最近もロシアの陸上競技が国ぐるみでの薬物使用の疑いにより、オリンピックへの出場停止といった話題があるが、スポーツと薬物の関係を扱う作品だ。
ランス・アームストロングは言わずと知れたツール・ド・フランスの英雄で、癌を克服して、チャンピオンになった人物だ。
作品を見ていて違和感を感じたのは、競技としてのスポーツとエンターテインメントとしてのショーの間にあるものについて、人によって解釈が異なることだ。
観客側は、競技者が純粋にトレーニングを重ね、常人でない領域に達する努力を称えたいと考えているように思うが、競技者側は、常人にはできないパフォーマンスを見せることに主眼を置いており、そこに到達するプロセスを見せる必要はないと考えているのではないか。
人によって考え方が異なるので、単純に言い切ることはできないが、よいパフォーマンスを発揮すること、即ち、競技において勝利するという結果だけに拘りすぎると、そのためには手段を選ばない人間が出てきても不思議ではない。
難しいと思うのは、先天的に肉体的な優位性を持っていることと、後天的にドーピングによって得た肉体的な優位性は、ともに本人自身の努力によらないと思えるところだ。
どんな競技であれ、単純に肉体的な優位性だけで頂点を極めることはできないだろうから、仮に全員がドーピングをしても、結果を出せるかどうかは、何かしらの本人の才能が必要なことは間違いないが。
また、凄いと思ったのは、アームストロングはドーピングの力を借りて、チャンピオンになったが、癌患者の支援といった慈善活動は、まさしくチャンピオンの振る舞いなのである。
イメージをよくして、自分の立場を維持したいだけかもしれないが、結果として、多くの人を勇気付けることになっている。
自分の力を社会に還元したいという思いの強さを感じる。
心の奥底はわからないが、地位が人を作る面があるのかもしれない。
人間の複雑さを考えさせられる作品だ。
点数は、8点(10点満点)。
タイトル:
疑惑のチャンピオン
原題:THE PROGRAM
製作年:2015年
製作国:イギリス
配給:松竹、ロングライド
監督:Stephen Frears
主演:Ben Foster
他出演者:Chris O'Dowd、Guillaume Canet、Jesse Plemons
上映時間:103分