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エルネスト もう一人のゲバラ(2017年 日本・キューバ合作映画)

2017年10月18日 | 映画の感想・批評
 

 阪本順治監督の最新作「エルネスト」が劇場公開された10月6日、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が2017年ノーベル平和賞を受賞した。「どのような核兵器の使用も人類の破壊的な結果をもたらすことに注目を集める活動と、核兵器を条約に基づいて禁止することを達成するという前例のない努力」に対して授与された。核兵器禁止条約の制定などを訴えてきたNGO(非政府組織)の連合体で、20~30代の若者たちが中心を担ってきた。
 1941年生まれのフレディ前原ウルタードは、日本人の父とボリビア人の母を持つ日系二世である。1962年4月、フレディは医療が未発達であった祖国ボリビアからハバナ大学医学部への留学を目指してキューバへやって来た。寡黙だが真面目で正義感の強いフレディは、学友たちからも信頼されクラスのリーダーになっていく。その年の10月、米ソ間の対立が激化し核戦争寸前までいく“キューバ危機”のさなか、民兵として警備任務についていたフレディは憧れのゲバラと対面し、平和や平等のために戦うゲバラの魅力に心酔する。
 一緒にボリビアから来たルイサは、同じくボリビアから来た他の学生と付き合い妊娠するが、男に裏切られ1人で女の子を出産する。ルイサを静かに見守り、支えとなっていくフレディだが、祖国ボリビアで軍事クーデターが起きたと聞いて悩んだ末、ゲバラの部隊に参加することを決意する。そんなフレディにゲバラは自分のファーストネームから、エルネスト・メディコ(医師)という戦士名を授けたのだった。
 写真で見るフレディ本人は、革命戦士のイメージと違って物静かな眼差しの青年である。オダギリジョーは本人のイメージを壊すことなく、勉学に励み、ルイサには秘めた恋心を貫き、祖国解放の闘いに向う時も寡黙で正義感あふれる青年フレディを演じていて、格好いい。
 今年は、フレディ前原とチェ・ゲバラの没後50周年にあたる。軍事クーデターから祖国ボリビアを解放しようとゲリラ部隊に参加し、25歳の若さで命を絶たれたフレディ前原や彼の仲間の若者たちと、国連会議での核兵器禁止条約の採択推進に粘り強く取り組んだICANの若者たち。本作の初めの方に、ゲバラがキューバ使節団の団長として来日した際広島を訪れ、原爆ドームや原爆資料館などを訪問するエピソードが描かれていたこともあり、どうしても彼らが重なって見えてきた。時代や国・地域は違っても、自分たちの生きている社会の問題に目を向け、理想を掲げて変革の道を歩む若い世代が続く限り、「世界は、変えられる。」のだと思う。(久)

スペイン語原題:ERNESTO
監督:阪本順治
脚本:阪本順治
撮影:儀間眞悟
出演:オダギリジョー、永山絢斗、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス