シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「ぼくたちの家族」 (2013年 日本映画)

2014年07月11日 | 映画の感想・批評


 「えっ、母さんの命があと1週間しかない?!」突然家族に降りかかった紛れもない事実。確かに徴候はあった。物忘れがひどくなり、大事な席で突然意味不明の独り言をつぶやいたり、身近な人の名前を間違えたり…。「母さんをそう簡単に死なせてなるものか!!」病院で脳腫瘍だと診断された時、それぞれバラバラだった男たちが、一つになって動き出す。
 ぼくたちの家族を紹介しよう。長男・浩介に妻夫木聡。真面目すぎて、中学時代は引きこもってしまったこともあるが、今は結婚して独立し、もうすぐ子どもも生まれる。この窮地には長男として家族を背負って頑張らなくては、という思いが痛々しいほど伝わってくる。二男・俊平には期待の若手俳優、池松壮亮。気楽な留年生活を送っている大学生で、家族のことには無関心だったが、そのフットワークの良さが意外な展開を導くことに。父・克明には長塚京三。小さな会社の社長だが、会社は火の車。見栄っ張りで、父親らしく生きようとはしているが、どこか空回り。おそらくバブル時代に多額のローンを組んで、東京郊外にちょっと立派なマイホームを建てたのだろう。この人ならと頷ける。母・玲子に原田美枝子。病状が進むにつれ少女のように純真になり、本音を次々語りだすところは実に痛快。そこでこの家族の真の姿が浮き彫りになってくるのだが、それぞれ問題を抱えながらもやはり一つの家族。「こういう時は、笑おうよ。」が口癖の、ぼくたちの母さんがみんな大好きなんですね。
 この素晴らしい俳優たちの名演を得て、「家族とは何か?」というテーマに「これは自分自身の話だ」と受け止め、果敢に挑戦したのは、昨年「舟を編む」で数々の賞に輝いた石井裕也監督。実は小生も夫婦と息子2人の4人家族。年恰好もよく似ているので他人事のように思えなかった。はたしていざという時、息子たちはこんな風に動いてくれるかなあ…。
 (HIRO)
 
監督、脚本:石井裕也
撮影:藤澤順一
出演:妻夫木聡、原田美枝子、池松壮亮、長塚京三、黒川芽以、ユースケ・サンタマリア、鶴見辰吾