とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

桃山 天下人の100年(東京国立博物館)

2020-10-23 23:30:00 | 博物館
東京国立博物館にて、
「桃山 天下人の100年」を鑑賞。

室町幕府の滅亡(1573年)から、
江戸幕府の開府(1603年)までの
安土桃山時代の前後に花開いた
「桃山美術」の名品をたどりつつ、
日本人の美意識を捉える展示である。

「桃山美術」の特徴は、
時代の気風にのって
豪壮かつ華美であることだ。
そのカウンターカルチャーとして、
茶の湯のような侘び寂びを貴ぶ文化も
発展した。

また、航海技術の発展により、
これまでは中国経由で
外国文化に触れていた日本文化が、
西洋の影響を直接的に受けるように
なったことも大きな変化だ。

言ってみれば、社会の急激な変化の中で、
カオス状態から生き残ったものが、
この時代の文化と言えるかもしれない。

そんな中、異彩を放っていたのが、
長谷川等伯の「松林図屏風」だ。
世間の喧騒から離れて、
束の間、この画を眺めていると、
時が止まったような感覚になる。
自分だけが雪の中に存在している寂寥感、
いずれ自分も雪の中に溶けて無に帰る、
そういった普遍的な人間存在の無力さを
表しているようにも思える。
逆に、自分の無力さを自覚することで、
やれることをやるしかないと開き直れる。
人間そのものであったり、
芸術を含めた人間の営みの本質を
突き付ける鋭さもある。
静寂の中に狂気を孕んでいる恐さがある。
時代の流れであった豪壮、華美とは
逆方向の作品だが、
奇をてらった訳ではなく、
生まれるべくして生まれた作品と思える。

いいものはいい、というのが感想だ。



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