たんぽぽのわがまま映画批評No.8
『ソーシャル・ネットワーク』アメリカ/2010
監督:デビッド・フィンチャー
脚本:アーロン・ソーキン
製作総指揮:ケビン・スペイシー、アーロン・ソーキン
原作:ベン・メズリック
音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョセフ・マッゼロ、ルーニー・マーラ、アーミー・ハマー、マックス・ミンゲラ
2010年の超話題映画が今月の25日にやっとビデオレンタル開始。
さっそく昨日借りてきて観たわけだ。
知る所によると、この映画は海外の2010年映画ランキングや各評論家、各紙の評価を総なめにしたらしい。
受賞とノミネートに関しては多すぎるのでここでは記載しない。
私がこの映画に興味を持った最初のきっかけは反感であった。
2010年は話題作がたくさんあった。
2009年の最後に世界初となる3D映画『アバター』が封を切り、2010年はじめからアメリカ映画界が盛り上がった。
なかでも『インセプション』、『トイ・ストーリー3』に対する注目度はすごかった。
個人的には人間の「潜在意識」の問題に挑戦したクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』を高く評価している。
ちなみに『トイ・ストーリー3』はまだ観ていない。
『アバター』後の3D旋風に対する懐疑心もあり、観る側としてはテーマの面白さを追求したかったのだと思う。
『インセプション』の話をすると長くなるので、ここまでにしとこう。
とにかく日本で『インセプション』の衝撃に浸っていたころ、海外ではいち早く『ソーシャル・ネットワーク』が公開され、それをしのいで高評価を受けていた。
つまりここで私は、「『インセプション』より面白い?そんなわけあるかい。」という反感にも似た気持ちを抱くわけだ。
それからである。
今回制作スタッフに関していつもより多めに記載した。
というのもこの作品制作にあたっては、どの分野においても非常に興味深いからである。
まず監督は鬼才デビッド・フィンチャー。
『セブン』、『ファイト・クラブ』は最高である。
2008年には『ベンジャミン・バトン』という一風変わった作品で注目を集め、今回『ソーシャル・ネットワーク』で更なる高評価を受けることになった。
個人的に注目している監督の一人である。
そして、原作と脚本。
これは実際にFacebookをつくったハーバード大学学生の実話である。
しかもFacebookは2003年につくられたものであり、非常に新しい話題である。
しかし、あまりにも非常識な展開なのでどこまでが本当でどこからが脚色なのかと疑ってしまう。
一応映画の最後で創作的部分が多少なりともあることが明示されていた。
実際のところ、脚本のソーキンがマーク・ザッカーバーグに取材を申し込んだが断られたという話もある。
また原作段階では著者であるベン・メズリックもマーク、エドゥアルドに取材を申し込んだが拒絶されたという。
意外なのは、映画に関してエドゥアルドが監修として参加しているということである。
つまり絶対の真実でもなく、絶対の脚色でもない。
まぁノンフィクションでいえば当たり前なことではあると思うけど、この映画はその頃合いがちょうどいいようだ。
マークは衣装や彼の役を演じたジェシー・アイゼンバーグに関しては評価したという。
とりわけFacebook側との関係がどうということはないらしい。
そして、製作総指揮になぜかケビン・スペイシー。
特にこの映画に関する彼の情報は持っていないが、驚いたので一応。
それから、それからなんといっても音楽。
やはりいい映画は音楽がいいのだと再確認した。
いや音楽がいいなんてむしろずるい。
音楽がいいと一種のトランスとまではいかないが、音楽に身を乗せて観てしまう。
そのため作品のテーマや映像や脚本という部分に対する冷静な判断が難しい。
つまりいい音楽というのは、使い様によっては作品を殺してしまうということである。
前に書いた『ハングオーバー』がまさにそうである。
音楽良ければ全てよし!みたいな。
しかし、今回の『ソーシャル・ネットワーク』は素直によかった。
映像を、ストーリーを裏から際立たせる。
そのため、作品に対する感情移入も助ける。
とすでにいろいろ書きすぎたな。
まだまだ書き足りないのだけども。
マーク・ザッカーバーグもいうように彼役のジェシー・アイゼンバーグの演技はとても印象に残った。
天才であるが故、どこか変わっている感じがとてもうまくでていた。
無愛想で生粋のオタク、性格も少々ねじ曲がっているといったところか。
なんといっても止まる所を知らないマシンガントークがすごい。
次から次へと繰り出される専門用語。
早すぎてついていけなくなる。
終始多くの会話が早口で運ばれ、映画全体のスピード感を助長する。
映画冒頭で、マークとその彼女エリカによってテーブルを挟んで向かい合い行われる痴話喧嘩の早さたるや。
あの挿入はもっていかれる。
この映画は世界最大のソーシャル・ネットワーク「Facebook」を創ったハーバード大学学生マーク・ザッカーバーグの実の話である。
Facabookを愛するあまり、周りの環境がせわしなく変わっていく様は少しだけ切ない。
Facebookに対する純粋な愛情とビジネスの折り合いが難しい。
エドゥアルドとの友情が崩れていく過程は物語を引き立たせるが、なんだか辛いものがある。
多くを語らないマーク・ザッカーバーグの真の意図は何も分からない。
でも天才が故に周りに理解されないという苦悩もあったのかもしれない。
印象といてはアイディアをパクるとかそういう次元の話ではないように思う。
もっと高い次元の話だ。
スピード感と奇抜な主人公に、とにかくわくわくさせられる。
最近観た映画では心に残る方だったと思う。