2013年9月20日 サンフランシスコ5日め―その1

2013年09月20日 | 風の旅人日乗


願っていた通りに早起きできたので、
9月18日に行なわれた第11レースで
自分なりに観たことをメモにして
忘れないうちに書き留めます。

スタート:
強い引き潮の中、
スタートライン風下側のマークへのレイラインの
ずいぶん風下で返したETNZの、高さと、ラインへの距離は、
結果としてベストの位置だった。



スピットヒルにとって、
あの位置で、あの高さで返されては、
時間的にも位置的にも、
風下に入り込むことは困難だっただろう。
ETNZのファインプレーを褒めるべきだと思う。

ちなみに9月19日の第12レースでは、
ETNZが返した位置がラインに近すぎ、
スピードコントロールするために
風上に上らざるを得ず、
その隙にスピットヒルが風下に潜り込んで立場が逆転した。

しかしそれは、観る者がこの様子を俯瞰で観ることができるから
解説できることであって、
強い潮の中、すぐ30ktも出るような艇に乗って、
瞬時、瞬時に、難しい判断を迫られ続けている2隻のクルーたちに対して、
おいらが何か偉そうに言えることではないね。


第1レグ:
ETNZは相手よりも大きいジブを使っているが、
リーチが開き過ぎていて、
リーチング競争でOTUSAに負けていて、
折角スタートで勝ったのにそれを
生かし切れていない。



風下ゲート:
最終アプローチでETNZが失速し、
思ったよりも相手に近づき過ぎたOTUSAは
当初のプランだったろうゲートの右側(風上に向かって)
を回ることができなくなり、
ゲート回航直前でプランを急遽変更して、
ジャイブして左側ゲートを回ることになった。

このマニューバーは、ダガーボードの入れ替え、
ウイングとジブの入れ替え、
ウイング、ジブの引き込みが一気に連続し、
超忙しいクルーワークと超ハードなグラインディングを
クルーに要求することになる。

しかしOTUSAのクルーたちは見事にそれに応え、
見事なマークラウンディングを行なった。


クローズホールドのレグ:
スターボタックの強さを使える右と、
追い潮と有利な風のシフトを使える左と、
それらを使い分けながら、
最終的には左から風上ゲートの右側マークにアプローチする。

そういうプランを両者が獲り合うレグになった。

OTUSAのクローズホールドと、タッキングが
このレースから見違えるようになった。

風上ゲートへの最終アプローチは、
ETNZが、両チームともが狙っていた左からのアプローチをゲットし、
OTUSAは右からのアプローチになった。

ここで左のシフトが入り、
ETNZは30ktのスピードモードでゲート右側のマークに突進。
OTUSAは最後のタックでボトムスピードが10ktという失敗をした上に
ゲートの左側マークへ、20kt台のスピードでしか向かえなかった。
ここで大きな差がついてしまう。

サンフランシスコ湾の引き潮のときは、
ビッグボートシリーズの上マーク回航でも
即ジャイブして向かい潮から逃げるのが常道で、
マニューバリング的に即ジャイブすることはよくないAC72では、
引き潮のときに風上ゲートの左側を回ることは
相当な損になることだろう。

しかしそれでも、上りのレグの最後の局面で
左シフトがなく、またOTUSAのタック失敗がなければ
風上ゲートでの差は10秒以上縮まっていたと思われ、
そうであれば、
そのあとのダウンウインドのスピード差を考えれば、
このレースでETNZが勝てたかどうかは、微妙だ。

もしこのレースをOTUSAが制していれば、
ETNZを精神的に大いに苦しめることにつながり、
このアメリカズカップ自体の流れも大きく変わったはず。

であれば、この第11レースのクローズホールドは、
あるいはTUSAの最後のタックの失敗は、
シリーズ全体の流れの中で
大きな意味を持つことになるかもしれない。

いずれにしても、
素晴らしくレベルの高いマッチレースを
未来から来たようなセーリング艇で繰り広げている
両チームのことが、セーラーとして誇らしい。



もっともっと、この2チームによる、
AC72のレースを見続けたいと願う。




2013年9月19日 サンフランシスコ4日め―その3

2013年09月20日 | 風の旅人日乗
さて、本日3回めの更新は、
真面目に、今日行なわれた第12レースについて。



オラクルチームUSAのクローズホールドが変わった。

昨日の第11レースは負けたものの、
風上ゲート直前での位置の取り合いによっては、
どちらに軍配が上がるか、分からないような試合だった

オラクルのタッキングが、ものすごく向上した。

ラフィングから風位を越えてすぐ、
風上側のハルを浮かせ、
つまり、モノハルのロールタックのような艇の動きで、
2つのハルが水に浸かっている時間を最短にして、
タック後のボトムスピードを高いまま維持し、
スピードの回復を早められるようになった。

補足説明すると、ボトムスピードとは、
タッキングするとヨットのスピードが落ちますが、
そのタッキング中の最低スピードのこと。

ちなみに、ヨットレースで言う「いいタック」とは、
このボトムスピードを高いまま維持し、
その後、本来のスピードまで
素早く回復させるタックのこと。

そしてさらに、今日の第12レースでは、
オラクルは、クローズホールドでのフォイリングを実現させた。



しかも、
チームニュージーランドよりも早いタイミングで。



今日のオラクルが発表したコメントによると、
オラクルの艇の場合、
クローズホールドでフォイリングさせると、
風上への角度は5度悪くなるのだという。
しかし、VMG(風上に向かっての実効スピード)は良くなるのだという。



