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チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第21話 年賀状

2006年12月18日 | チエちゃん
 師走15日になると、年賀郵便の受付が始まります。

 お母さんも年賀状の準備を始めました。
チエちゃん家では、年賀状を書くのはいつもお母さんでした。
お父さんは文章を書いたり、お手紙を書いたりするのが苦手ということもありましたが、それより、この時期、お父さんは家に居なかったのです。

 チエちゃん家のような零細農家は、農業収入だけでは食べていくことができません。それで、お父さんは秋の稲刈りが終わると出稼ぎに行くのです。東北地方の農家はどこもこんな風だったと思います。当時の日本では、出稼ぎ者も貴重な労働力でした。チエちゃんの村でも冬は、ほとんどの農家で年寄りと女・子どもが家を守っていました。

 お母さんも家計を支えるため、冬の農閑期はアルバイトをしました。
チエちゃんが小学校低学年のうちは、隣町のそのまた隣町にある缶詰工場に通っていました。後には、村内の漬物工場に勤めていました。

 そんなお母さんが年賀状を書くのは、仕事から帰り、夕飯の後片付けや何やかやの家事を終えたあとの時間です。
年賀状をこたつの上に置き、ボールペンを手にするのですが、なかなかペンが進みません。
そーっとお母さんを見ると、こっくり、こっくり、居眠りをしています。
とうとう、

 ちょっと、寝っから、1時間したら起ごして!

そう言って、こたつでうたた寝をします。
おばあちゃんが、そっと綿入れ半纏を掛けてあげます。

 お母さんが寝ているその横で、チエちゃんも、学校のお友だちや東京の従兄妹たち、仙台のケイ子おねえちゃんに年賀状を書いたものでした。