シネマ見どころ

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ノッティングヒルの洋菓子店(2020年 イギリス)

2020年12月23日 | 映画の感想・批評
 ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント主演の「ノッティングヒルの恋人」の大ヒットで、ロンドン西部にある住宅地、ノッティングヒルが一躍知られるようになった。おしゃれなカフェやレストラン、アンティークの店、マーケットなどもある人気のスポットとして賑わっている。そんなノッティングヒルに洋菓子店をオープンし、人気洋菓子店に成長させようと奮闘する3人の女性の物語。
 名店で修業を積んできたパティシエのサラ。親友のイザベラと一緒に、洋菓子激戦地のノッティングヒルに2人の夢だった洋菓子店を開店させるべく借店舗を確保した直後、事故死してしまう。
 サラを失った悲しみから抜け出せない人物がイザベラの他にもいた。ダンサーを目指す娘のクラリッサ。サラと絶縁状態にあった空中ブランコの元花形スターだった母親のミミ。母の夢を実現させたいというクラリッサの強い主張に引きずられるように、3人は共同経営者として〈ラブ・サラ〉の開店準備を進め、パティシエを募集する。応募してきたのはミシュラン2つ星レストランのスターシェフ、マシュー。サラ、イザベル、マシューはパリの製菓学校で共に学んだ仲。
 〈ラブ・サラ〉のショーウィンドウに並ぶカラフルで美味しそうなケーキの数々。こういう映画はスイーツ好きには堪らない。映画が終わったら洋菓子店に直行したくなる。開店早々の店には珍しがって客が押し寄せるのはどの国でも同じらしい。きっと〈ラブ・サラ〉も開店大盛況かと思いきや、初日の客はたった2人だけ。採用テストでマシューが作るチョコレートムース、絶対美味しいに違いないだろう。だが、なるほどパリで学んだというだけにちょっと洗練されすぎでは、と思ってしまった。見た目は垢抜けない、でもしっかり美味しい、イギリスのスイーツは素朴で庶民的だ。
 客足が伸びない〈ラブ・サラ〉の危機脱出のヒントになったのはラトヴィア人の青年だった。様々な国・地域の人々が暮らす国際都市ロンドンで、恋しい故郷のお菓子を作ればとミミが思いつき、早速挑戦したところ評判が広がる。そして〈ラブ・サラ〉の運命をかえる注文がくるのだが、それが何と抹茶ミルクレープというから驚きである。以前は苦さが敬遠されていた抹茶だが、最近では世界中にファンが増えてきている。
 今年、世界はコロナのせいで他国との往来を封鎖されたが、美味しいスイーツは世界を繋ぐ。ブレグジットを間近に控えたイギリスだが、これからも文化の多様性を大切にしていってほしいと思う。(久)

原題:LOVE SARAH
監督:エリザ・シュローダー
脚本:ジェイク・ブランガー
撮影:アローン・リード
出演:セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コン、ルパート・ペンリー=ジョーンズ、ビル・パターソン