![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/48/bc7a4555134a2b5db5d616328a859531.jpg)
Coda コーダとは、「聾の親を持つ健聴者の子ども」という意味だと初めて知った。
アメリカのとある海岸の漁師の一家。高校生の娘ルビーは朝3時から起きて、父と兄の漁を手伝い、着替える間もなく登校する。同級生たちからは「魚臭い」と嘲笑されるだけでなく、手話が第一言語になっているからか、幼いころから言葉の表現も普通ではないと思われている。
ひそかに思いを寄せる同級生マイルズと同じ部活動をという理由でコーラス部に入部するが、人前で歌う恥ずかしさから一度は逃げ出してしまう。それでも試しに声を出してみると先生が目を見張る。コーラス部の指導者はメキシコからの移民らしく、巻き舌で自己紹介。とてもまねできそうにないので、「V先生とよんでくれ!」
文化祭のステージで、あこがれのマイルズ少年とデュエットをすることに決まった。ある日、マイルズと自宅で歌の練習をしていると、隣室から両親のあられもない声がひびきわたってくる。
両親のあけっぴろげな暮らしぶりもおかしいのだが、ルビーは両親の性生活のお悩みを医者に通訳するなど、思春期の少女にはとてもつらい体験をしている。
マイルズはルビーの両親の開放的な様子にあこがれも手伝って、学校でルビーの家族について語るのだが、それはあらぬ方向に。ルビーはますます学校に居づらさを感じる。
音楽の楽しさを知ったルビーはV先生の指導の成果もあり、音大への道を夢見始める。しかし、一家にとって、漁の売上高の管理を自分たちでやろうと協同組合も作ったばかりで、通訳者であるルビーが居ないと交渉事はできない、漁船の操業の安全は確保できない、テレビの取材にも応じられない。
両親は娘に音大進学よりも家業を手伝うことを望み、ルビーも葛藤の末、それを受け入れる。兄だけは乱暴な言葉をかけながらも不器用な愛情表現で、妹の自立と旅立ちを応援してくれるのだが。
いよいよ文化祭。母は娘の為に真っ赤なドレスを用意し、家族そろって会場へ。
でも、彼らには娘の歌う声は全く聞こえない。周囲の観衆が体でリズムをとり、うっとりしている姿を眺めまわしながら、娘の歌声がどんなに感動を与えているかを感じ始める。
このシーンが本当に素晴らしい。一切の音を消して、私たちも聾の体験をすることになる。
その夜、父親は娘に「お父さんの為に歌ってくれ」と、娘の喉元に手をあて歌を聴こうとする。そして、娘の才能を感じ取り、新しい世界へと背中をおす決心をする。
音楽大学の入学オーディションははたして・・・・・
ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌が本当に素晴らしい。
両親と兄は現実の聾唖の俳優さんたち。母親役のマーリー・マトソンがジュリア・ロバーツに見えてしばらく戸惑う。
日本でようやく話題になってきたヤングケアラーのことも頭をよぎり、一緒に観た息子を「夫の介護の為に縛ってはいやしないか」、ふと横顔を見てしまった。障害のある家族という切り口だけではない、家族の物語として普遍性のある作品と思えた。サントラ盤のCDが今ドライブのお供、心地よい時間を過ごせている。
(アロママ)
原題:Coda
監督:シアン・ヘダー
脚本:シアン・ヘダー
撮影:ポーラ・ウイドプロ
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツアー、マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