願っていた通りに早起きできたので、
9月18日に行なわれた第11レースで
自分なりに観たことをメモにして
忘れないうちに書き留めます。
スタート:
強い引き潮の中、
スタートライン風下側のマークへのレイラインの
ずいぶん風下で返したETNZの、高さと、ラインへの距離は、
結果としてベストの位置だった。
スピットヒルにとって、
あの位置で、あの高さで返されては、
時間的にも位置的にも、
風下に入り込むことは困難だっただろう。
ETNZのファインプレーを褒めるべきだと思う。
ちなみに9月19日の第12レースでは、
ETNZが返した位置がラインに近すぎ、
スピードコントロールするために
風上に上らざるを得ず、
その隙にスピットヒルが風下に潜り込んで立場が逆転した。
しかしそれは、観る者がこの様子を俯瞰で観ることができるから
解説できることであって、
強い潮の中、すぐ30ktも出るような艇に乗って、
瞬時、瞬時に、難しい判断を迫られ続けている2隻のクルーたちに対して、
おいらが何か偉そうに言えることではないね。
第1レグ:
ETNZは相手よりも大きいジブを使っているが、
リーチが開き過ぎていて、
リーチング競争でOTUSAに負けていて、
折角スタートで勝ったのにそれを
生かし切れていない。
風下ゲート:
最終アプローチでETNZが失速し、
思ったよりも相手に近づき過ぎたOTUSAは
当初のプランだったろうゲートの右側(風上に向かって)
を回ることができなくなり、
ゲート回航直前でプランを急遽変更して、
ジャイブして左側ゲートを回ることになった。
このマニューバーは、ダガーボードの入れ替え、
ウイングとジブの入れ替え、
ウイング、ジブの引き込みが一気に連続し、
超忙しいクルーワークと超ハードなグラインディングを
クルーに要求することになる。
しかしOTUSAのクルーたちは見事にそれに応え、
見事なマークラウンディングを行なった。
クローズホールドのレグ:
スターボタックの強さを使える右と、
追い潮と有利な風のシフトを使える左と、
それらを使い分けながら、
最終的には左から風上ゲートの右側マークにアプローチする。
そういうプランを両者が獲り合うレグになった。
OTUSAのクローズホールドと、タッキングが
このレースから見違えるようになった。
風上ゲートへの最終アプローチは、
ETNZが、両チームともが狙っていた左からのアプローチをゲットし、
OTUSAは右からのアプローチになった。
ここで左のシフトが入り、
ETNZは30ktのスピードモードでゲート右側のマークに突進。
OTUSAは最後のタックでボトムスピードが10ktという失敗をした上に
ゲートの左側マークへ、20kt台のスピードでしか向かえなかった。
ここで大きな差がついてしまう。
サンフランシスコ湾の引き潮のときは、
ビッグボートシリーズの上マーク回航でも
即ジャイブして向かい潮から逃げるのが常道で、
マニューバリング的に即ジャイブすることはよくないAC72では、
引き潮のときに風上ゲートの左側を回ることは
相当な損になることだろう。
しかしそれでも、上りのレグの最後の局面で
左シフトがなく、またOTUSAのタック失敗がなければ
風上ゲートでの差は10秒以上縮まっていたと思われ、
そうであれば、
そのあとのダウンウインドのスピード差を考えれば、
このレースでETNZが勝てたかどうかは、微妙だ。
もしこのレースをOTUSAが制していれば、
ETNZを精神的に大いに苦しめることにつながり、
このアメリカズカップ自体の流れも大きく変わったはず。
であれば、この第11レースのクローズホールドは、
あるいはTUSAの最後のタックの失敗は、
シリーズ全体の流れの中で
大きな意味を持つことになるかもしれない。
いずれにしても、
素晴らしくレベルの高いマッチレースを
未来から来たようなセーリング艇で繰り広げている
両チームのことが、セーラーとして誇らしい。
もっともっと、この2チームによる、
AC72のレースを見続けたいと願う。