とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

「奇麗な、悪」(ネタバレ注意)

2025-03-08 23:59:00 | 映画
中村文則の小説の映画化。
瀧内公美が演じる主人公の自分語りで聴き手はいない。
最初と最後の雑踏シーンではエキストラを使っているかもしれないが、瀧内公美の一人芝居。
かなり実験的な作品ではある。

語られる内容がある意味ピュアで、「奇麗な、悪」というタイトルにつながるのだろう。
主人公がかつて通っていた精神科医に向けた語りという設定なので、真実ではないのかもしれない。
語り終えた主人公が雑踏に紛れて、どこかへ帰っていく。
毒を吐き切ったような清々しい表情で。
これは希望を表現しているのだろうか。

小説で答え合わせをしてみたくなった。

点数は、6点(10点満点)。

タイトル:奇麗な、悪
製作年:2024年
製作国:日本
配給:NAKACHIKA PICTURES
監督:奥山和由
主演:瀧内公美
上映時間:78分


「ザ・ゲスイドウズ」(ネタバレ注意)

2025-03-06 23:59:00 | 映画
売れないパンクバンド「ザ・ゲスイドウズ」が田舎でヒットを目指して活動する話。
犬やカセットテープがしゃべったり、牛の体内に入ったり、謎のシーンがたまにある。
曲作りのプレッシャーからくるボーカルのハナコの幻覚だろうか。
しゃべる犬の声がいいなあと思ったら、斎藤工だった。

何回も曲を聴いていると、だんだんいい感じに思えてくる。
どん底でも我が道を行く姿に応援したくなってくる。
カオス感を楽しむ作品か。

点数は、6点(10点満点)。

タイトル:ザ・ゲスイドウズ
製作年:2024年
製作国:日本
配給:ライツキューブ
監督:宇賀那健一
主演:夏子
他出演者:今村怜央、喜矢武豊、Rocko Zevenbergen、マキタスポーツ、斎藤工、遠藤雄弥
上映時間:93分


「八犬伝」(ネタバレ注意)

2025-03-02 23:59:00 | 映画
「八犬伝」の著者である滝沢馬琴の家族との日常生活や友人である葛飾北斎との交流に「八犬伝」の実写が織り交ぜられる構成。
滝沢馬琴を役所広司が演じる。葛飾北斎を内野聖陽が演じる。
二人の名優の掛け合いが味わい深い。
馬琴の妻のお百を寺島しのぶ、息子の宗伯を磯村勇斗、宗伯の妻のお路を黒木華が演じる。

「八犬伝」は現実世界ではかなわない勧善懲悪の世界を描くことで読者に生きる力を与えることを志して馬琴が創作したものとされている。
馬琴の日常生活は、妻に軽んじられ、息子の病に悩まされ、年老いては視力を失うなど苦難に満ちている。
読者だけでなく自らを鼓舞するための虚(フィクション)が「八犬伝」に昇華されているのだ。

作中で、馬琴と北斎が連れ立って、鶴屋南北創作の芝居見物に行くシーンがある。
立川談春が演じる鶴屋南北が、勧善懲悪の馬琴のストーリーを無意味と批評する。
鶴屋南北の芝居は、虚(フィクション)の中に実(人間の本性)を描くスタイル。
まさに現代の小説やドラマに通じるものだ。
このシーンが本作の一番の見せ場だったように思う。

「八犬伝」の実写パートはVFXを駆使した作りで面白かった。
土屋太鳳、河合優実、栗山千明、真飛聖の女優陣の配役が秀逸だった。
男優陣はメイクのせいで、板垣李光人以外は、誰かよくわからなかった。

点数は、8点(10点満点)。

タイトル:八犬伝
製作年:2024年
製作国:日本
配給:キノフィルムズ
監督:曽利文彦
主演:役所広司
他出演者:内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、小木茂光、丸山智己、真飛聖、忍成修吾、塩野瑛久、神尾佑、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、大貫勇輔、立川談春、黒木華、寺島しのぶ
上映時間:149分


「名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN」(ネタバレ注意)

2025-03-01 23:59:00 | 映画
若き日のボブ・ディランの栄光と苦悩を描く作品。
ボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメの歌唱シーンが素晴らしい。

時代を反映した歌詞をフォークギターの弾き語りで表現するスタイルで一躍、スターに昇り詰めるボブ・ディラン。
が、そこからが、大衆の求める姿と自ら追い求める表現のギャップに悩む日々。
アーティストではあっても、エンターテイナーではない。

俳優陣の演技力もあり、再現度の高さは凄いと思ったが、一時代前のスターによくある話の域を出ず、特にメッセージは感じなかった。
スターはベールに包まれていた方がいい。

点数は、8点(10点満点)。

タイトル:名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN
原題:A Complete Unknown
製作年:2024年
製作国:アメリカ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:James Mangold
主演:Timothée Chalamet
他出演者:Edward Norton、Elle Fanning、Monica Barbaro、Boyd Holbrook、Dan Fogler、Norbert Leo Butz、Scoot McNairy、P. J. Byrne、初音映莉子、Charlie Tahan
上映時間:140分


「TATAMI」(ネタバレ注意)

2025-02-28 23:59:00 | 映画
いやあ、凄い作品だった。
女子世界柔道選手権において、イラン代表選手がイスラエル代表選手との対戦を棄権するよう国から命令される。
現実にイラン代表の男子選手に起こった実話がモデルになっているとのこと。

イラン代表のレイラはコーチのガンバリとの二人三脚で人生を賭けて、金メダルの獲得を目指していた。
家族が自国でTV中継で観戦しており、一本勝ちで初戦突破し、大いに盛り上がる。
しかし、勝ち進むと決勝でイスラエル代表選手と対戦することになることを懸念したイラン政府から棄権の命令がガンバリに伝えられる。

ガンバリから棄権するよう指示されても、無視して、レイラは準決勝まで勝ち進む。
命令を無視するレイラを止めるため、イラン政府はレイラの両親を暴行、監禁し、映像をレイラへ送りつける。
苦渋の選択を強いられるが、レイラは自らの自由と尊厳を賭けて、試合への出場を決断。
一方、レイラの夫は子供を連れて、国外脱出を図る。

目の前の対戦相手との戦いに集中できないまま劣勢に立たされるレイラ。
極限の精神状態のまま紙一重の戦いが続く。緊張感が凄い。
レイラに棄権させようと懸命に説得していたガンバリも、レイラの極限の戦いに触発され、懸命に鼓舞する。
激戦の中、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うスカーフ)を脱ぎ捨てて奮戦するレイラ。

この試合を機に、レイラとガンバリは亡命。
難民代表として競技生活を続けていくことになる。

ガンバリを演じたイラク出身の俳優であるザーラ・アミールは亡命している。
彼女にとっては、この作品こそが、自由と尊厳を賭けた戦いなのである。

点数は、9点(10点満点)。

タイトル:TATAMI
原題:TATAMI
製作年:2023年
製作国:アメリカ、ジョージア
配給:ミモザフィルムズ
監督:Guy Nattiv、Zar Amir
主演:Arienne Mandi
他出演者:Zar Amir、Jaime Ray Newman、Nadine Marshall
上映時間:103分