1950年代のこれぞ“アメリカ!”という白人ばかりの富裕層(中間層かも?)の住宅街に住む一家を中心に繰り広げられるドラマである。一家は、父親(マット・デイモン)、足の悪い母親(ジュリアン・ムーア)、その母親の妹(ジュリアン・ムーア二役)と、息子(ノア・ジェーブ)の4人家族である。
そんな一家のとなりに、ある日、黒人一家が引っ越してくるところから物語が始まる。すぐに、住民会議が開かれ、「黒人を追放しよう」と盛り上がり、黒人の入居を承認した役人らしき人物までもが悪者にされてしまう始末である。そうか、この映画は、トランプ政権への批判をテーマとした映画なのかと思いきや、映画は進んで、ある晩、白人一家に強盗が押し入り、足の悪い母親があっけなく殺害されてしまうのである。うんっ?これは、サスペンスも絡めるのかと思いきや、犯人はこれまたあっけなく分かってしまい、サスペンスではなく、一連の犯人の行動から、男女の恋愛感情や親子の愛情を絡めるのかと思いきや、最後まで、どれも充分絡まないという状況で終わるのであった。
脚本がコーエン兄弟なので、難解な表現が多いとは予想していたが、予想以上の結果だった。自分には、かなり難易度の高い内容だった。映画に掛ける想いが多すぎて、題材をたっぷり盛り込んだので、時間が足りなかったかもしれない。実は、コーエン兄弟はもっと大作にしかったのではないかと勝手に推測してしまった。あるいは、最近は、トランプ政権を批判する俳優や映画関係者が多いようだ。ぱっと思い出すだけでも、スピルバーグ・スピルバーグ監督「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」やキャサリン・ビグロー監督「デトロイト」もその傾向があると思う。コーエン兄弟もそう思っているのであれば、人種問題だけにテーマを絞ってみても良かったのではと思う。
ここからは、ネタバレに繋がるので未見の方は注意してもらえればと思うが、疑問点が多く出てくる映画だった。何故、父親と義理妹は、母親の殺害を計画した?単なる、男女の感情?お金?何故、ジュリアン・ムーアの二役は必要だった?何故、黒人は白人の住宅街に引っ越してきた?そして、何故、黒人の住居を認めた?等々・・・。いつもは、鑑賞中には、疑問点は出てこないのだが、本作は、次から次へと疑問点が出てきた。私の理解度の乏しさを踏まえても、もう少し、説明があれば良かったのかなと思う。
(kenya)
原題:「SUBURBICON」
監督・脚本:ジョージ・クルーニー
脚本:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン
撮影:ロバート・エルスウィット
出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザック、ノア・ジューブ、グレン・フレシュラー、アレックス・ハッセル、ゲイリー・バサラバ、ジャック・コンレイ、カリマー・ウェストブルック、トニー・エスピノサ、リース・バーク他