歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

ある年の暮れ

2018年12月31日 | 日記
日が暮れるように年が暮れる。

昨日一昨日と家の大掃除をしていた。

まめな方ではないけれど、掃除は結構好きだ。

まめじゃないからこそ、

やる時は全部ひっくり返して全てを磨くところから始めたい。

しかしそんなことをしていては年内に掃除が終わらない。

何をするのでも妥協点というのがミソらしい。

基本的にそういう計算ができないから、

ひっくり返すだけひっくり返して収集がつかなくなる。

しかし今年は一人じゃない。



5、6年ぶりに夫と二人で年末年始を過ごすことになった。

毎年年末が近づくと夫は大型のカウントダウンフェスの仕事で1週間以上家を空ける。

帰ってくるのは1日の夜か2日の朝。

それがここにきてチームの人たちは皆いい年になり、

そろそろ家族とゆっくり年越ししたいという話になったらしい。



昨日、夫は昼過ぎに起きてきたかと思うと、

ソファーに沈み込んで借りてきた『キングダム』を読みはじめた。

隣で人が大掃除しているのによく他人事みたいな顔ができるものだと、

恨めしく思いながらもその無関心ぶりに感心してしまった。

実家の隣の寺は和尚さんを先頭に男勢が率先して掃除をしていたが、

私の生活圏においてあれは奇跡的な光景だったのかもしれないと今更思う。

しかし夫はきっとシンプルに何も考えていないだけだ。

目の前にある『キングダム』を読みたいという欲求だけで動いている。

そのため下手したら私が掃除をしていることすら気づいていないかもしれない。

そこでうまいこと言って参加させようと思い立った。



まず、試しに除湿機の埃まみれのフィルターを夫の前に置いて、

気が向いたら埃を取ってくれと言ってしばらく放置しておいた。

するとキリがいいのか漫画を切り上げ、

おもむろにマスクを装着したかと思うと手際よく埃を除去し始めた。

丁寧かつ効率的にあれよあれよと埃を落としていく。

ん?なんか想像と違う、というか確実に私よりデキる。

掃除の才能あるじゃーんと思いながら自分のゾーンに集中して一時、

夫の気配が消えていることに気づき居間を覗くと、

またソファーに沈み込んで漫画を読んでいた。

この人はいったい・・・。



頼めば文句を言わずやってくれるが自分では考えないようだ。

目の前にあることだけを無心にやるだけ。

突然松井棒をつくったり掃除の才能を見せつけたかと思えば、

またすぐ漫画に還っていく。

もしかして私の想像以上に『キングダム』を読みたいだけのか。



それから何度か同じようなことを繰り返して夕方頃、

「君はご飯食べないの?」と聞いてきた。

そういえば1日何も食べてない。

いつも何かに集中するとご飯のことが頭からすっぽり無くなってしまう。

夫は私が忙しないのでお腹の限界まで言わないでいたらしい。

いろいろひっくるめて天秤にかければそれなりにお互い様なのでしょうね。



いよいよ今日は大晦日。

夜はみかんでも食べながら、

若き日本の宝那須川天心とメイウェザーの世紀の対戦を見る予定。

何もなかったような、いろいろあったような2018年、さようなら。

皆様よいお年をお迎えください。


いつかの波状雲

今日の夕暮れ1

今日の夕暮れ2
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カウボーイビバップ!Netfrixで実写化!

2018年12月22日 | 映画
だ、だ、大好きなアニメシリーズ『カウボーイビバップ』だが、

以前にもキアヌ・リーブスでの実写化が噂されていた。

しかしそんな話はいつの間にやら自然消滅しており、

1年半位前に新たに実写化決定のニュースが飛び込んできた時は驚いた。

結局それ以来音沙汰がなかったのでまたかとか思っていたら、

つい先月Netfrixでの実写化決定のニュースが入ってきてついに本格始動か!というところなのである。



ーーーー
アニメーション制作会社「サンライズ」のオリジナル作品「カウボーイビバップ」の実写ドラマシリーズが、Netflixで配信されることが決定した。

“スペース・ウエスタン”を題材にした「カウボーイビバップ」は、未来の太陽系を舞台にした物語。賞金のかかった犯罪者を追って宇宙を飛び回る賞金稼ぎ(通称:カウボーイ)の主人公と、彼の個性的な宇宙船の乗組員が、多額の損害賠償を抱えながらも、危機的状況を乗り越えていくさまを描き出す。1998年にテレビ放送され、2001年には劇場版「COWBOY BEBOP 天国の扉」が公開。98年の第3回アニメーション神戸で作品賞(テレビ部門)、00年の日本SF大会で星雲賞(メディア部門)を受賞するなど、高評価を獲得してきた。