ヨットレースだから、
戦術的に、相手艇に対して高さを保持しなければならない場面がある。
だから、いつもフォイリングさせるわけにはいかない。

モノハル艇でのレースのクローズホールドと同じように、
ハイモードとスピードモードを使い分ける必要がある。

しかし、モノハル艇の場合、
そのモード切り替えによるスピード差は、
長さが72ftサイズのレース艇でも、1ktはない。

しかしAC72の場合、2つのモードによるスピード差は、
今日のオラクルを観る限り、5kt以上もある。

例えばヘッダーを見つけ、
それに向かって行くことを決め、
スピードモードに変えたとき、
ハイモードに比べて5ktものスピード差で
そのヘッダーに向かえることになる。

フォイリングモス以外の
モノハル艇でのレースしか知らない者に取っては、
革命的ですらある。

こんなにスピード差のあるモードを、
戦術、戦略と融合させて
思いのままに使い分けることができれば、
そのヨットは、とんでもない兵器を手に入れたことになる。

しかもそのスピードでヘッダーに入り、タッキングすると、
タッキングのロスも少なくなる。

今日、オラクルが見せた最高のタッキングでは、
ボトムスピードは、なんと17kt以上だった。

眠れる獅子が、起きたのか。



現実的には、
オラクルがこのあと一度も負けずに7連勝することは
神懸かりに近いことかもしれない。

しかし、防衛艇の驚異的な進化によって、
第34回アメリカズカップは、
スポーツイベントとしてとても見応えのある内容になってきた。


というところで、突然ですが、
明日こそは寝坊しないように、今日はもう寝ます。
ではね、おやすみなさい。

サンフランシスコは、今夜もきれいな月が出ています。
明日はどんな試合が観られるんでしょうね。



2013年9月19日 サンフランシスコ4日め―その2

2013年09月20日 | 風の旅人日乗
午前11時前に、ピア27のアメリカズカップ・ビレッジに到着。

本日のエピソードその1も、
申し訳ないが、またメディアセンターの男子トイレの話題。

トイレに入ると、
鏡の前で、自分の頭にスプレーを噴射しまくっている男がいて、ギョッとする。
それを周りの男子ジャーナリストや男子カメラマンがはやし立てている。
男子トイレじゅう、すごく香しい匂いで満ちている。


アメリカズカップのYouTube中継で、レースとレースの間に、
その日の陸上解説者の話を司会しているこの人、いますよね?



今朝のメディアセンターの男子トイレの人気者はこの人でした。

日本にいるときに動画を観ていて、
つまらないことだけど、ずっと気になっていたことがある。
サンフランシスコ湾の強い風に当たっているはずなのに、
なぜこの人の髪は動かないのだろう?

今朝理由が分かりました。
あれだけ髪をスプレーで固めたら、動きようがない。

ちなみに上の写真は本日の動画のスクリーンショットで、
2レースめが延期になったほどのサンフランシスコ湾の強風は
画面の左から右に吹いているのだが、
この人の跳ねた髪は、風上に向かって立っている。
恐るべし。



メイン会場で、クルーたちを紹介する
ドックアウトショーが行なわれている最中、
チームニュージーランドのコーチ、ジョーイ・アレンが、
オラクルの艇建造チームのボスの、マイク・ターナーと、
桟橋で話し込んでいた。

同じニュージーランド人で、古い友達同士とは言え、
この決戦の雰囲気の中では、まずいんじゃないの、ジョーイ?

出港しようとしているチームニュージーランドの
チェイスボートのクルーたちが、ジョーイを大声で呼ぶが気が付かない。



やっと気が付きボートに乗ったけど、
同じくコーチのロッド・デイビスから、
えらく怒られていた。



現役を引退してコーチになっても、
ジョーイの愛すべきキャラクターは変わってないみたい。


チームニュージーランドのサポート艇のエンジンはヤマハ。
オラクルチームUSAのサポート艇のエンジンはヤンマー。
チームニュージーランドのメインスポンサーのひとつはトヨタ。
オラクルチームUSAのメインスポンサーのひとつはヤンマー。
サプライヤーのひとつはパナソニック。
オラクルチームUSAのサプライヤーであり、
かつアメリカズカップのオフィシャルカーになっているのは、レクサス。

そのレクサスのブースで、レクサスブランドのロードレーサーを発見。



いいなあ。





さすがレクサス、分かってらっしゃる
サドル以外はホイールもコンポーネントも、
日本が誇るシマノのデュラエース。

世界に誇る日本製品、あるいは企業名があふれるアメリカズカップの現場にあって
日本セーリング界の要人だけがいなかった
という、ちょっと悲しい話を朝からしてしまいました。
反省。



もっとこの面白いレースを観たいから、
頑張って欲しいぞ、オラクルチームUSA。

今の状態まで進化したオラクルチームUSAであれば、
マッチポイントまで追い込まれていなければ、
アメリカズカップを防衛できたかもしれない。
でも、「たられば」の世界に近い。


再びメディアセンターから歩いて、
ピア39とフィッシャーマンズワーフを通り抜けて
フォートメイスンの丘に向かう。



スタート海面に向かう<アオテアロア>が、
クローズホールドのレグをゆっくり走りながら
コースを丁寧にチェックしている。
ヨットレースの基本に忠実だね。



ここがおいらの本日の観戦場所。
椅子を持ってきて座っている
お年寄りかこども連れのすぐ後ろが
視界確保がほぼ約束される安心な立ち位置。
そのお年寄りや少年少女の前に立とうとする人は、
さすがにいないから。

近くに、アメリカズカップのアプリをダウンロードした
スマホを持っている人がいると、さらに好ましい。
風とか潮とかの中継解説を聞かせてくれるし、
親切な人になると、
艇の上の様子の中継画面を見せてくれさえする。


