シネマ見どころ

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「何者」(2016年 日本映画)

2016年11月01日 | 映画の感想・批評


 ガラケーからスマホに変えてほぼ1年。やっと使い方も少しずつ分かってきて、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)とやらも何とか使えるようになってきた。最近このSNSが何かと話題になっている。例えばあと数日後(11月8日)に迫った米大統領選。ここでも既存のメディアを通さず、有権者に直接メッセージを伝えられるとして、選挙を知るうえで最も参考になる手段に選ばれたのがSNSだ。しかし、お互いのけなし合いともとれる投稿にうんざりしている人も多いのは確か。このSNS,使い方によってせっかく繋がりができた相手を傷つけてしまうこともあるから注意が必要だ。
 デビュー作「桐島、部活やめるってよ」で等身大の高校生を描き、小説すばる新人賞を受賞したかと思ったら、今度は「何者」で直木賞を受賞と、若手作家のエースの名をほしいままにしている朝井リョウ。その原作を、大学時代から「劇団ポツドール」を主宰し、センセーショナルな作風で演劇界の話題をさらっている鬼才・三浦大輔が映画化。
 「何者」に描かれている大きなテーマの一つは就活問題だ。近年の厳しい状況はよく知られ、そこで起きている出来事はいずれも人間の本質・心の奥底を描くには格好の材料。しかし、三浦監督はあえて登場人物の本心をあからさまに語らせない手段をとった。モザイクをかけ、行動だけ見ると何を考えているのかわからないように・・・。そしてお互いが相手の気持ちを探り合う中で登場するのが前述のSNSである。SNSの中で自分の本心を延々と綴っていた内容が暴露された時の衝撃。でもこれって、本音だよね。わかるよ、その気持ち。自分を着飾り、本音を隠して生きていかなければならない現実。しかし最後にその呪縛を乗り越え、何もかも吹っ切れた中で、自分を取り戻した主人公に「何者」かになれる希望の光を見た。
 主人公の拓人を演じた佐藤健をはじめ、有村架純、菅田将輝、二階堂ふみ等、就活でライバルとなる登場人物に扮する若手実力俳優の演技合戦も見もの。
(HIRO)

監督:三浦大輔
脚本:三浦大輔
原作:朝井リョウ
撮影:相馬大輔
音楽:中田ヤスタカ
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之