何となく借りてきて、何となく観た映画が2本とも父親と息子の話だった。
昨日のこと。
私は女だから男同士の距離感や思いについてはよく分からない。
でも今回の映画は2本とも父親と息子の話でなければならなかったと思う。
ロバート・ダウニーJR.とロバート・デュバルが初共演を果たした『ジャッジ 裁かれる判事(原題:The Judge)』。
そして名優ウィリアム・H・メイシー初監督作品『君が生きた証(原題:RUDDERLESS)』。
2本ともハンカチなしでは観れない映画だ。
映画について昔から私の中に一つの定義がある。
それは単純に「緊張感とリアリティが揃うと映画は面白い」というものだ。
サスペンスや社会派、真面目なヒューマンドラマには欠かせない。
今回の2本はまさにその条件が揃った映画といえよう。
勘違いしてはいけないのは、これが面白い映画の絶対条件というわけではないということ。
コメディやSF、ファンタジーに求めるものはまた違ったりもする。
以下ネタバレになるので要注意。
まず『ジャッジ 裁かれる判事』。
都会で働く息子はエリート弁護士、勝つためには手段を選ばない。
ある日母の訃報が届き疎遠にしていた故郷インディアナへと帰ることになる。
故郷の町で裁判官をしている父は頑固で傲慢で真面目な男。
2人の間には埋めることの出来ない大きな溝があった。
そして母の葬儀の日にある事件が起きる。
その事件の容疑者にされた父と弁護をすることになった息子。
この映画の凄いところは、ことごとく現実的なことだ。
裁判の行方は決してドラマチックでなく、真実というものがそこまで重視されない。
裁判とどう向き合うか、父とどう向き合うかという人間ドラマなのだ。
正義という言葉はあまり好きではない。
星条旗もあまり好きではない。
劇中、星条旗が意味深げにはためく場面が安っぽくて少し残念だった。
それでも全体的には締まりのある渋い映画だと思う。
ラストシーンでBon Iverの曲が流れたのには驚いた。
次に『君が生きた証』。
ある大学で起きた銃乱射事件で息子を亡くした父親の物語。
会社を辞め一人荒んだ生活を送る彼の下に別れた妻がやってきて、音楽好きだった息子の遺品を置いていく。
そこで妻が言った言葉が印象的だった。
「私には手が出せない領域よ」という感じだったか、父の影響を思わせる言葉だった。
遺品の中には息子が生前録音した自作の曲と歌詞が書かれたノート、そしてギターがあった。
音楽を通じて人と出会い息子と向き合うことで、止まった時間が進み始める。
後半、物語が加速していくところで度肝を抜かれる。
想像もしなかった展開に私自身頭を抱えた。
ストーリーもさることながら、劇中に流れる歌が胸に沁みる。
全体を通して漂っている優しさと寂しさと悲しさがとてもいい。
2016年あまり映画を観れていないけれど、今のところ薦めたい映画2016(2016年に観た映画という意味で)ベスト1だな。
父と息子の物語。
いいね、憧れるけどきっと男同士にしか分からない何かがあるんだろうね。