スタートして2隻が第1マークを回ったら、
レース艇と一緒に移動して、



みんな2隻と一緒に丘を下り、
風下ゲートが見える位置まで移動する。

2隻が風下ゲートを回って
風上に上り始めたら、



みんなも2隻と一緒にぞろぞろと丘を登って、
風上ゲートが見える位置に移動する。



こんなヨットレース観戦法もあるんだな。




第12レースのエントリー時に、
腕時計の文字を入れて、臨場感のある写真を撮ろうとしたのだけれど、
時間は見えないし、レース艇もよく分からないな。
いいカメラが欲しいぜ。


2013年9月19日 サンフランシスコ4日め―その1

2013年09月20日 | 風の旅人日乗
さあて、いよいよ「その日」かも、の朝が来た。
本日も、サンフランシスコはいい天気。

「その日」かも、なのに、今日も寝坊。
当事者ではないというものの、
緊張感なく、情けないものだ。

なので、早朝に書こうとしていた
昨日のレースのレポート書く時間なく
後回しにして、これからピア27に出かける。

昨日の夕方、
街中の信号機の向こうにに昇ってきた
米国西海岸の、
中秋の名月。



日本列島に昇ってくるのは、
1日あとの日付の、8時間後、になるのかな?

第34回アメリカズカップ最後のレースになるかもしれない
今日の、第12レースの、クルーリスト。

ORACLE TEAM USA Crew List
Skipper: Jimmy Spithill (9),
Tactician: Ben Ainslie (12),
Strategist: Tom Slingsby (10),
Wing trimmer: Kyle Langford (8),
Jib trimmer: Joe Newton (5),
Off-side trimmer: Rome Kirby (4),
Grinders: Shannon Falcone (1),
Joe Spooner (2),
Jono MacBeth (3),
Gillo Nobili (6),
Simeon Tienpont (7)

Emirates Team New Zealand Crew List
Skipper/helmsman: Dean Barker (14),
Tactician: Ray Davies (10),
Wing Trimmer: Glenn Ashby (3),
Trimmer: James Dagg (9),
Bow: Adam Beashel (2),
Pit: Jeremy Lomas (8),
Pedestal 1: Chris Ward (7),
Pedestal 2: Rob Waddell (11),
Pedestal 3: Grant Dalton (6),
Pedestal 4: Chris McAsey (5),
Float/Grinder: Derek Saward (12)

それぞれのカッコ内の数字は、
ヘルメットに書かれている番号。

以前ぼくが、Facebookか何かに、
チームニュージーランドのセーリングチームが
NZ人だけと書いたのは間違っていました。
2人のオーストラリア人も乗っています。

アダム・ビーシェルは、考えてみれば、ずいぶん前から
チームニュージーランドのメンバーだったし、
グレン・アシュビーは、
今回の艇の設計にも深く関わっている。

アシュビーは複数のマルチハル艇で
圧倒的な戦績を持つチャンピオンで、
ウイングを持ち、フォイリングもする
Aクラスカタマランを最も得意な艇種としている。

今回のレースで、
チームニュージーランドの
タッキングやジャイビングなどのマニューバーが
USAよりも長けていたのは(ワッ、もう過去形!)
アシュビーのコーチによるところが
大きいのではないか、と思う。
フォイリングが安定していることにも、
設計開発あたりから貢献しているのではないか、と思う。

アシュビーは、2010年に怪物トライマランで
アメリカズカップにオラクルが勝ったときには、
オラクルのコーチだった。
オラクルはなぜアシュビーを手放したのでしょうね?



2013年9月18日 サンフランシスコ3日め―その3

2013年09月19日 | 風の旅人日乗
スーパーに買い出しに行く途中で
タイ料理屋を見つけ、スーパーをやめにして
夕食はビールとトムヤムクンに変更。

ホテルの部屋に戻るのが遅くなりました。

レポートしたいことはたくさんあるけど、
明日がキウイたちのビッグデイになったら、
そのまま夜はビッグパーティーになるのだろうし、
そうなったら、それになだれ込むのが礼儀というものだろうし、
だとすれば、それに備えて睡眠もとっておかねばならん。
もうすぐ午後10時。おいらとしては、もう寝たい。

その前に、今朝見たことの報告をひとつだけ。

オラクルの話題は
これから先、出る機会が少なくなると思うので
今のうちにオラクルの話題を。


スピットヒルが握るステアリングホイールが、
艇の正面を向いていないことに気づいている人たちは
たくさんいると思います。





では、正面じゃないのなら、
あのホイールは、一体どこを向いているのか。

日本にいるときに動画や静止画を見ながら、
それがとても気になっていたので、
今朝は、それについて調べてきました。

調べて、それが意味があることかどうなのかは
いまのワタクシには分かりません。



うーん、艇が風に振られているので、
なかなかホイールの真後ろに入れない。


ワタクシごとですが、
私は全長110フィートのレーシング・トライマランに乗って
サンフランシスコから横浜までの
太平洋横断スピード記録に挑戦したことがあります。

そのときのフランス人スキッパーに、
「艇のステアリングができない奴は降りてもらう。
サンディエゴからサンフランシスコまでの回航航海の間に腕前をテストする」
と言われました。

ワタクシは、モノハル艇では、大型艇であっても
少々腕に覚えがありましたので、
なんくるないさー、見とってよー、なんて考えておりました。

そのトライマランは、外洋レーシング艇で、
ホイールの前にハードドジャーがあり、
ぶっといウイングマストがあり、
ヘルムスマンからは、
自分が乗っているセンターハルの船首は
まったく見えません。

なので、ステアリングは左右のアウトリガーの船首を見ながら、
になります。
それぞれのアウトリガーは左右に30メートルほど離れています。

そしたらですね、なんとですね、
サンディエゴの桟橋を離れて、
機走であの水路を走って、
までは良かったんですが、
水路から外洋に出て、まわりの目標物がなくなると、
まったくの無風だったというせいもあるんですが、
機走なのに、艇をまっすぐ走らせられなかったんです!

