歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

グーグルマップと小道

2021年10月22日 | 日記
東京都の中でなにかと後回しにされていそうな私の住む町。

23区外の被害妄想か。

でも私はこの町が好きだ。

余白がある。

昼間からおじさんたちが公園でたむろしている姿は衝撃的だった。

なんせ横浜のハイソな住宅街から引っ越してきたもので。

未だにこの町の隙間に感動するし嬉しくなる。





行政は案外しっかりしていて、ゴミの問題には厳しかったりする。

専用のゴミ袋は10枚で700円以上、

コンポストや生ごみ減量化容器の購入費を補助してくれるし、

ゴミカレンダーが各家庭に配布されている。

毎月市報が届くから私みたいな人間でもこんなことを知っている。

行政が個人に届く感覚がある。



今月の15日に届いた市報には新型コロナのワクチン接種について書かれていた。

9月の募集は一瞬で定員になり10月もダメかと思っていたら、いくらか余裕があるというのだ。

しかも来月からファイザーの供給量が減るからファイザーを受けたい人は今のうちだという。

受けるならファイザーと決めていたから駆け込みで予約した。

市報様様だ。



比較的予約しやすかったのは、市の端っこにある聞きなれない名前の病院だった。

グーグルマップで検索すると自転車で17分。

余裕ー。

自転車で移動できるというのは本当に楽ちんだ。

市内はほとんど平坦なのでどこまでも行ける。

病院まで電車で行く場合最短で40分かかるのに比べると、自転車の利便性は一目瞭然



して昨日ワクチンを打ちに病院へ行ってきたのだ。

知らない町なのでグーグルマップでルートを検索、わからなくなったら都度確認という感じ。

しばらくは市役所通りの広い道を行くのだけど脇道へ入った途端アウェー感が高まる。

家々は妙に冷たく落ち葉が乾いた音を立てて舞っている。

スマホに言われるがまま右折左折を繰り返し、もう自分がどの方角に向かっているのわからない。

なかなか気が抜けない。



しばらく地図通りに進んでいると突然マップのルートを外れた。

おかしいぞ、道なんてなかった。

グラウンドではしゃぐ体操服姿の小学生を横目にうろうろする怪しげな女。

なんとなく気まずい絵面だ。

まさかな、と思いつつグラウンドのフェンスすれすれにある小道へ入ってみた。

人が一人通れるくらいのとても細い道だ。

すると現在位置を示す青い丸がゆっくりルートに戻ってきた。

グーグルマップは暗黙の了解など意に介さず、目的地までの最短ルートを割り出す。

どう考えてもそこは住人しか通らない道で、きっと人に道を聞いたらその道は案内しないだろう。

道端からのびた秋の草が足にパチパチ当たる。

帰ったらひっつき虫でもついてるかもな。

道の先では伸びをした白黒の猫が草の生い茂った横の庭へ入って行った。

なんだか穏やかでいい風景。

急に気分が良くなった。

灰色がかって見えてた世界が色づきはじめ、彩度は標準値を超えパステルカラーまで上がる。

よく見れば道沿いの家の洗濯物や庭に放り出された椅子がまたいい雰囲気を醸し出している。

やっぱりいろんな風景を持っているこの町は好きだ。

道を抜けると小川にぶつかった。

グーグルマップはいったい私をどこへ連れて行こうっていうのさ。





余裕をもって出たはずなのに、ワクチンの予約時間ギリギリに病院に到着した。

17分で着くって言ってたのになぜか35分もかかったぞ。

息を切らして正面エントランスの坂を登り病院に入るとワクチン接種待ちの人がたくさんいた。

注意事項に「肩を出しやすい服装で」と書かれていたのでTシャツに冬用の暖かい上着を着て行ったからもう暑くて、

運動後だから心臓はばくばくしているしこんなんで大丈夫かと思ったけど問題なかったみたい。

市の端っこの寂れた病院なのにきちんとシステム化されていて流れるように進み気づくと全て終わっていた。



帰りは友達の誕生日ケーキを買うために違うルートを使った。

少し遠回りだけど大通りを行くルートだから迷うことはない。

家の近くにいいケーキ屋さんを見つけた。

ちょっとしたお土産に良さそうな焼き菓子がたくさんあって嬉しくなった。

そのあと新宿の貸しスペースで久々に会った友人たちとは馬鹿話で盛り上がった。

副反応は腕が少し痛いくらいでかなり軽い方だと思う。

いいんだかわるいんだか。

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顔が見たい

2021年10月15日 | 日記
私は新宿が結構好きだ。

いろんな人がいて歩いているだけで面白い。

人口密度が高いから平日の昼間じゃないとクラクラしてしまうけど。



同じ方向に歩いていく王勢の人。