実写ドラマシリーズは、Netflixと、「プリズン・ブレイク」などの人気テレビシリーズを数多く手がけきてきた製作会社Tomorrow Studiosが共同製作。コンサルタントとして、アニメ版「カウボーイビバップ」の監督を務めた渡辺信一郎が参加し、全10エピソードで構成される予定だ。

なお、キャストや配信時期に関しては、現在未発表となっている。
映画.com ニュースより)
ーーーー



コンサルタントとして参加するという『カウボーイビバップ』の渡辺信一郎監督だが、

本当にすごい方で最近ではかの話題作『ブレードランナー2049』の短編前日譚シリーズ全3部作のうちの一つ、

アニメ『ブレードランナー ブラックアウト2022』を作ったその人なのである。

実にハイクオリティのアニメでさすが渡辺監督だと感激したのだった。





好きな漫画やアニメの実写化というのはいつも複雑なものである。

しかしそれは主に出来上がったものを見て複雑になるのであって、

個人的には実写化の製作に関してはかなりテンションが上がる。

『Ghost In The Shell』の一件で懲りたはずなのにもう忘れてしまった。

今などすでに「Netfrixに契約せねば」というあっち側の策略にどっぷりはまっている始末である。



そういえば先日スピルバーグの話題作『レディープレイヤー1』を見たのだけれど、

エイチの倉庫にカウボーイビバップの主人公スパイクの愛機ソードフィッシュⅡに似た戦闘機が置かれていた。

ハリウッド映画に金田のバイクが登場するのはわかるが(だいぶ違ったけど)、

ソードフィッシュⅡはかなりマニアックなので気づいた時は驚いた。

アメリカでは結構人気あるのかしら。



とにかくどんな作品ができるのか楽しみに待っておこう。




バーン!
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歓喜の歌

2018年12月18日 | 演芸
私のライフスタイルを鑑みると、

「18時に六本木で待ち合わせ」だなんていったい何事かといぶかしむ。

しかし昨日は数ヶ月前から楽しみにしていた大事な日、

普段よりシックにきめて夜の六本木に繰り出した。

目的地はEX THEATER ROPPONNGIだ。

なんでも5年前にできた劇場で夢の音響装置がつまっているらしい。



会場に着くとのぼりが冷たい風にたなびいている。

きたきた、これよこれ!