サンディエゴからサンフランシスコまでの
500海里強のあいだにコツをつかんで、
サンフランシスコに着くまでには、
目標物なしに、セーリングでも
ステアリングできるようになりましたが、
そのコツをつかむまでは、人知れずひそかに泣きました。
大型マルチハルのステアリングの難しさを、
初めて知ったことでした。


ということで、
その話と繋がるかどうかは微妙ですが、
スピットヒルは艇のどこに向いてステアリングして
いるのか。



これが恐らくこれが、ホイールを真後ろから撮ったアングル。
ワタクシの目と、ホイールを結ぶ線の延長線上にあるものは!

なるほど、と言うべきか。
やはり、と言うべきか、
オラクルのステアリングホイールは、
ウイングを前方向に支えるフォアステイ方向を向いているようです。

そのステイには、ジブが貼られます。
そうかなるほど、と、モノハルのレース艇のヘルムスマンも
納得するのではないでしょうか。
ステアリングしているときの視線の基本線はその辺りにあって、
そこを軸に、風上の海面を見たり、
マストの計器を見たり、しますよね。

スピットヒルと親しい人は、
次に会ったときに聞いてみて、あとで教えて下さい。
理由は、それで合っているのか。

では、レポートがレースまでまったく行き着きませんでしたが、
今日はもう寝ます。
スミマセン。

本日の第11レースも、とてもいいレースでした。
キウイたちは、緊張を強いられる中、
とても落ち着いて試合に集中していました。
今の彼らに付け入る隙を見つけるのは、
相当難しそうだと思ったことでした。


2013年9月18日 サンフランシスコ3日め―その2

2013年09月19日 | 風の旅人日乗


Race12の延期が決まり、
ベースキャンプに帰るチームニュージーランドの<Ao te aroa >。

使えない携帯のカメラでしか撮れないが、
AC72クラスのヨットがサンフランシスコ湾を走るのは、
明日限りかもしれないからね。
松の木の枝の陰に、アルカトラズ。


朝、セントフランシスヨットクラブにほど近いホテルから、
ピア27にあるメディアセンターに歩いて向かう。
昨日はこの時間から風がビュービュー吹きつのって
寒いくらいだったのに、
今日は風もなく、ポカポカでTシャツ1枚の陽気。



道すがら、向こうから歩いて来た
ある種の匂いがする背の高いおじさんに
なにか意味ありげな視線を送られたような気がして、
それで初めて気が付いたのだけど、
慌てて日本でスーツケースに詰め込み、
寝坊して慌てて着て来た本日のTシャツは紫色。
ヘリーハンセンの、結構気に入っているやつ。

あの、ですね、紫色を着るのは、
例の方向に生きる男たちのお互いのサイン、
ってのは、まだ生きているんでしょうか?

いまは年老いて気にもしてなかったけど、
バリバリの頃はその種の人たちに言い寄って来られる
タイプだったからな、おいら。

そんなことはないとは思うんだけど、
本場サンフランシスコで、
今更そのような面倒に巻き込まれるのも嫌なので、
上からフリースのベストを着て、紫色を隠す。
暑い。

そんなこんなで、45分弱かけて
メディアセンターに到着。

まずはと向かったメディアセンターのトイレで、
この日最初の感激。



用を足している目の前に
故郷、北九州市小倉の誇り、TOTOのロゴが。
こんなところで会えるとは…。
頑張ってるなあ。

知らない人は知らないでしょうが、
TOTOは小倉ゆかりの企業。

こどもの頃は、
おばあちゃんの家の近くにあった
東洋陶器(現TOTO)本社工場の敷地に
うずたかく積まれていた出荷前の便器を見ながら遊んだものだ。
あまり大したものを見ながら遊んでないな。

あ、まずい。
こちらは夜の18時半近く。
そろそろ夕飯の買い出しにスーパーに行かなければ
閉まってしまう。
世紀のアメリカズカップ第11レースのレポートは
その後回しにして、行って来ます。




2013年9月18日 サンフランシスコ3日め―その1

2013年09月19日 | 風の旅人日乗
朝8時半、快晴。
本日の風速予想、14~17kt。
34th America's Cup Final
レース11&12は予定通り行なわれそう。

本日は満月で、潮も大きく、潮流も速い。
昨日のように引き潮の時間帯になると
風と潮流がぶつかり合って、波が悪くなる。

ところで、
9月18日は、アメリカズカップの歴史の中で、
ちょっと特別な日なんだそうです。

どう特別な日かというと、
過去3回も、アメリカズカップの勝者が
9月18日に決定したのだそうです。
そういう日は、他にはないそうです。



33回のうちの3回だけど、
南半球の夏に開催された3回を除くと
30回のうちの3回という確率に上がるけど、
それだって、十分の一の確率に過ぎないけど、
しかも、なんら科学的根拠もないけど、

なんか、ドキドキしてきませんか?

2013年9月17日 サンフランシスコ2日め

2013年09月18日 | 風の旅人日乗
朝10時半、ピア27にあるメディアセンター。
レースオフィサーのイアン・マーレーの記者会見のあと、
歩いてピア23まで行き、2隻の到着を待つ。



ボクシングの試合と違って、
現チャンピオンが先に入場。

オラクルは、コードゼロを展開するための
バウスプリットを外している。
外せる構造なんだな。

続いて、エミレーツチームニュージーランドの2号艇、
<アオテアロア>が入場。
アオテアロアとは、
先住民であるマオリの人たちがあの島々のことをさすことば。
直訳すると、白く長い雲。

<アオテアロア>は
コードゼロ用のバウスプリットを外していない。
外せない構造なんだな。




なんだかね、ただ浮いている姿からすでに
ヨットじゃないな。
未来のセーリングマシン。
すでにバウとスターンで点滅しているLEDが、
”未来感”をさらにかき立て、ドキドキしてくる。
たくさんのこどもたちにみせたいなあ、ホント。



