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「ダンスウィズミー」(2019年日本)

2019年09月04日 | 映画の感想、批評
 都会に住む一流会社勤めのOLが、ひょんなことから、音楽が掛かり出すと躍り出してしまう催眠術に掛かってしまう。その睡眠術を解いてもらうとするが、睡眠術師は居なくなっていた。そこで、渋々、有給休暇を取って、催眠術師を探して、日本全国を奔走する映画である。
 監督は、「ハッピーフライト」の矢口史靖なので、奇想天外な展開を想像していたが、良い意味で裏切られ、想像以上のヒューマン要素溢れるコメディーだった。日本全国を飛び回る中で出会う人達は、見かけは個性が強烈で、思わず引いてしまうような人達ばかりだが、とても、人情溢れる面々で、自然と笑みがこぼれる。その人達の暖かさが、しんみりと味深い内容でホッとさせられる。特に、旅の相方をすることになってしまった役を演じたやしろ優は、芸人だが、意外と(失礼!)演じることも地に足が付いているように思う。ガサツでハチャメチャな性格の役ながらも、ネアカで自分の夢を持ち、常に前向きで、明るい希望を感じるラストシーンは、とても良かった。主役の三吉彩花よりも、彼女がこの映画を成り立たせているようにも感じた。準主役ということだが、充分、主役にも匹敵すると思う。これからも出演作品があれば、注目してみたい。
 また、全編を通して、原作と脚本も担当している監督の勢いを感じた。普通に考えれば、音楽を聴くと躍り出す催眠術なんて無いと思うが、それに疑問を感じさせる前に、一気に、106分を駆け抜け、人の心をポッと温かくさせる。これは、監督の器の大きさなのでしょうか。映画の持つ不思議な力を改めて実感出来た。
 毎日の生活で、報道やテレビを見ていると、自分に合う仕事とは何か、身の丈にあった生活とは何か、本当の幸せとは何か、自分はどこに向かうのか等々、日々、悩みが出てくるばかりだが、その悶々とした時間を一瞬でも忘れさせてくれる映画だった。
 最後に、私は、ミュージカル映画は好んでは観ないので、実は、鑑賞には躊躇があった。が、それ程、宣伝にあったようなミュージカル感は強くは感じなかった。強面のヤンキー達が躍り始めたのには、やり過ぎ感があったように思うが・・・。なので、ミュージカル映画を観たことが無い方でも、気楽に観られる作品だと思う。
(kenya)

監督・脚本・原作:矢口史靖
撮影:谷口和寛
出演:三吉彩花、やしろ優、chay、三浦貴大、ムロツヨシ、宝田明他