観たときは
おもしろさがわかるまで
時間がかかりすぎるのが難だと思った。

でも、いま思い返すと
印象がジワジワと染みている。

「ゴモラ」70点★★★☆




第61回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。
いま最大に話題のイタリア映画です。

イタリア・ナポリを拠点とする
暴力・犯罪集団「カモッラ」。



その内部に潜入し、
誰も公にしなかった実態をルポした
ジャーナリストの原作をもとにした映画です。

カモッラが牛耳る街に育ち、
抗争に巻き込まれる少年や

組織の会計係の男。

10代の命知らずなチンピラ少年たちや、
産業廃棄物の不正投棄を負う青年など、
複数のストーリーが交差する作りになっています。

スーパー・リアリズムというか
まるでドキュメンタリーのような臨場感で、
ざらついた現実を映し出す手法がビビッド。


疾走感や若々しさ、
暴力描写なども
「シティ・オブ・ゴッド」に一番近い気がします。


想像ほど血みどろではなかったんですが、
なにしろ前半はよく状況がわからず、退屈(失笑)。

でも
登場人物たちの相関がわかってくる
1時間後くらいにおもしろさが見えてきます。

観たときの衝撃を競うような感じを醸し出していますが
実は“あとからジワジワ”タイプの映画だと思う。

カモッラという組織は
ドラッグとか銃密売とか、
いかにもな仕事だけでなく
観光業やファッション産業、レストランなど
マジで多角経営をしており(失笑)



金儲けのシステムが企業なみに
出来上がってるんですね。
イタリアでの権力の強さにも驚いたし、
特に産廃の部分は
3.11以後、気になる話でもあるし。

見た後、いろんな取材で会った人と、
そのことが話題になったりしました。

観ているうちに
暴力と金にまみれた世界で生きることに慣れ、
いつの間にか人の命の尊さなど消え去っているっつう
自分の感覚もコワイ。

自身の命惜しさに
組織からネズミのように逃げていく男の後ろ姿が、
惨めにみえてくるのも怖いです。

★10/29から渋谷シアター・イメージフォーラムで公開。
「ゴモラ」公式サイト