新刊です。
『まじょのむすめワンナ・ビー』(偕成社 2019年11月)
絵は種村有希子さんです。
48ページ横組みでオールカラーという、絵の多い幼年童話、あるいは文章多めの絵本。
そして、なぜハロウィンも過ぎたこのタイミングで「まじょ」なのかというと、これは魔女の話に見えて、じつはそうではないからです。
とうさんは、まほうつかい。かあさんは、まじょ。
ふたりのあいだでそだったむすめのワンナ・ビーは、6さいになると、まじょの学校にはいりました。大きくなったら、りっぱなまじょになるために。
ところが、ワンナ・ビーは、学校のべんきょうが、とってもにがてだったのです。
先生は、とうさんとかあさんをよんで、いいました。
「ざんねんですが、おたくのおじょうさんは、まじょにはむいていないようです」
でも、ワンナ・ビーは、そんなことぜんぜん気にしていませんでした。
以前、日本児童文学者協会編のアンソロジー『バースデーには、すてきな魔法を!』(偕成社 2012年)に収録された「ちっこい魔女ワンナ・ビー」のリメイクです。
(初出時の話は→こちら)
アンソロジーというのはいろんな人の作品の詰め合せですので、自分の思うようにならない部分もあり、おそらくわたしが編集意図をちゃんと理解していなかったため、なんとなくしっくりしない気持ちがずーっと残っていました。
今回、単独で本にできることになり、対象年齢を下げて全面的に書き直してみたら、ようやく納得のいく作品になりました。編集KMさんに感謝です。
種村さんの描いてくださった絵が、ほんとうにきれい、ほんとうに可愛い。
主人公をはじめ、登場する子どもたちのふっくらほっぺ、のびやかな手足、ふんわり柔らかな笑顔、ちょっとしたしぐさなど、どこ見ても可愛くてたまりません。
主人公の両親も、子どもの本にありがちな「お父さん・お母さん像」ではなく、現代風の若い魔法使いと魔女のカップルに描かれていて、このふたりが、なんというか、と~ってもラブラブ!で、素敵なんです。
詳しくは、偕成社のwebマガジンのインタビューでも「喋って」おりますので、ぜひそちらをごらんくださいませ。
その子らしさをうけとめる物語『まじょのむすめ ワンナ・ビー』著者インタビュー
以下、蛇足。
ワンナ・ビーという子は、魔法の勉強が苦手で、カエルを出す魔法でもオタマジャクシしか出てこなかったりするんだけど、本人はそのことをあんまり気にしてなくて、マイペース。
この「気にしてない」というところがイイ! といろんな方に言われました。
勉強に限らず、何か困難にぶつかったときに、「逃げずに向き合う」とか、「努力して克服する」とか、いわゆる「前向きな姿勢」というものが一般には求められるのでしょうが、わたしは「こっそり隠れてやり過ごす」も、「ぜんぜん気にしない」も、選択肢としてじゅうぶんありだと思います。
以前からちょいちょい書いていることですが、向き不向き、得手不得手というのは、その人の本質、根っこの問題なので、枝葉が無理やりがんばってもどうにかなるものではない。
だからやっても無駄…というわけではなく、いろいろ一通りやってみるうちに、何が好きで何が嫌いか、何が得意で何が苦手かが、自分でわかってくる、それが大事なのです。
その上で、すべての子どもは、「何ができないか」ではなく、「何ができるか」で評価されるべきだし、「できる(=楽しい、うれしい)」方向に進みたい子どもの手助けをする(もしくは、せめて邪魔しないようにする!)のが、すべてのおとなの役目ではないかしら。
…というようなことは、この本にはひとことも書いてありませんが(笑)
まあ、日頃そんなことを考えているヒトが書いたおはなしだということで、読んでいただければ幸いです。
(Amazonさんの「大型本」の基準はよくわかりません。天地22cm、絵本としては小さいサイズです)