前半(第一部)は、リスボンのアパートメントに住む我がままで気位の高い老女と黒人のメイド、その隣人の中年女性との交流が描かれる。老女は認知症気味でメイドとの間にいざこざが絶えない。ひとり娘がいて、金銭的援助はしてもなぜか姿を現すことはない。やがて老女が倒れて「会いたい」と願った男を隣人の女性が見つけ出すが、臨終に間に合わず葬儀に参列したところで第二部が始まる。すなわち、この謎の男、今は見る影もないやつれた老人だが、往年は颯爽としたダンディな美男子だった男と、気性は激しいが美貌に恵まれた若き日の老女の不倫を描く。この映画の真骨頂はここからで、舞台はリスボンから遠く離れたアフリカのポルトガル領タブー山麓に飛ぶ。原題の「タブー」はここから来ており、もちろん禁忌の含意だが、監督によるとタブー山麓という地名は存在しない。戦前ドイツ映画の鬼才F・W・ムルナウがハリウッドに渡って撮った遺作「タブウ」にあやかった題名だそうだ。
女は父の仕事の関係でアフリカの地に身を置くが、そこで知り合った若き実業家と結ばれ、子どももできる。そこへ流れ者のくだんの男が現れて平穏だった生活が一変する。人間の本性のまま奔放に生きようとするふたりは、ついに駆け落ちを決行するのである。
第一部の現代は物憂げなドラマが、主人公の中年女性の禁欲的な生き様さながらに淡々と進行する。打って変わって第二部の回想場面は主人公が若き日の老女と老人に交替して情熱的だ。構成もがらりと変わって、老人のナレーション以外は登場人物の台詞もなく、ドキュメンタリー・タッチで描かれるあたりがムルナウへのオマージュか。
現代を含めて半世紀以上も昔のアフリカでの禁じられた恋物語が、モノクロームの映像に映し出される。第62回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞等を受賞したポルトガルの俊英ミゲル・ゴメス監督の秀作である。(ken)
原題:Tabu
監督:ミゲル・ゴメス
脚本:ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド
撮影:ルイ・ポッサス
出演:テレーザ・マドルーガ、ラウラ・ソヴェラル、アナ・モレイラ、カルロト・コッタ、エンリケ・エスピリト・サント
女は父の仕事の関係でアフリカの地に身を置くが、そこで知り合った若き実業家と結ばれ、子どももできる。そこへ流れ者のくだんの男が現れて平穏だった生活が一変する。人間の本性のまま奔放に生きようとするふたりは、ついに駆け落ちを決行するのである。
第一部の現代は物憂げなドラマが、主人公の中年女性の禁欲的な生き様さながらに淡々と進行する。打って変わって第二部の回想場面は主人公が若き日の老女と老人に交替して情熱的だ。構成もがらりと変わって、老人のナレーション以外は登場人物の台詞もなく、ドキュメンタリー・タッチで描かれるあたりがムルナウへのオマージュか。
現代を含めて半世紀以上も昔のアフリカでの禁じられた恋物語が、モノクロームの映像に映し出される。第62回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞等を受賞したポルトガルの俊英ミゲル・ゴメス監督の秀作である。(ken)
原題:Tabu
監督:ミゲル・ゴメス
脚本:ミゲル・ゴメス、マリアナ・リカルド
撮影:ルイ・ポッサス
出演:テレーザ・マドルーガ、ラウラ・ソヴェラル、アナ・モレイラ、カルロト・コッタ、エンリケ・エスピリト・サント