シネマ見どころ

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イエスタデイ(2019年イギリス映画)

2019年10月23日 | 映画の感想、批評


 イギリスの田舎で売れないミュージシャンをやっている主人公は、幼馴染のマネージャーが頑張って獲ってきたステージでも客が入らず、夢を諦めようとしていた。と、ある日、世界中で同時に12秒だけ停電が起こり、その間にバスと衝突し、昏睡状態に。目が覚めて、「Yestarday」を口ずさむと、皆が「新曲か?」「名曲ね!」「いつ作ったの?」と。何と、ビートルズが存在していない世界になっていたのである・・・。
 皆がビートルズを知らないことが信じられない主人公は、パソコンでビートルズを検索するが、ビートル(カブトムシ)ばかり出てくるシーンは、今風で笑えた。自分もそれに慣れたが、調べるときは、ネット検索が当たり前ということなのですね。
 全体的にライトタッチでテンポ良く話が進んでいく。そんなストーリーあるのかな?と考える間を与えずに、軽妙に勢いを落とさず2時間を駆け抜ける映画である。海外の所謂メジャー映画会社は、そんな脚本あり得ない!と思える企画で、1本の映画として仕上げてしまう所が凄い。たっぷりのお金と時間を掛けて、世界中に配給する仕組みもあって、劇中にもあった“マーケティング戦略会議”で、費用対効果を計算しているのでしょうか。「映画」を「ビジネス」として成り立たせるロジックがきっちりと出来上がっているのでしょうね。「凄い」の一言に尽きる。
 映画の展開としては、パロディー要素だけではなく、自分の偽りの姿で売れていくことに罪悪感が芽生え、悩み、ついには、すべてが盗作であることを自ら暴露し、自分に素直になることで、自分を取り戻すのである。更に、悪友に助けられながら、自分の幼馴染にも素直に向き合い、映画はハッピーエンドを迎える。エンドロールに併せて、二人の未来を想像させられる。人生には勝ち負けは無いと言葉では理解しながらも、ネットや書店には、「勝ち組」「負け組」の文字が溢れる。そういった社会に向けてのメッセージも込められているのである。
 最後に、ネタバレだが、年を重ねたジョン・レノンが登場するシーンや、エド・シーラン本人が最初に登場したシーンは劇場内で歓声が起こった。劇場で一体感を味わえた瞬間だった。
(kenya)

原題:Yestarday
監督:ダニー・ボイル
脚本:リチャード・カーティス
撮影:クリストファー・ロス
出演:ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ジョエル・フライ、エド・シーラン、ケイト・マッキノン、ジェームズ・コーデン他