とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

「悪の偶像」(ネタバレ注意)

2020-06-30 23:59:00 | 映画
久々に映画を観て、鳥肌が立った。
得体の知れないものに出会ってしまった感覚。
「そこまでやる?」と思ってしまう。
これが韓国と日本の許容範囲の基準の違いに起因しているのだとすると、生存本能のレベルの違いに恐怖を感じる。

恐いのは何不自由なく生きているように見える市議会議員のミョンフェが自ら殺人に手を染めて、前に進もうとすることだ。
格差社会の底辺の人が這いあがろうとするのは理解できるが、頂点の人が満足していないことが斬新に感じた。

徹底的な不幸に対して、それを受け容れるか、跳ね返そうとするか、コントラストが凄い。
そこにスパイスとして、チョン・ウヒが演じるリョナの狂気。

生きることは苦行であっても、我が道を行く覚悟があれば、恐いものはないと思わせてくれた。

点数は、9点(10点満点)。

タイトル:悪の偶像
原題:IDOL
製作年:2019年
製作国:韓国
配給:アルバトロス・フィルム
監督:イ・スジン
主演:ハン・ソッキュ、ソル・ギョング
他出演者:チョン・ウヒ、ユ・スンモク、チョ・ビョンギュ、キム・ジョンマン
上映時間:144分


「エジソンズ・ゲーム」(ネタバレ注意)

2020-06-22 23:59:00 | 映画
世紀の大発明をエンターテイメントにする発想が面白い。
ただ映画としては、個々のエピソードの羅列感があり、結局、何だっけという感じもあった。

エジソンの直流とウェスティングハウスの交流のどちらが電力送電の覇権を握るかの戦いだが、
破天荒なエジソンと温厚なウェスティングハウスが対照的だ。

二人の対面シーンが山場だが、通じ合うものが、実際にもあったと思わせる。
テスラも含めて、時代を切り拓いた人たちの犠牲のうえに今の世界がある。
世間的な幸せとは代え難い熱狂に酔う人生も大変なものである。

点数は、6点(10点満点)。

タイトル:エジソンズ・ゲーム
原題:The Current War
製作年:2019年
製作国:アメリカ
配給:KADOKAWA
監督:Alfonso Gomez-Rejon
主演:Benedict Cumberbatch
他出演者:Michael Shannon、Tom Holland、Nicholas Hoult、Katherine Waterston、Tuppence Middleton、Stanley Townsend、Matthew MacFadyen
上映時間:108分


「水曜日が消えた」(ネタバレ注意)

2020-06-20 23:59:00 | 映画
映画上映前の中村倫也の挨拶映像にまず感動。

多重人格をテーマにした作品だが、普通とは違うところがファンタジーであり、希望である。

曜日によって人格が変わってしまう主人公を中村倫也が演じる。
主役になるのは、そのうちの「火曜日」。
中村倫也が七つの人格をめくるめく演じ分けるということを期待していたが、
あくまでも主役は「火曜日」で、他の曜日はほぼ外見のみの登場で、キャラクターから想像するしかない。
ただ、逆にそこが面白かった部分でもある。

多重人格の治療法は、元の人格に他の人格を統合していくことと、何かの本で読んだことがある。
治療としては、それは正しいことなのだろうが、消えていく人格からすると、「死」を意味する。
そこで「火曜日」はどういう選択をするのか、という話だ。

映画だから許される結末なのかもしれないが、いろんな苦労や不便さを抱えて生きていくというのは、
多重人格かどうかにはよらないのが、共感できるところだ。

「日曜日」が普段どんな生活をしているのか、見たかった。

点数は、8点(10点満点)。

タイトル:水曜日が消えた
製作年:2020年
製作国:日本
配給:日活
監督:吉野耕平
主演:中村倫也
他出演者:石橋菜津美、中島歩、休日課長、深川麻衣、きたろう
上映時間:104分


「ルース・エドガー」(ネタバレ注意)

2020-06-05 23:59:00 | 映画
緊急事態宣言が明けて、2ヶ月ぶりの映画鑑賞。
人気作品でなければ、混雑状況は変わっていない模様。
映画館は換気設備も整っており、営業自粛の必要はあったのかとも思える。
もちろん、コロナウィルスに未知の部分があるかもしれず、リスクゼロということはないが。

ルース・エドガーは、戦火のエリトリアに生まれ、7歳でアメリカに渡ってきて、裕福な白人夫婦の養子になったという設定。
幼少期には、アメリカでの生活に馴染めず苦労したようだが、現在は、文武両道の優等生。
バラク・オバマになぞらえられ、誰からも将来を嘱望される存在である。

一方、ルースの通う高校の世界史教師ハリエット・ウィルソンはルースの出自と彼の書いたレポートを結び付けて、
ルースに暴力的な危険性があるとの懸念を母親のエイミーに伝える。
黒人であるウィルソンの指導には、生徒に自分の固定観念を過度に押し付けるところがあり、生徒によく思われていない。
表面的には気にしていない態度を装っているが、ウィルソン自身も自分の指導が生徒に受け容れられていないことを認識している。

黒人差別というアメリカの社会問題の背景を考えなければ、思春期の青年のアイデンティティ構築の苦悩、
両親や周囲の大人からの自立がテーマで、ある意味、よくある話であろう。

黒人差別を存在しているものとして認め、黒人を支援する社会制度が設計され、それを活用することが当然とされているアメリカ社会。
その制度を活用するために演じる周囲から求められる理想的な人物像と現実の自分の狭間で悩む。
悩むだけでなく、自分を疎外する存在に対して攻撃する。
それは、ウィルソンもルースも同じというところが、この作品から感じる恐さだ。
攻撃の仕方が巧妙すぎて恐ろしい。結末は作品中で示されていないので想像の域を出ないが。

点数は、7点(10点満点)。

タイトル:ルース・エドガー
原題:LUCE
製作年:2019年
製作国:アメリカ
配給:キノフィルムズ、東京テアトル
監督:Julius Onah
主演:Kelvin Harrison Jr.
他出演者:Naomi Watts、Tim Roth、Octavia Spencer
上映時間:109分