透明な空に、笛とカスタネットがかわるがわる響く。
それが冬の始まりの合図。
「木琴森へ」(『木苺通信』より)
いつまで歩いていても、誰にも行き会わない。
歩いていると、ときどきすいこまれるように眠くなる。
こんな午後はまたとないのに、花をみているのは私しかいない。
「花の下で」(『木苺通信』より)
思い出は、どんな小さなかけらも拾いあつめ、
きちんと重ねて蓋の内側にしまっておく。
楽しいものは上のほうに、悲しいものは下に。
それはみんな、やがてひとつに溶けあって、
ピアノの音を美しくしてくれるものたちだ。
「秋のソナタ」(「木苺通信」より)