この先に何があるというのか、そう思いながら私もカラフルな背中を追いかける。

行くところがたくさんあるからこれだけの人がいるはずで、

私はといえば世界堂か東急ハンズ、あとはお世話になっているバーに行く。

あとは友達が働いている百貨店のデパ地下とかね。

うむ、目的地の少ない私ですら4つも行き先があるんだからたいしたもんだ。



オレンジがかった金髪頭にインディゴブルーのセットアップを着た男が前を歩いていた。

中肉中背で大股開きで歩いている。

金髪は肩まで伸びていてライオンみたいだ。

服装はスーツにしてはゆったり着こなすタイプの今時のシルエット。

上と下でどうも雰囲気が違う。

一昔前のギャル男みたいな髪型にはぜひフェイクファーをまといピチピチのジーパンを履いてほしいし、

ビッグシルエットのセットアップには韓国マッシュの小洒落た頭を据えてほしい。

この違う価値観が混在した一人の男に整合性を持たせるとしたら、その鍵は前面にあるということ。

前髪があるのかワンレンになっているのか、面長なのか丸顔なのか、

目は切れ長なのかクリクリなのか、おじさんなのか若者なのか。

髪型が髪型だからチャラ男芸人の慶みたいな顔をイメージしていたけど、村上虹郎みたいな顔ならバッチリだな。

世の中には金髪ロン毛にもゆるだぼビックシルエットにも合う顔があるんだな〜。

こんなに想像力を掻き立てる背中ってあるかな。

靴を見ておけばよかった。

靴には人が出るからね。

一歩前に出て頑張って振り返ってもどうせマスクをしているからどっちにしろ顔は見れない。



本当は整合性なんて無理に持たせなくていい。

ちぐはぐなくらいが愛嬌があって面白い。

そして何もなかったように道は別れその背中とおさらばしたのだった。


わたしの時間 ハイヒール
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プロレスとアカルイミライ

2021年10月09日 | 日記
昨日夜テレビをつけるとNHKで地方プロレスのドキュメンタリーをやっていた。

7年前の再放送だ。

北海道を巡業するレスラーたちをしばらく見ていると、なぜだか涙が出てきた。

理由はよくわからない。

プロレスの力なのか、観客の嬉しそうな顔を見たからか、私の精神状態の問題なのか。

ボクシングやK-1とは違った丸く盛り上がった背中が哀愁を誘う。

なんでプロレスっていいんだろ?

未だにプロレス好きのおじさんは多い。

かつて隆盛を誇った時代を知らない世代からすればおじさんたちの異様なプロレス熱についていけないけど、

密かにプロレスファンに憧れている自分もいる。

数ヶ月前に初めて観戦しに行った時、私は若々しくアクロバティックな試合に見入っていたけれど、

きっとそこじゃないんだろうなとなんとなく感じている。

エンタメ演出と本気試合の境目は難しい。

素人目にはダラダラして見える展開にもストーリーを感じ愛を持てるかどうか、なのかな。

年始にやっていた長瀬智也×宮藤官九郎のドラマ『俺の家の話』は面白かった。

友達の友達にプロレスラーがいたからまた行こうと思う。





ドキュメンタリーを見ながらズビズビやっていたら唐突にTHE BACK HORNの『未来』を聞きたくなった。

高校生の頃黒沢清の『アカルイミライ』に衝撃を受けどっぷりはまったのはこの曲の力もあったと思う。

DVDのレンタル期間中に映画と特典についていた未来のMVを繰り返し見た。

今はスマホでシャザムすればすぐ曲名とアーティスト名がわかるけど、

当時はエンドロールで一時停止して名前をメモしてパソコンで調べてCDを手に入れた。

思い返すと好きなものもやってることもあまり変わってないんだな。

アルバム『イキルサイノウ』は私にとって子ども時代の宝箱とかタイムカプセルみたいなものだ。

蓋を開けると埃をかぶった思春期の感覚が眠っている。

おもちゃを取り出すように曲を聞くとかつて見ていた風景が少しだけ蘇る。

眩しいくらい明るい未来と現状への不満と痛み。

私は鉄格子の中にいて、果てしなく続くコンクリートの地平に無限の可能性を感じていた。

ある意味で世界を信じてたんだよな。

今や日本という国の維持すらままならないとはね、とほほ。

これから日本は確実に沈んでいくらしい。

そういえば小松左京の『日本沈没』のドラマが明日からはじまるらしい。



決壊寸前だった凪タイムが無事決壊し身体中に痛みがあふれるとなんだか安心する。

THE BACK HORNの山田さんって何歳なんだろと思って検索したらなんと昨日は彼の誕生日だった。

うわわーっってちょっとびっくりしたのでありました。


久々に引っ張り出してきた。


いつかの新宿歌舞伎町。
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