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「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年 日本映画)

2016年11月11日 | 映画の感想・批評


 余命2か月と宣告されたシングルマザー(旦那が蒸発したので戸籍はある?)宮沢りえ扮する主人公が、死を迎えるまでにやらなくてはならないことを、「熱く強く」実行していく勇気溢れる物語である。
 風呂屋を営んでいた蒸発しただらしない旦那(興信所に依頼して見つけたら腹違いの子供までいた)、高校生の娘が学校で抱えるいじめ、自身の身体への不安等、次々と災難事が続けさまに起こるが、自分の命に期限があることが分かっているので、勇気を振り絞って、風呂屋を再開させ、家族を一つに纏めていく。この力強さには圧倒される。
 後半は、もっと複雑で難解な展開になるが、諦めずに実行していくのである。こんなに勇気のある人はいるのだろうか。そして、これ程、愛される人そして、人を愛する人がいるのだろうか。粘り強く、人に向き合い、自分の想いを言葉にし、そして、ある時は怒りをぶちまけ、「生きる」のである。病気で足元がふらつくが、「地に足を付けて生きている」のである。濃縮された2か月である。
 我が家のルール(劇中何度か出てくる)(ちなみに、そのルールとは特別な日はすきやきを食べること)も心が温まるエピソードであった。ある場面では、朝食までもすきやきだった。旦那のセリフ「朝からすきやきも良いね」も良かった。家族の気持ちがうまく表現されている。それを実行するのが主人公の強さでもあり、優しさなんのでしょうね。
 全編を通して優しさが溢れる映画だ。病院で「死にたくない」と涙する主人公。自分が死を迎える時にどう思うだろうか。幸せな死を迎えられるのだろうか。ラストシーンも驚かせながらも、題名に絡めた特に優しさに溢れるシーンだった。思いっきり泣きたい人には是非お薦めしたい。
(kenya)

監督・脚本:中野量太
撮影:池内義浩
編集・題字:高良真秀
出演:宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー、松坂桃季、伊東蒼、駿河太郎他