オイラもね、ただうっとりと、見とれてしまう。



さあて、分からないことだらけのAC72だけど、
自分の目で見られるところから、
勉強を始めるとしますか。

では、本日は、衆人環視のもと、
隠すことなく全貌をさらしている
ウイングから行きましょう。


まずはチームニュージーランドから。



これはね、強風用のウイングです。
昨日のブログを読んでいただければ分かりますが、
私は昨日、チームニュージーランドのシェッドで
彼らが持っている2枚のウイングを見比べ、
こちらが強風用、あちらが微風用と推理をしたのだけれど、
強風が予想される本日、選ばれたウイングは、
えへへ、おいらの推理通りのほう。



どこに違いがあるか。
面積の違いを見たわけではありません。
クラスルールでは、ウイングの面積は
260㎡以下、255㎡以上、とされていて、
その2%の違いなど、
ワタクシの目で見分けられるものではありません。
違いは、それ以外のところに
三つほどあるんです。
出し惜しみします。


そして本日初めてじっくり見る
オラクルのUSA17と、



そのウイング。



2隻のウイングを、
ピア23の先端と根元を行ったり来たりしながら見比べる。

エリアの分布が違うのはよく分かりますよね。

あと、2隻とも、
ウイングを結構後傾させているのが、目を引く。

ウイングのスペックは、
海面からの高さではなく、全長で規定されているので、
少しでも高さを稼ごうとすると直立させることになるが、
そうはなっていない。

艇のヘルムバランスなのかな。
それとも、
ジェット機の主翼が後傾しているのと同じ理由なのかな。

分からないことだらけのヨットだぞ。
分からなくて悔しいけど、面白い。
面白いけど、分からないのが悔しい。

分からないなりに本日見つけたことをひとつ、
このブログの読者の皆様にだけ紹介します。

ウイング前側のエレメント1のORACLEのロゴの後ろと、
後半部のエレメント2の前端との間に、
透明なフィルムを張った細長いセクションがあるでしょう?



あそこはねえ、縦方向に8分割されているんだけど、
それぞれが自分で勝手にパタパタ動くんですよ。
つまり、セーリング中は
あの部分が風下側に開いて、
エレメント1とエレメント2の間に風の通り道を
積極的に作る。

それを見て思い出したのは、
着陸前のボーイング747型機のフラップのせり出し方。



主翼との間も含め、
それぞれにすごく大きな段差を付けて
隙間をわざと空けているでしょ?



これと同じことを狙っているのかな?

ソフトセールで言えば、
ジブとメインの間のスロットが
2枚のセール(翼)の揚抗比を相乗的に高めるという、あれ?

防衛チーム艇の開発には
ボーイング社からもスタッフが投入されているというし、な。

ニュージーランドのウイングには、このパーツは見られない。




オラクルがチームニュージーランドに追いかけられて
こんな奥まで入ってきた!

のではなく、
クルーがピア27に集まった観衆の前で紹介され、
頑張って戦って来いよセレモニーが行なわれている間、
2隻はこんなふうに、ピア27と23の間の水面で
ブイに係留されて待っています。

本日はマリーナ・グリーンの前の水辺に行って
待機したけど、風が上がり過ぎて、
午後1時31分に、延期が決定。

明日以降は、天気は通常に戻り、
風も弱くなる傾向だという。

風が弱くなれば、
2隻のパフォーマンスが
これまでのレース通りであると仮定すれば、
エミレーツチームニュージーランドに利がある。

オラクルチームUSAが、
どこまで巻き返してくるか、興味深いところ。

第9レース、第10レースを見る限り、
オラクルのクローズホールドは
それまでとは別物のように良くなり、
タックやジャイブも、
チームニュージーランドにほとんど引けを取らなくなってきた。

明日も楽しみ。












2013年9月16日サンフランシスコ初日ーその2

2013年09月17日 | 風の旅人日乗
カメラのバッテリーの充電器と
画像をパソコンに取り込むためのケーブルを
絶対に忘れないように、と
丁寧にパッキングして持ってきたのに、
カメラを忘れてきちゃったみたい。
残念。

ま、仕方ない。
自分で撮らなくても、
高名で優秀なカメラマンの撮った写真を
あとで見て楽しめばいいことだし。

今回大事なことは、
光景を自分の目に焼き付けて、
それを文字にして、
できるだけ多くの日本の人たちに伝えることだ

ホテルを出て、アメリカズカップビレッジに向かう途中、
ふとサンフランシスコ湾に目をやると、
お、防衛艇がセーリングしている。



見えないでしょ?
予期せずバスに邪魔されたけど、
撮影した人はちゃんと大きなウイングが見えたのに、
バスの屋根の上に引っかかっている小枝かな、
レンズのゴミかな、くらいにしか見えないですね。
これが、
3年前の最新型携帯電話の内蔵カメラの限界みたい。

ピア27にあるメディアセンターに行く途中、
さっきのオラクルが帰ってきた。



ウイングが、見上げるような高さにそそり立っていたんだけど、
これもちっこくしか写らないですね。
人間の目の画像処理能力ってすごいな。
ある程度勝手に大きさ関係をデフォルメしているのかな。

ちなみに、AC72の両サイドに写っているスーパーヨット2隻は、
どちらもラリー・エリソン所有艇。
右側のセーリングヨットの名前は、日本語で「あさひ」。




メディアセンター内の、記者会見場。
コソコソとスカイプしているおじさんがひとり写っているけど、
意図して写したわけではなく、なかなかどいてくれなかったので。

いつもはレース後、
両艇のスキッパーとかタクティシャンだけが
この壇上に座るのだけれど、
勝者が決まった日は、全クルーが破顔一笑の顔で居並ぶ。
それはいつになるのかな? 明日かな。


