◇紫陽花◇
今日は朝から雨
村は霧に隠れ
窓辺のアジサイを見て過ごす
妻はタンスをかきまわし
見たこともない服を
着てみたり脱いでみたり
ラジオをかければ
特に嬉しいことも
悲しいこともないニュース
こんな一日を
涙ぐむほど慕わしく
思い出す日が 来ないように
心のどこかがつぶやいている
-星野富弘さん-
早、今年も半分が過ぎた。突然襲ったあの大惨事から時が止まったような日々だったが、時の流れは止まることを知らない。移ろう季節は夏へと向かって走り出し、悲しいニュースをかき消すような連日の猛暑。
京浜東北線の王子駅から上中里駅に向かう、飛鳥山公園を背にした線路脇の小径を飛鳥の小径と呼び、そこには1300株のアジサイが咲き誇る。午後に降り出した雨に蒸し暑さは増し、雨が似合うアジサイも少々疲れ気味か。
そんななんでもない6月最後の一日が過ぎるとき、それを涙ぐましいほど慕わしく思うわけではないが、飛鳥の小径を歩いていると、今ここにいることが慕わしく、あの悪夢のような日が再び来ないことを、心のどこかでつぶやいている。テレビ画面には連日地震速報が流れ、原発事故が収束へ向かう気配は感じられない。それでも原発を推し進めようとする愚かさは、あの事故を他人事と思うからに他ならない。目先の利害にとらわれていれば、いつか自分の身に降りかかり、あの日を思い出す日が必ず来ることも知らないで。。。