一度読んだ本は二度は読まない。読まなくなった文庫本は捨てることができるが、それでも保存しておきたい本もある。しかし、全集などは本棚を占領するがなかなか捨てられない。そんな折、近所に
「古本三冠王」なる古本買取店がオープンした。
我が家の本棚には、昭和46年発行の「吉川英治選集」30巻が、何十年も黙ったまま鎮座ましましている。たぶん半分も読んでいないだろうし、これからも読む気はない。そこで、古本三冠王に立ち寄り査定してもらった。結果は一冊100円、全部で3,000円である。それも仕方ないと、売る気になっていた。
そんなとき、上野の
Book Off のお店の新聞の折り込みチラシが入った。大きな文字で「ケータイ買取金額UP」に目が行く。我が家にはデーター消去が面倒で、捨てられずにいた2個のケータイが眠っている。そこで、ケータイと共に数冊残っていた文庫本を持って出かけた。
13冊のうち、1冊はカバーがないので値が付かないが、残りの12冊は、30円×5冊+10円×7冊=220円也。ごみとして捨てるよりいいかと、売ることにした。
そしてケータイは100円×2個=200円。このケータイは再利用するのではなく、金属を取り出した後、潰して壊すという。データが取り出される心配はないということで、これも整理できるので、合わせて420円也を手にした。
更に自宅に来て、古本の出張買取もしてくれるというので、無料の出張査定をお願いした。吉川英治選集の他にも、きり絵作家の滝平二郎氏のきりえ画集が3冊あり、そのすべてに氏のサインが入っている。
40年前の1974年に彼の展覧会に行き、その時に目の前でサインしてもらったものである。前述の
古本三冠王での査定では、1冊800円~1600円で、サインはプラス査定になるといわれていた。
我が家に来たBook Offの査定は、なんと吉川英治選集が一冊10円、滝平二郎のきりえ画集も100円と言ったような気がする。古本三冠王とのあまりの違いに値段も忘れた。丁重にお断りしてお帰りいただいたが、「よくあることですから、ご期待に添えなくて申し訳ありません」と丁寧な挨拶で引き返してくれた。
すぐに、古本三冠王に電話して、吉川英治選集をはじめとする、数冊の本を売りたいので取りに来てくれるようお願いした。蔵書というにはお粗末だが、愛着のある本もある。しかし、これから何年生きるかわからない。この際だから、終活のつもりで思い切って値の付く本は手放すことにしよう。そう決心して泣く泣く手放したのが、次の本である。
100円にも満たない値を付けられた滝平二郎氏の「きりえ画集」は、サイン入りという付加価値もあり、3冊で1万円の値が付いた。少しの躊躇もあったが、これも手放すことにしよう。
他にも数冊の料理本などを含めて、全部で1万6千円。ちょっと寂しい気もするが、すっきりした気分にもなった。時には思い切った断捨離もいいものだと実感した。