ランチを食べながら
友人とちょっと仕事の話をしたキウイレストラン。



ピア29の根元にあって、
ワイヘキアイランド・ヨットクラブ、という名前。
NZ産ビーフとラム、コロマンデル半島から送られてくる牡蠣などが
メニューにある。

ワイヘキ島はワイナリーで有名な島だから、
NZワインをたくさん揃えているのかと思ったら、
アメリカズカップイベントのオフィシャルワインが
地元ナパバレー・ワインということで、
アメリカズカップ期間中は、
このエリアでは、それ以外は置くことができないらしい。

このレストランのバーは、
レース終了後は毎日、
ニュージーランド人応援団で
立錐の余地がないほどになるという。
明日、その実態を体験見学に行こう。


その後、寄り道しながら
チームニュージーランドのベースに向かう。
そこに向かう途中の、道ばたやパブで会った人たち。
サザンスパーのマーク・ハウザー
今回はアルテミスにいたトム・シュナッケンバーグ
プラダのかつてのナビゲーター、あ、名前失念。
チームニュージーランドのセールデザイナー、バーンズ。

コンパウンドの入り口で、
今回おいでと言ってくれた人物が警備員に説明に来るのを待っていたら、
これから帰ろうとするグラント・ダルトンが出てきた。
「3日前に、今後すべてのレースが終わるまで、
ビジネス関係者以外一切立ち入らせないこと、
って厳命したんだけどな、
あいつ(今回おいでと言ってくれたヒト)聞いてなかったな」
と笑いながら怒る。
すでに勝者の余裕を漂わせている。

コンパウンドの中で、
明日のレースに向けてセッティングが終わった今回のレース艇
<アオテアロア>はさすがに見ることはできなかったが、
2枚あるウイングをじっくりと見せてもらう。
コンディションによって使い分けるという
2枚の違いがどこにあるか、発見!
じぇじぇじぇ!
なるほどね。
明日、どちらを立てるかで、
自分の「なるほどね。」の推理が当たっているかどうかが分かる。
楽しみ。

レース観戦場所はどこがいいかについて、
前の週にサンフランシスコで観戦してきた
セールファーストの後藤社長に、
フォートメイスンの丘の上か、
その前に出ている桟橋が穴場ですよ、
って日本を出る前に教わった。

こちらの関係者にも聞いてみると、
そこもいいけど、その隣のマリーナ・グリーンには
大型モニターが2台あるので、
レース艇が下ゲートのほうに行っている間は
そのモニターで観ることができるし、
それ以外は迫力の生で観ることができるよ、という意見。

明日は午前10時にピア23の先端まで行って
レース艇が一旦ブイに係留してそろい踏みするのを見て、
メデャイセンターに行ってレース前記者会見を見て、
それからどこかで昼食を買うか食べるかして、
フォートメイスンかマリーナ・グリーンに行ってレースを見て、
それからまたカップビレッジに戻って記者会見を見て、
場合によってはチームニュージーランドのコンパウンドでの
どんちゃん優勝パーティーを見学&体験、
ということになるのかな。

それぞれのレグが歩いて20~30分の、
微妙にウォーキングディスタンス内なので、
レース日が増えれば増えるほど、健康になれそう。

明日の風予報は強風。
サンフランシスコ湾内の風のピークは
午後3時過ぎから4時半くらいまでの時間帯なので、
第1レースは恐らくスタートできそう、
第2レースは風の吹き上がりが速いか遅いか次第で微妙、
というのが、チームニュージーランドの関係者の予想。






2013年9月16日サンフランシスコ初日ーその1

2013年09月17日 | 風の旅人日乗
サンフランシスコ初日。
まずはなぜかニュージーランド方面の話題から。

ニュージーランドでは今回のアメリカズカップのレースが中継されている。
ニュージーランドとサンフランシスコの時差の関係で、
アメリカズカップのレースはNZ時間の朝8時15分に始まる。

ニュージーランド人は、
日曜日は必ず教会に行くという人が多く、
日曜日にヨットレースを開催すると、
そのために参加艇が集まらないので、
週末のレースは日曜日ではなく、土曜日に行なうほどだ。

ぼくの友人であるニュージーランド人家族が行く教会には、
毎日曜日に200人のひとたちが礼拝に来るそうだ。
9月15日の日曜日、いつも通りに彼が教会に行ったら
「10人しか来てなくて、驚いたぜ」、とのこと。
敬虔なクリスチャンが多いとされるニュージーランドだが
日曜礼拝よりアメリカズカップのTV観戦を選ぶクリスチャンが、
19倍も多いということが判明してしまった。

ニュージーランド時間のその日曜日の、
みんなが「ドキン」としたあの第8レースの場面で、



ニュージーランドが奇跡的に転覆しなかったのは
教会をサボってテレビにかじりついていた
敬虔なニュージーランド人クリスチャンたちの祈りが
通じたのかもしれないな。


第34回アメリカズカップの
手に汗を握った9月15日の第10レースを観た後の、
各アメリカズカップ関係者のコメント。

“We have now seen more passing in this Cup than any other dating back to the first defense in 1870.”
- Gary Jobson, NBC commentator.
知らない人が多くなってしまったが、
ゲーリー・ジョブソンは、
ニュースTV局CNNを創業したテッド・ターナーが
アメリカズカップを防衛したときの
若きタクティシャン。

“Yesterday’s race 10 in the 34th America’s Cup match between Team New Zealand and ORACLE TEAM USA will, according to many observers, go down in the history books as one of the greatest sailboat races of all time.”
– New Zealand Herald Tuesday Sept 17.

