簡潔なタイトルが実によろしい。
「海と大陸」61点★★★
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南イタリアの小さな島。
20歳の青年フィリッポ(フィリッポ・プッチロ)は
祖父(ミンモ。クティッキオ)と漁に出た際、
海上でアフリカからやってきた
移民たちを発見する。
祖父は
「海の上で助けを求められたら
どんな理由があっても助けなければならない」という
“海の掟”に従って彼らを助ける。
しかしその行為は違法であり、
祖父やフィリッポの家族の生活を脅かしていく――。
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人道か自己利益か、人助けか法か
海の掟か陸の法か、漁業か観光か
島の素朴さか都会か。
全てが大きな二択になっている構図。
人間社会とは
かくも不自由で不公平で
しかし海は平等にすべてにつながっているのだという
作品の言わんとするものは感じ取れます。
冒頭の海中のシーン、不穏さ、
音楽使いのうまさ、
陰影をつけた彫りの深い映像のダイナミズム……など
美点は多い。
なんですが
人物描写もドラマもいまひとつ精彩を欠くというか
物足りなさがある。
家族ドラマとしても、頼りなげな若者の成長物語としても、
不法移民という社会派の問題提起にしても
どれも追いきれていない感じがしてしまった。
いい骨格を持っているのに
心に触れない、というもどかしさかな。
エチオピア人女性のアップや
海のなかのマリア像など、
不意をつくカメラ演出にはドキリとさせられました。
ちなみにあのマリア像は
海を信仰する漁師たちが沈めるお守りのようなもので
実際にあるんだそうです。
そうか~演出かと思っちゃった。
★4/6(土)から岩波ホールで公開。
「海と大陸」公式サイト