本年度映画界最高の話題作になりそうな予感がするスーパー娯楽作。
昨年11月、6日間限定の先行上映で初披露となったこの作品、「こんな映画見たことない!」「面白すぎる!」とたちまち口コミで話題となり、その後、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」をはじめ、国内外の映画祭で好評価を得たあと、6月に新宿、池袋のアート系劇場2館で単独上映を開始。その後まさにゾンビのごとくあれよあれよと上映館が増え続け、現在は100館以上に拡大。その感染力は未だ衰えを知らない。
それほどまでに人々を引きつけたこの作品の魅力とはいったい何なのだろう。まずは、冒頭の37分に渡るワンカット・ゾンビサバイバル映像。これは本当にすごい!37分間よく持ちこたえたものだと感心する。1度もカットしていないのだ。途中妙な間があったり、血しぶきが飛んできたり、カメラが転がったり等、色々なアクシデントが発生するのだが、これがまた後半のおもしろさに繋がっていくのだから見逃せない。
上田慎一郎監督は滋賀県の北方、長浜市木之本の出身。中学生の頃から友達と自主映画を製作してきたそうだが、5年前とある小劇団の舞台を見たときに、二段構えの構造のおもしろさに着想を得て、本作の企画を発案。昨年シネマプロジェクトの監督オファーを受け、オーディションを経てメインキャストの12人の俳優を選抜。選んだ基準が「不器用な人」というところがまた面白い。しかし、失礼だがほとんど無名の俳優ともいえる彼らを一つにまとめ、これほどまでに恐怖と笑いと感動を呼ぶ作品に仕上げたのだから、この若き監督の力は大したものだ。また、その笑いや感動が観客も共感できる日常にありそうなことからきているのもいい。
後半はこのワンカット作品「ONE CUT OF THE DEAD」ができ上がるまでの経過と、観客が見て??とか!!と感じたところのタネ明かしがあるのだが、これは見てのお楽しみとしておこう。とにかく最後の最後、エンドクレジットが終わるまで、二重、三重にわたる構造のおもしろさと、映画を作ることの楽しさを思いっきり体感していただきたい。
いよいよ10月20日には地元木之本で、元映画館「日吉座」と「スティックホール」を会場に凱旋上映会が開催される。チケットはすでに完売だそうだが、上映前に「木之本交遊館」で上田監督の講演会も開かれるのでお見逃しなく。日本中を席巻したあと、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。
(HIRO)
監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎
撮影:曽根剛
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、秋山ゆずき、細井学、市原洋、竹原芳子、山崎俊太郎、大沢真一郎