“I knew these boats were great for fleet racing but not for match racing. But match racing when they are equal like today is amazing. It will be difficult to go back.”
– Bruno Troublé, instigator of the Louis Vuitton Cup.
知らない人が多くなってしまったが、
ブルーノ・テリューブレは、
ボールペンとライターのビック男爵が
アメリカズカップに挑戦したときの
若きヘルムスマン。

“If you didn’t enjoy [Sunday’s] racing then I think you should probably find another sport.”
- Dean Barker, skipper Emirates Team New Zealand

2013年9月16日 America's Cupレポート作成のためのメモー5 race#9&10

2013年09月16日 | 風の旅人日乗
レース#9
OTUSAのポールトゥーフィニッシュ
オラクル、クローズでもフォイリングし始めた
タックが素晴らしくよくなった
8レースのうちに、NZをキャッチアップした

レース#10
ここでNZが負けると流れが変わるというプレッシャーがかかったディーン



Race 9 Performance Data
Course: 5 Legs/10.02 nautical miles
Elapsed Time: OTUSA – 21:53, ETNZ – 22:40
Delta: OTUSA +:47
Total distance sailed: OTUSA – 11.3 NM, ETNZ – 11.5 NM
Average Speed: OTUSA – 31.63 knots (36 mph), ETNZ – 31.32 knots (36 mph)
Top Speed: OTUSA – 42.52 knots (49 mph), ETNZ – 42.54 knots (49 mph)
Windspeed: Average – 17.6 knots, Peak – 20.8 knots
Number of Tacks/Jibes: OTUSA – 8/6, ETNZ – 8/8

Race 10 Performance Data
Course: 5 Legs/10.02 nautical miles
Elapsed Time: ETNZ – 22:00, OTUSA – 22:16
Delta: ETNZ +:16
Total distance sailed: ETNZ – 11.8 NM, OTUSA – 11.7 NM
Average Speed: ETNZ – 32.25 knots (37 mph), OTUSA – 31.76 knots (36 mph)
Top Speed: ETNZ – 43.01 knots (49 mph), OTUSA – 44.98 knots (52 mph)
Windspeed: Average – 18.3 knots, Peak – 22.3 knots
Number of Tacks/Jibes: ETNZ – 7/7, OTUSA – 7/7

Upcoming America’s Cup Schedule
Monday, Sept. 16: No racing scheduled
Tuesday, Sept. 17: Race 11 (1:15 pm PT), Race 12 (2:15 pm PT)
Wednesday, Sept. 18: Race 13* (1:15 pm PT), Race 14* (2:15 pm PT)
Thursday, Sept. 19: Race 15* (1:15 pm PT), Race 16* (2:15 pm PT)

2013年9月15日 ドキン! America's Cup race #8

2013年09月15日 | 風の旅人日乗
月曜日のランチの場所詳細について、
サンフランシスコにいる
ニュージーランド人の友人に電話。

あの瞬間は、



チームニュージーランドのベースキャンプで
テレビを観ていたみんなで凍りついたのだそう。



そうだろうなあ、
おいらも蒸し暑い葉山で、凍ったぜ。

ナクラとかのカタマランディンギーだったら、
あそこまで行ったらほぼ間違いなく、横転だ。



でもおかげで、
少なくとも1レースだけは現地で見られそう。

あとは明日の台風。
成田まで行けるかな。

Race 8 Performance Data

Course: 5 Legs/10.16 nautical miles
Elapsed Time: OTUSA – 23:09, ETNZ – 24:01
Delta: OTUSA +:52
Total distance sailed: OTUSA – 11.4 NM, ETNZ – 11.7 NM
Average Speed: OTUSA – 29.90 knots (34 mph), ETNZ – 29.32 knots (34 mph)
Top Speed: OTUSA – 44.58 knots (51 mph), ETNZ – 47.02 knots (54 mph)
Windspeed: Average – 16.6 knots, Peak – 19.6 knots
Number of Tacks/Jibes: OTUSA – 8/8, ETNZ – 9/7

2013年9月13日 America's Cupレポート作成のためのメモ-4 Race6&7

2013年09月13日 | 風の旅人日乗
今週中にまとめなければいけない
America's Cup速報レポート作成のための、
自分用の記録&ワンポイントメモ、その4。

第6レース、第7レースが行なわれる日の朝、
オラクルチームUSAのCEOラッセル・クーツが
Facebookに投稿。

As Dennis Conner once told me..."the start is important but the finish is more important!"
Today we need to finish better!

2ボートトレーニングでは
Bボートのステアリングをラッセルが握ることもある。
今のところ選手を除いて現場を最も近いところから見ている男の発言だ。

オラクルはフィニッシュラインを挑戦艇よりも前で
走り抜けるための解決策を見出したのか。
あるいは、混迷に陥っているのか。
どちらとも取れる発言。

もし、噂どおりに重要ポジションのメンバーチェンジが
今日のレースでもしあるなら、
それは、艇には手の施しようがなく、
「空気を一新する」「気持ちを入れ替える」
みたいな、ことしか方法がないということで、
それは、事態が逼迫しているというサインになる。


メンバーチェンジがあった!
ボートに乗り込むクルーの中に、
ベン・エインズリーの後ろ姿がある。
オリンピックの生きた伝説、英国の若き英雄は、
防衛チームの救世主になれるか。
このオリンピックの英雄は、
アメリカズカップでは、13年間
日向に出る機会に恵まれなかった。
スキッパーになったイギリスチームが
途中撤退してしまう不運もあった。

今日、9月12日(現地時間)が
ベン・エインズリーの初めてのアメリカズカップ参加になる。

第5レースの下ゲートで、
フォイリング・タックをコールしたのはジョン・コステキだ。
その失敗が、今日のメンバーチェンジに関連しているのか…
しかし、もし、モスクラスのハイレベルの選手のように
フォイリング・タックをあの場面で成功させていたら、
はたしてあのレースの結果は変わっていただろうか?



