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「ワンス·アポン·ア·タイム·イン·ハリウッド」(2019年 アメリカ)

2019年10月02日 | 映画の感想、批評


タランティーノ監督作品はたぶん初めて。バイオレンスのイメージが強くて敬遠していたが、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの初共演と聞いて興味がわいた
古き良き時代のハリウッドの町、映画そのものへの監督自身の愛溢れる作品だった。
架空の俳優と、そのスタントマンを務める男の友情物語をベースに、シャロン・テート事件が・・・・・

一世を風靡した人気俳優だったリック(ディカプリオ演)は今や落ち目で、軽蔑する「マカロニウェスタン」に出るハメに。それでもまだプール付きの豪邸に暮らしている。友人クリフ(ブラッド・ピット演)が付き人兼スタントマン兼雑用係を専属でやっているが、最近は二人には出番もない。しかし、二人の友情は揺らがない。
リックはある日、子役の女の子(ジュリア・バターズ演)に触発され、劇的変貌を遂げる。目に力の入ったディカプリオ、滔々と語るセリフと緊迫感はさすが。この辺りのカタルシスはなかなかいい感じ。ブラピの肩に寄りかかって、愚痴をこぼすズタボロのせつないレオ様も美味しかったけど。

ちょこちょこ当時の作品が顔を出す。「大脱走」のマックイーンはおかしかった。クリフがブルース・リー相手にアクション、それがまたカッコいい!ぶちのめしてしまって、もちろん仕事はもらえないのだけど。
ヒッピーの女の子の誘惑をかわすブラピの大人な対応にしびれる!ペットのワンコとのやり取りもいちいちカッコいい。特にファンでもなかったが、声の良さにも惹かれ、今更ながら見直している。遅いと言われそう・・・・・

シャロン・テート(マーゴット・ロビー演)が自身の出演作を観に映画館を訪ねてきて、チケット売り場でのやり取りも面白い。何より、館内でお客の反応を嬉しそうに確かめる様子のチャーミングな事。座席に足を放り上げて、まあお行儀悪い事!
(他にも女の子が足をどっかーんと放り上げるシーンがあり、監督の好みなのかな。笑)
劇場支配人があげる女優の名前に「パティ・デューク」が出てきたのにはちょっと涙が出てきた。50年越しにやっと劇場で見た「奇跡の人」はもちろん、彼女を知った「ナタリーの朝」が大好きなだけに。よくぞ拾ってくれた!と個人的に拍手してる。

ベトナム戦争末期の、大きな矛盾を抱えたアメリカ社会の一端が見えてくる。ヒッピー、麻薬、カルト集団。この不気味なシーンには、戦争という背景があったのだと、今になってわかる。同時代の空気を吸ってきた世代ゆえ故にか。
タバコは大嫌いだが、あの時代には大事なアクセサリー。土埃とタバコのにおいが画面から漂ってくる。


1963年生まれの監督自身は1969年当時のハリウッドをおぼろげにしか知らないはず。それでも町の賑やかな様子はCGでなくセットを作り上げてのこだわりぶりはすばらしい。目まぐるしくカメラが動いて、看板をじっくり見られなくて残念。英語ができないことが、洋画を見る時の楽しさにブレーキをかけることを痛感。悔しい・・・

3時間弱という長い上映時間だが、まったく退屈させない、ひっぱりこまれる面白さ。
在りし日の名作をもう一度見直したいし、流れる音楽も良く、エンドロールで「何という曲だったっけ」と確認するのも楽しい。アル・パチーノの健在ぶりもうれしい。

心配していたバイオレンスはあったが、あの事件を防いだんだったら、いいんじゃない!
火炎放射器、ここで出てきたか!ふと、京都アニメの事件を思い起こして、辛くなったが。

歴史を変えてしまう事は出来ないが、「昔々、アメリカのハリウッドでは・・・・・」そんなおとぎ話もあっていいかも。
監督自身のハリウッドへの愛を感じながら、一緒に夢を見せてもらえる時間となった。
(アロママ)

監督、脚本:クエンティン・タランティーノ
主演・レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、アル・パチーノ他