しっかり鳴いておくんだよ。
明日は二百十日だと、カレンダーに書いてある。前日のきょうは二百九日…とは言わないのか。
夏目漱石の「二百十日」という小説を子どもの頃に読んだ。
「ビールはござりませんばってん、恵比寿ならござります」
覚えているのは宿の女中さんのこのせりふだけだが、いまでもYEBIS のロゴを目にするたびに思い出し、「エビスナラゴザリマス」と胸のうちで呟く。
丸いお盆に乗ったあまり冷えてなさそうなビール(もちろん瓶、栓抜きも)には、ざわざわと吹く湿った強い風と、一面に倒れ伏した刈り入れ前の田んぼのイメージがついてくる。田んぼのほうは漱石でなく、他のところから来たものかもしれない。フォーク使いの下手な人のスパゲッティみたいに、台風は過去現在いろんなものを巻き込みながら、じわじわと北上を続けている。
サルトリイバラ。
水玉か植物レンズが、微妙なところ。
本日の収穫(?)
また、かじられました。今回はカラスではない。
皮だけうすーくきれいにかじってある。このぎざぎざの具合からみて、かなり小さい歯の持ち主らしい。
それにしても、なぜいつも「皮だけ」なんだろうね?
①ナスは皮んとこが美味しい。
②中身を食べる前に必ず邪魔が入る。
③食べてみたが思ったよりまずかったのでやめた。
④食べてみたが途中で飽きた。
⑤食べたのではなく、歯を磨いただけ。
⑥食べたのではなく、文字またはアートの一種である。
「また雨だねえ」「雨だねえ」
「寝るしかないね」
「寝るしかないね」
はてさて、クレコマの「晴れへの扉」はいずこに。
まだしばらく続きそうなこの悪天候。みなさまのところに被害がありませんように。どうか安全におすごしください。