Race 6 Performance Data

Course: 5 Legs/10.14 nautical miles
Elapsed Time: ETNZ – 31:39, OTUSA – 32:26
Delta: ETNZ +:47
Total distance sailed: ETNZ – 12.3 NM, OTUSA – 12.3 NM
Average Speed: ETNZ – 23.43 knots (27 mph), OTUSA – 22.91 knots (26 mph)
Top Speed: ETNZ – 38.55 knots (44 mph), OTUSA – 40.21 knots (46 mph)
Windspeed: Average – 11.6 knots, Peak – 13.4 knots
Number of Tacks/Jibes: ETNZ – 14/8, OTUSA – 15/7



Race 7 Performance Data

Course: 5 Legs/10.14 nautical miles
Elapsed Time: ETNZ – 24:48, OTUSA – 25:54
Delta: ETNZ +1:06
Total distance sailed: ETNZ – 11.6 NM, OTUSA – 12.0 NM
Average Speed: ETNZ – 28.32 knots (32 mph), OTUSA – 27.86 knots (32 mph)
Top Speed: ETNZ – 44.73 knots (51 mph), OTUSA – 41.00 knots (47 mph)
Windspeed: Average – 16.3 knots, Peak – 17.8 knots
Number of Tacks/Jibes: ETNZ – 7/7, OTUSA – 10/8

Upcoming America’s Cup Schedule
Saturday, Sept. 14: Race 8 (1:15 pm PT), Race 9 (2:15 pm PT)
Sunday, Sept. 15: Race 10 (1:15 pm PT), Race 11* (2:15 pm PT)
Monday, Sept. 16: Race 12* (1:15 pm PT)
Tuesday, Sept. 17: Race 13* (1:15 pm PT), Race 14* (2:15 pm PT)
(*If necessary)

2013年9月12日 ランチは予約済みということで。

2013年09月12日 | 風の旅人日乗
サンフランシスコに行く予定を
キャンセルするかしないか…
とても悩んでいるので、
先に現地に入っているニュージーランド人の友人と
メールでやり取り。

ま、キャンセルしないで、来るほうがいいと思うよ。
この先、風が上がり過ぎて延期になる日もあるだろうし、
オラクルも、あと何勝かはするだろうしね…。

そうかなあ。
でも、
関係者としてチームニュージーランドの
ベースキャンプの中にいる彼は、
ちゃんと、場の雰囲気を読んで言ってるんだろうしな。

ところで、なに?
「オラクルも、あと何勝かはするだろうし」だと?
彼の中ではやはり、
今回アメリカズカップが再びニュージーランドに行くことは
すでに決定済みのことのようだ。
何かその根拠になるような情報を
つかんでいるのかもしれない。

取りあえず、まずは先に、
予定通りの飛行機に乗れば着く日の、
ランチの予約を彼にお願いした。

その日までの間には、
日本で、あれや、これやの、
片付けなければいけない仕事が滞っており、
気持ちがまだ太平洋の向こうに
まったく向いてない。




2013年9月11日 America's Cupレポート作成のためのメモ-3 Race#5

2013年09月11日 | 風の旅人日乗
今週中にまとめなければいけない
America's Cup速報レポート作成のための、
自分用の記録&ワンポイントメモ、その3。

第5レース



1、OTUSAスピットヒル、スタートで相手をブロックしてコントロールするも、
自身の加速のタイミング少し遅れる。

2、ETNZマーク#1への走り、
ダガーボードをすべて降ろしていない。
トラブル?
わざとスピードコントロール?

3、2ndレグでのOTUSAのダウンウインド、圧倒的にいい。

4、下マーク回航で、OTUSAリードしているのに、
即タック。そして失速。意味分からず。
何か壊れた?
解説のケンリードもゲーリージョブソンも混乱。

5、OTUSA下マークで即タックしてまで取った右を
最初のミートで簡単に渡す。
だったらなおさら、即タックの理由不可解。

6、潮が弱い右エッジに出てETNA左に返す。
そしてリードを奪い、広げる。

7、クローズホールドのレグの前半ずっとOTUSAの走りおかしく、
後半回復するも、上マークでの差1:17。

8、動画画面に正確なカレントが出ていて、
レースが分かりやすい。

9、2下での差1:14、フィニッシュでの差1:05。
最終2レグでOTUSAが差を詰めていることからすると、
装備の何かが壊れたということではなさそう。

10、となると、1下での即タックの理由はなおさら何故?

11、OTUSA、レース#6の実施延期を要求。
1度しかない延期申請の要求を使ってしまったOTUSA。
何が起きたのか?

12、スピットヒルは第6レース延期申請について、
ほかにもいろいろミスはあったけど、
クローズホールドで敵わない、なんとかしなきゃ、
みたいなコメント。

13、第3レースでもクローズホールドのレグで逆転されたが、
あれは戦術ミスかアンラッキー。
でも今日第5レースの場合のはちょっと違う。

14、きわどく風下側ハルを水面にタッチさせて
VMGとスピードを両立させている時間が多いETNZに比べて、
第5レースのOTUSAのクローズホールドは、
飛んだり、ヒールしたり、失速したりで、
安定していない印象。


34th America’s Cup Standings (first to 9 points wins)

Emirates Team New Zealand – 4
ORACLE TEAM USA – 0
Race 5 Performance Data

Course: 5 Legs/10.27 nautical miles
Elapsed Time: ETNZ – 22:45, OTUSA – 23:50
Delta: ETNZ +1:05
Total distance sailed: ETNZ – 11.4 NM, OTUSA – 11.5 NM
Average Speed: ETNZ – 30.21 knots (35 mph), OTUSA – 29.17 knots (33 mph)
Top Speed: ETNZ – 46.94 knots (54 mph), OTUSA – 44.93 knots (52 mph)
Windspeed: Average – 20 knots, Peak – 24.1 knots