とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

法然と極楽浄土(東京国立博物館)

2024-06-07 23:30:00 | 博物館
東京国立博物館にて開催の「法然と極楽浄土」を鑑賞。

法然(1133年~1212年)は浄土宗の開祖。
平安時代末期の「末法の世」に「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば誰でも死後、救われるという教えを広めた。
寺を造営することで救われようとするこれまでの仏教も認めつつ、庶民からの信仰を集めた。
より多くの人を救いたいという法然の想いの賜物だが、信徒を増やすという意味で、画期的なアイデアだったのだと思う。

現代人からすると、死後ではなくて、今を何とかして欲しいと思うが、現生は自力でどうにもならないなら、来世に救いを求めるかもしれない。
あるいは現生で悪行を働いてでも生き延びてきた人に、来世での救いの道を見出したということだろうか。
いずれにしろ、来世があると信じないと、意味がない教えではある。
そういう意味では、「死」は単なる通過点と割り切れるのか。

これは自分のやるべきことを行えば、来世の心配はないと受け取れる。
自分のやるべきことが、「戦うこと」なら社会は不安定になり、「働くこと」なら社会の安定に寄与するだろう。
一向一揆から、浄土宗を保護した徳川家康の江戸時代の安定の根底にあったものが少し理解できた気がする。



法然寺の立体涅槃群像

建立900年 特別展「中尊寺金色堂」(東京国立博物館)

2024-03-30 23:20:00 | 博物館
東京国立博物館にて、建立900年 特別展「中尊寺金色堂」を鑑賞。



中尊寺金色堂には2015年5月6日に訪れている。
平泉の街がかつて栄えていたことの痕跡もあまりなく、松尾芭蕉の俳句のような感慨を感じたものだ。
「夏草や兵どもが夢の跡」

展示は、8KCGの映像が圧巻だった。
仏像を間近に見れるのも貴重だ。
現地では劣化防止のため、ガラス越しでの拝観だったので、臨場感はこちらの方が上かもしれない。

建立した藤原清衡の不戦の思いの強さが金色堂を生み出したことが伝わる展示だった。

金色堂模型

本阿弥光悦の大宇宙(東京国立博物館)

2024-03-02 23:59:00 | 博物館
東京国立博物館にて、本阿弥光悦の大宇宙を鑑賞。

本阿弥光悦(1558-1637)は戦国時代から江戸時代初期に活躍した、美の総合プロデューサーのような人だ。
本職は、先祖代々の刀剣の鑑定だが、書や陶芸を自ら手掛け、漆芸にも関与していたようである。
過去の芸術作品や文学作品への深い理解と、職人の技術を引き出し、作品として仕上げる能力の高さが真骨頂と言えるだろう。
作品を通して感じるのが、オリジナリティへのこだわりというか、自らの審美眼への自信だ。

千利休の侘び寂びの世界とは違って、じわりと観る者に訴えかけてくるような圧が作品にこもっている感じがする。

面白いのは、二次元の書の世界と、三次元の陶芸や漆芸の両方を行き来していることだ。
頭の中のイメージを作品としてアウトプットするにあたり、手段に囚われない柔軟さがある。

また、日蓮法華宗への信仰心も、形式に囚われない心の源になっていたのかもしれない。
この時代、自らの美意識を貫いて、権力者と対立せず、生き延びることは並大抵のことではなかっただろう。
どういう生き方をした人だったのかにも興味が湧いた。


福山城博物館

2023-09-02 23:59:00 | 博物館
福山城博物館を見学。

天守閣の改修工事中に訪れたが、完成したので、再訪問。


場内は博物館になっており、映像と展示品で、福山城と福山の街の歴史を知ることができる。
福山藩の初代藩主で福山城を築城した水野勝成と、幕末に老中として活躍した阿部正弘にまつわる逸話が面白い。
企画展として、「まといの色々 -武家のオートクチュール-」で武家の衣装を実物で見れたのもよかった。

「一番槍レース」や「火縄銃体験」といったアトラクションもあり、グループで行けば、盛り上がるだろう。

最上階からの眺めもよく、福山の街が一望できる。

南西側


北側


一番の見どころは、「天守北側鉄板張り」だ。
堀がなかった北側の防御力を強化するためのものだったとされている。


新幹線から見えない逆側の壁なので、わざわざ見に行かないといけないのも、価値があるかも。

東福寺展(東京国立博物館)

2023-05-06 23:51:00 | 博物館
東京国立博物館で開催の「特別展 東福寺」を鑑賞。

東福寺と言えば、京都の紅葉の名所として有名である。
その東福寺の寺宝をまとめて紹介する初の展示というのが本展の見所だ。

鍵となる人物が、開山の聖一国師(円爾:1202年-1280年)と絵仏師の吉山明兆(1352年-1431年)だ。
聖一国師とその弟子たちが、中国から持ち帰った品々と、吉山明兆が描いた「五百羅漢図」が寺宝の中心を成す。

本展で、初めて遺偈(ゆいげ)というものを知ることができた。
遺偈とは高僧が臨終に際し、生涯を顧みて、弟子に残す教えだ。
聖一国師は、最後の言葉をしたため終わるや、筆を投げて、息を引き取ったらしい。

本展を見ると、秋に東福寺を訪れたくなる。
歴史の重みを感じながら、訪れてみたいものだ。



実物大で再現された通天橋