シネマ見どころ

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「暮れ逢い」 (2014年 フランス・ベルギー)

2015年01月01日 | 映画の感想・批評
 パトリス・ルコント監督の最新作は、第1次世界大戦前後のドイツを舞台にした純愛物語だ。
 1912年、ホフマイスター製鋼所に職を得たフリドリックは、有能で仕事熱心な青年。そんな彼の仕事ぶりに好感を抱いた初老の実業家カールは、自宅屋敷に彼を招く。そこでカールの若く美しい妻シャーロットに出逢う。息子オットーの家庭教師も引き受けたフリドリックは、やがてホフマイスター家の屋敷で暮らすことになる。若くて美しい魅力的な男女が一つ屋根の下で暮らせば惹かれあうのは当然の成り行きだ。
 製鋼所の原料であるマンガンの大鉱脈がメキシコで発見されたという情報を掴んだフリドリックは、カールにメキシコでの鉱山開発を進言し実現するが、彼は2年間のメキシコ行きを命じられる。
 若い二人をカールはどうのように見つめていたのだろうか。ロットの両親の友人であったカールは若い妻を優しく包み込み愛している。最近は持病の心臓発作も起こりやすくなり、自分がもう老い先長くないことを悟っていたのではないだろうか。もちろん若いフリドリックにロットを奪われることは我慢できないことだが、若い妻や幼い息子の行く末を若いが有能な彼に託したい気持ちがあったのではないだろうか。フリドリックが妻や息子と楽しそうに庭で遊ぶ様子を2階の窓からじっと眺めていたカールの眼差しは、決して嫉妬と憎しみだけではない複雑な眼差しに見えた。メキシコでの2年間がフリドリックをどう変化させるのか試そうとしたのかもしれない。ちょっとカールに肩入れし過ぎかな…。
 映画はフリドリックとロットが、大西洋と第1次世界大戦に阻まれて遠く離れていても、愛を成就させた純愛物語として描いているが、カール役のアラン・リックマンのいぶし銀の演技が物語に厚みを加えている。(久)

原題:A Promise
監督:パトリス・ルコント
脚本:ジェローム・トネール、パトリス・ルコント
原作:シュテファン・ツヴァイク 「Journey into the Past」
撮影:エドゥアルド・セラ
出演:レベッカ・ホール、アラン・リックマン、リチャード・マッデン、シャノン・ターベット