義父の墓参の帰路、水上温泉に足をのばした。今夏のゲリラ気象の影響を受け、利根川でラフティングを楽しむ人もまばらだったが、避暑を兼ねての逗留の身には、かえって好都合だった。 こじんまりした純和風の小さな旅館だけに、随所にご主人と女将のこだわりが出ていて、小気味よい宿だった。湯に浸かりな
がら、利根川の清流と滝を眺めていると、気が和んだ。「面白き事もない世をおもしろく 生きるよすがは おのが心ぞ」などと、ふざけた句を口ずさみながら、禁を破り、飲んだ生ビールは格別だった。
「酒のない国に行きたい二日酔い また三日目には戻りたくなる」という狂歌があるが、お湯に浸かり汗をかくと、ついまた飲みたくなる。体に良いわけないと思いつつ、久し振りに羽目を外した。