まだ開場5分前なのでシアターの前には人が溢れている。

年齢層は少し高めだ。

端の方で誰かと喋っているウド鈴木を見つけて夫と目があった。

いよいよ待ちに待った「志の輔らくご in EX 2018」の開演だ。

先行発売の初日に応募してチケットが当たった時はひとりで飛び跳ねた。







シアター内に入ると著名人から送られたスタンド花がたくさん並んでいた。

桑田佳祐とか徹子の部屋とか龍角散とかウド鈴木もあったな。

我らが山寺宏一(スパイク・スピーゲル)さんのもあってテンションが上がる。





はやる気持ちのまま席に着くが開演まで30分もある。

夫は体が大きいので席に座っているのが苦痛らしく一人でどっかに行ってしまった。

席番号がB1の2列目だったのですごい近い席なのではと期待していたが、

2階席の前から2番目で観客1000人の中ではまぁまぁ後ろの方だった。

幸い小さな会場なのでどこからでも肉眼で志の輔師匠の表情が見えそうだ。

もうなんでもいいのさ、だって30分後には本物が見れるのだから。



開演が近くなるとお囃子が鳴り響き、

しばらく続いたかと思うと幕がゆっくりと上がった。

舞台の上に置かれたマイクと座布団、

それだけで指笛を鳴らしたくなるくらいかっこいい(できないけど)。

袖からゆらゆらと現れた志の輔師匠に拍手喝采が鳴り響き、

会場中の視線が彼の一挙手一投足に集まる中話し始めた。

昨日はパルコ公演全5日の4日目ですでに3日連続でしゃべり続けているためか、

声が少し掠れており少し心配だったが話し始めればなんのその。

「前3日は今日のための練習で今日がピークです。明日はもう余韻でやるだけ。」

なんて調子のいいことを言って会場を温める。



演目は「歓喜の歌」と「踊るファックス」だ。

どちらも志の輔のオリジナルで、どちらも有名な演目なので私もYouTubeで何度か聞いたことがある。

「落語は生がいい」なんてよく聞くけど、確かに映像で見るのとは全然違う。

マイクから漏れる息遣い、着物の擦れる音、観客席の温度、

扇子をパチンと閉じた時の空気が弾ける音、息を飲む観客席。

じんわりと前のめりになっているのに気づいて、椅子に深く座り直す。



「踊るファックス」はファックスをめぐるドタバタ劇だ。

吉田薬局のおやじはクリスマスセールのチラシを書いて至急印刷所に送らなければならないのだが、

そこに送られてきた一通の間違いファックスによってそれどころではなくなってしまう。

男に振られた女まみこが「あなたのせいでこの世ともお別れする」うんぬん言っている。

まみこに何か起きてファックスの履歴から警察に怪しまれるのは困るということで、

まみこに間違えてますよとファックスを送り返すのだが事態は思わぬ方向へ。

最後の物語の回収が見事で、会場は笑いの渦に包まれる。

バカバカしくて、あったかくて、元気が出る、もう最高。

私なんかはもう涙が出るくらい笑ったのだった。



休憩を15分挟んで「歓喜の歌」、これは大晦日の公民館が舞台だ。

公民館職員の主任と加藤は、

大晦日の同じ時間に似たような名前のママさんコーラスの公演会をダブルブッキングしていた事に前日気づく。

ママさんコーラスをなめていた2人は事の重大さを理解しておらず、

コーラスグループのリーダーたちに軽々しく時間をずらすか合同でやるしかないと提案するのだが、

コーラスメンバーが自分のためだけでなく子供や家族、町内のために歌っているという事、

ママさん一人一人が煩雑な日々の中、大変な思いで歌う時間をつくり一生懸命取り組んでいるという事を知り心を改める。

結局合同でする事になったわけだが、本番当日は主任と加藤も公演会を成功させるために奮闘する。



「歓喜の歌」は笑いあり感動ありの大作で、2008年に映画化もされている。

志の輔師匠がさげてお辞儀すると会場ははち切れんばかりの拍手に包まれた。

心のどの部分にはまるのかわからないけれど、ぴったりはまってジワジワ満たされていく。

なんていい暮れだろう。

拍手の中でかすかに聞こえてくるベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章、

幸せな余韻の中でおぼろげな意識を舞台に寄せているといきなり幕が上がった。

と同時に大音量の歌声が響いた。

そこにいたのはママさんコーラスと思しきコーラス隊。

圧巻の歌声、あまりに突然の出来事で胸がつまった。

「ママさんコーラスだ」

その時の感情を感動という言葉で片付けていいのかわからない。

喉の奥の方がぎゅっと縮まって、鼻の付け根がツンとする。

隣のデカブツは訳も分からず号泣したらしい。

曲が終わり指揮者がこちらに振り返るとまさかの志の輔師匠!

まったく、最高なんだから。

この企画は3年限定で今年が最後だったらしい。

何も知らなかったけれど、最後の最後に滑り込めて本当に良かった。




欲しかった手ぬぐい、最後の1枚だった!危ない危ない。
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シジュウカラの気持ち

