アメリカ西部の原野で、毛皮狩りをするレオナルド・ディカプリオ扮するハンターが、クマに襲われ、瀕死の重傷を負う。一命を取り留めるも極寒と原住民からの追手に逃げきれず、仲間に裏切られ、更に、口封じの為、目前で息子を殺され、過酷な大自然での孤独な復讐劇に出発するドラマである。
「復讐する」という気持ちだけで、生き抜くのである。クマに襲われて負った傷口を焼いて消毒したり、生肉・生魚を食べたり、馬と一緒に崖から落ちた後、死んだ馬の内臓を取り除いて、皮だけの馬のお腹で寝たり、とにかくサバイバルの連続である。筋肉ムキムキではないのに、あのしぶとさ・執念を引き出したのは気持ちだけであろう。それを表現したディカプリオは素晴らしかった。徐々に痩せていくのもリアル感を醸し出していた。
演技が素晴らしい上に、この映画には強いメッセージが込められていると思う。それは、ラストで復讐をやり遂げたディカプリオが画面を真正面から凝視するシーンが表していると思う。人間の善悪とは何か?何を糧に生きていくのか?どう生きていきたいのか?映画の中にどっぷりと浸かっていた観客を一瞬にして現実に引き戻し、たくさんの問いを投げかけてくるのである。生きていくって、大自然のサバイバルよりも大変かも・・・。考えさせられる映画であった。
そのディカプリオがアカデミー賞ノミネート5回目で、初めてオスカーを手にし、イニャリトゥが監督賞を、ルベツキが撮影賞を受賞した。冒頭で声を失い、表情に気持ちを表現しなければならず、ディカプリオの受賞は納得。映画ならではの演技だったとも思う。是非、あの表情を大画面でご覧頂きたい。撮影も、ロングショットを多く取り入れ、壮大な大自然を感じられて、映画らしかった。また、監督の授賞式のコメントも良かった。劇中のセリフ「肌の色で決めつけられる」に重ねて、「肌の色は髪の毛の長さと同じように意味の無いこと」。詩人でもありますね。賞は逃したが、助演男優候補のトム・ハーディも受賞してもおかしくない演技だったと思う。作品賞が取れなかったのはやっかみかな?
(kenya)
原題:「The Revenant」
監督・脚本・製作:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:坂本龍一、アルヴァ・ノト
脚本:マーク・L・スミス
製作:アーノン・ミルチャン、スティーヴ・ゴリン、ジェームズ・W・スコッチドープル
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター