とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

「市子」(ネタバレ注意)

2024-09-07 23:59:00 | 映画
無戸籍の問題を取り扱っているが、そこに、貧困と犯罪が絡んでくる。
バブル崩壊後の閉塞感の漂う世界。
市子の視点では、他の選択肢はなかったのだろう。

杉咲花の演技が凄すぎて、別の人が演じると、全く違う話になると思う。
市子が生まれながらに持っている、天使と悪魔の部分を表現していて怖い。
単に不幸を背負って生きていく女性の枠には収まらないものを感じる。
市子の中でめらめらと燃えているものは、生きることへの執着だろうか。

点数は、8点(10点満点)。

タイトル:市子
製作年:2023年
製作国:日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:戸田彬弘
主演:杉咲花
他出演者:若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり
上映時間:128分


「愛に乱暴」(ネタバレ注意)

2024-09-06 23:59:00 | 映画
吉田修一の小説の映画化。
主役の初瀬桃子を江口のりこが演じる。
桃子は、よい妻、よい嫁であろうと努めていることがわかる。
しかし、噛み合っていない不穏な感じが続く。

小泉孝太郎が演じる夫とはぶつからないものの、心が通っている感じはしない。
風吹ジュンが演じる姑からはたまに嫌味を言われるが許容範囲な気がする。

そんな中、夫の不倫が発覚。
桃子の精神は崩壊。
江口のりこの真骨頂。

人間は幸せを求めて生きているはずなのに、そうならないのはなぜなのだろうか。
囚われなくていいものに囚われたり、世界を狭めてその中で苦しんでみたり。
そういうことができること自体が幸せという考え方もできるが、最終的には自己満足の世界だ。

取り壊し中のかつての我が家である「離れ」を眺めながら、「母屋」でアイスキャンデーを食べる桃子。
狂気のラストシーンがサスペンスだった。

点数は、6点(10点満点)。

タイトル:愛に乱暴
製作年:2024年
製作国:日本
配給:東京テアトル
監督:森ガキ侑大
主演:江口のりこ
他出演者:小泉孝太郎、馬場ふみか、水間ロン、青木柚、斉藤陽一郎、梅沢昌代、西本竜樹、堀井新太、岩瀬亮、風吹ジュン
上映時間:105分


「箱男」(ネタバレ注意)

2024-09-01 23:45:00 | 映画
阿部公房が1973年に発表した小説の映画化。
原作小説は読んでいない。

長瀬正敏が演じる「わたし」が困難を乗り越えて、「本物の」箱男になろうとする。
箱男とは段ボールを頭からすっぽりとかぶって、世の中の誰にも認識されずに、世の中を観察する存在。
観察した内容を手記にしたためている。

そんな箱男を攻撃してくる者、犯罪に利用しようとする者、謎の女の出現と観察するだけで生きていけない。

「わたし」は孤独に耐えきれず、女にすがろうとする。
しかし、追いかけない。
何とも中途半端だが、それが男というものなのだろうか。

箱男の行動が現代人のSNSでの行動と似ているのは人間の本質は変わっていないからだ。
実名で生きる世界と匿名の世界。
1970年代は箱男は街に1人だったが、SNSでは箱男の人数制限はない。
都合のよいときに箱男になれる世界が実現している。

点数は、5点(10点満点)。

タイトル:箱男
製作年:2024年
製作国:日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:石井岳龍
主演:永瀬正敏
他出演者:浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、渋川清彦、中村優子、川瀬陽太
上映時間:120分