2018年12月14日 | 日記
最近、週に一回路上花屋の手伝いをしている。

寒い時期に入り前任のおばさんが音を上げたらしく、

回り回って私が駆り出されることになった。

本当に困っていたので期間限定で手伝うことになったのだ。

最初は路上花屋なんて売り上げがあるのだろうかと訝しでいたが、

5年続けた信用もあってか年配のお客さんが続々と買いにくる。

おじいさんやおばあさんと世間話をするのは平和で楽しい。

寒いのだけはどうにもならないけれど、

お客さんが焼き芋や温かい飲み物を差し入れてくれるのはありがたい。



お年寄りは行動時間が早いので、

お昼をすぎるとお客さんはぱったり来なくなる。

そういうときは決まってぼーっとしている。

昨日はそこにシジュウカラが飛んできた。

シジュウカラは私の目の先でせわしなく動いていた。

目的は不明だが、コンクリートの上を縦横無尽に歩き続けるのだ。

じっと見ていると、そのシジュウカラの動きがやけに規則正しくリズミカルで、

なんだか一人でおかしくなってしまった。

この鳥は自分が「トリ」だとも「シジュウカラ」だとも思っていないんだよな。

改めて考えると、当たり前のことも不思議に思えてくる。

一人称すら存在しないのだろう。



シジュウカラは人間の生活圏の外側にいるのでイメージしにくいが犬猫ならどうだろう。

猫はきっと「吾輩は猫である」だなんて思っていないが、

犬はもしかしたら「おいらは人間だ」くらいは思っているかもしれないな〜。



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ハサミ男

2018年12月03日 | 
ハサミ男と聞いて最初に連想するのは映画『シザーハンズ』だ。

白塗りのジョニーデップはいつも大きなハサミをチョキンチョキンさせて悲しそうな顔をしている。

その印象が強いせいか、いきなりハサミ男と言われるとコミカルなイメージを拭えない。

『ハサミ男』も『殺戮にいたる病』同様有名なミステリ小説らしい。

以下ネタバレになるので読んでいない人は絶対に読まないように。





『ハサミ男』

殊能将之 著
講談社ノベルス 1999年(講談社文庫 2002年)



物語はいきなりハサミ男と思われる人物の語りで始まる。

ハサミ男とは女子高生連続殺人事件の犯人の呼び名であり、被害者の遺体の首にはハサミが突き刺さっていた。

ハサミ男は3人目の標的を16歳の少女樽宮由紀子に定め身辺調査を進めていた。

彼女の家の近くで彼女の帰りを待ち伏せていたある日、あまりに帰りが遅いのでハサミ男は諦めて帰ることにした。

夜9時過ぎ、道の途中にある公園で足を止めると違和感を覚え奥に足を進める。

するとそこにはなんと首にハサミが突き刺さり絶命している樽宮由紀子がいた。

「わたしはすっかり混乱していた。わたしは樽宮由紀子を殺していない。

しかし、樽宮由紀子はハサミ男に殺されている。これはいったい、どういうことだろうか。」



物語はハサミ男の語りと、目黒西署刑事課の刑事たちの捜査状況が交互に描かれている。

ハサミ男と目黒西署刑事課の面々は違う方向から3人目の殺人事件の真犯人を追っていく。

偽ハサミ男の正体とは、本物のハサミ男の運命はいかに?



『ハサミ男』は第13回メフィスト賞を受賞し、殊能将之のデビュー作となった。

私はミステリと呼ばれるジャンルについて詳しくないので本格ミステリとか新本格派とかいわれてもよくわからないが、

著者がかなりのミステリファンであるということはわかった。

そのためか、題材は新しいのだけど全体の空気感は古き良き推理小説という感じ。

作者の殊能将之さんは若くして亡くなってしまったので、作品数は少ない。



発想は面白いけれど叙述ミステリとしてはどうなのだろう。

最後まで飽きることなく読むことができたが、想像を超えるような面白さはなかった。

『殺戮にいたる病』を読んだすぐ後だったので、非常に疑り深くなっておりそれがよくなかったのかもしれない。

いつもより頭が冴えていたのか、序章を読んだ時点で犯人像がはっきりしてしまった。

というのもハサミ男の人物像があまりに曖昧で読み進められなかったので、その一点について熟慮してしまったのだ。

語っている人物がどういう人なのかがイメージできないと、景色も心情もイメージできない。

しかし何度読んでも一人称が「わたし」で小さな出版社で働いているほっぺたがふっくらした人ということしかわからない。

太った男なのか、あるいは女性かというところまで絞って、改めてタイトルについて考える。

わざわざ『ハサミ男』というタイトルをつけたことからも女性である可能性が高い。

極め付けは、第1章に入り目黒西署刑事課の視点に移った場面で、

遺体発見現場(ハサミ男がいるはずの場所)に女性と太った男がいた時点で答えが出た。

しかし最後まで読むには作者の思惑にはまって読むべきだろうと思いハサミ男を太った男に再設定した。

どうか私の想像を裏切ってくれますようにと願うが、やはり「ハサミ男が女性だった」以上の衝撃は用意されていなかった。



アイディアは奇抜なのでもし最後まで騙されて読むことができれば最高に面白かったのではないかと思う。

また叙述トリックの衝撃にばかり捉われなければ、他の題材も盛りだくさんなので十分楽しめるだろう。

死に取り憑かれ繰り返し自殺を試みるハサミ男ともう一つの人格「医師」のキャラクター性。

また殺人犯が犯人を追うという推理小説も珍しいに違いない。

大雑把に述べると衝撃はないがそれなりに面白かったというところに落ち着く。

個人的には本物のハサミ男の殺人の動機を知りたかったな〜。
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